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【レビュー】大容量ザック「アライテント:マカルー80」を紹介します。

大容量ザックとして有名なアライテントの「マカルー80」。

質実剛健でシンプルイズベストを極めたようなこのザックは、便利な機能が搭載されたザックが出回っているこの時代には、時代錯誤を感じずにはいられません。

そんな「マカルー80」を実際に使用している経験から、買う前の疑問点と、実際に使ってみての感想を紹介していきます。

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ザックの紹介

マカルー80のスペック

アライテント・マカルー80

マカルー80の特徴をざっくりと説明すると、

  • 山岳テントの老舗「アライテント」から出されている歴史あるザック
  • 重量は2050gと軽量(80ℓの割に)
  • 定価は29,000円と安い(80ℓの割に)
  • 形状は単純だが頑丈

詳しくは、アライテント公式サイトを参照して下さい。

 

という感じで、正にシンプルイズベストを突き詰めたザックで、現代においても大学の山岳部や一部の山岳会、玄人から愛されていているようで、山の中でも偶に見かける事があります。

因みに、石井スポーツのガッシャーブルムは、このマカルーのOEM製品です。

 

容量は、50L・60L・70L・80Lと4種類が展開されており、カラーはレッド、ブルー、グレーと3種類あります。

良い点は、大容量で超頑丈であるという点ですが、

難点として「背面パットは薄くフレームもなく、腰パッドがペラペラ」など注意点もあるので、詳しく解説していきます。

 

 

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マカルー80を買った理由

これまでは「Deuterの60ℓ+10ℓ」のザックを使っていましたが、本格的な雪山登山(テント泊)を始める時に60Lベースでは容量が不足する為、もう少し大きなザックが欲しいと思うようになりました。

容量は80ℓ以上で、色々なメーカーのザックを一通り調べました。

グレゴリーのバルトロ」も候補に入っていましたが、「ザック自体の重量が重いこと」と「値段が高い(定価5万以上)」ということで、候補から外すことになりました。モンベルなんかも見ていましたが、容量の割に肩パットがペラペラな点が気になったので、こちらも見送りました。

そこで「マカルー80」の単純でシンプルな造りで惹かれて、購入を決めました。

※今となっては、2泊3日程度であれば、パッキングの工夫と装備品の厳選で2泊3日であれば60ℓ+10ℓで収まるようには思います。

 

実際に使ってみた感想

マカルー80の使用開始から約4年が経過し、夏山から厳冬期の北アルプスでのテント泊まで使用しており、累計使用日数は80日を超えています。

その経験からそれぞれ使い勝手をレビューしていきたいと思います。

 

サイズ

収納量は大満足です。

噂の通り、かなりデカい!です。

ザックの雨蓋を伸ばす前の状態で次の装備が余裕で全て入ります。

  • 2人用テント
  • ロープ・簡単なガチャ類
  • ショベル
  • マット(サーマレスト リッジレスト ソーライト)はロール状にして中に入れる
  • 2泊3日分の食料
  • 水5L
  • その他、冬山テント泊装備一式

山に持って行く荷物で収納出来ないという事はありません。

また、ザックの背面長が48cmあり、雨蓋を伸ばせばもっとありますので、緊急時の足を入れてのビバークや、テント泊でマットの代わりにするこも問題ありません。

 

検証した事はありませんが、モンベルやグレゴリーの100L相当のザックよりも沢山入ると言われています。

ココに注意

堂満岳中央稜 2023年1月02662

その反面、荷物が少ない時には注意が必要です。

テント泊で、山頂だけを往復する時などは荷物が最小限になる為、マカルー80ではオーバーペック過ぎて、ガバガバになってしまい、背負い心地や使い勝手は悪いです。

そのような際は、サブザックの導入をお勧めします。

テント泊で、ベース型の山行の時は、同じアライテントから出されている「ライズパック」をサブザックとして使用しています。

【レビュー】超軽量サブザック「アライテント ライペン RAIZ PACK」

 

背負い心地

このザックは肩と背中で背負うザックとなり、一般的なザックの様に腰に荷重を移す事は出来ません。

また、背面調整機能などもない為、ザックを自分の身体に合わせるのではなく、自分がザックに順応しなければいけません。

この点は十分に理解しておかなければいけません。

 

私も4年間このザックを使用してますが、「背負い心地は悪くない」という風に感じています。

その他のメーカーの先進的な設計のザックの様な背負い心地はありませんので、そういう物を求める人には向かないでしょう。

 

色々と悪く言いましたが、背面パットが薄いことで、背中とザックの間に隙間が無く、背中全体に重心がのる為か、肩が猛烈に辛いと感じる事はあまりありません。(疲れてくると肩が痛いですが)

 

ココがダメ

大きな不満ではありませんが、ザックのコンプレッションベルトが非常に長いので、山行中に風に吹かれて「ぴらぴら」となることが多く、時折目障りなことがあります。

 

ハーネスとの相性

腰ベルトが薄いことと、腰で背負うザックでは無いので、ハーネスとの干渉は低いように思います。

体格やハーネスの種類にもよりますが、概ね相性は良いように思います。

 

パッキング

前述の通りザックの容量がかなりデカいので、テキトーにパッキングしても余裕で入ります。

しかし逆を言えば考えてパッキングしないと、見た目がデブの不細工なザックになり、背負い心地にも大きく影響します。

 

私はテント泊のパッキングでは、

  • ザックの中に「サーマレスト リッジレスト ソーライト」を筒状にして、その中に荷物を入れる
  • 背中側にはテントマット等を入れてクッション性を高める
  • 背中側に固いものが当たらないように工夫する

こうすることで、背中への不快な干渉等はありませんでした。これで背面パッドにフレームが無いことの問題は解消されています。

とここまで読まれて気が付かれている人もいると思います。
「それってパッキングの基本ですよね?」

そうです。このザックはパッキングの基本を忠実に行えば、大して問題はありませんが、逆に言うとパッキングが上手く出来ないと不快感が凄まじいです。

 

また、パッキングをしっかり行うと自立します。

 

 

このザックには、腰ベルトのポケットや便利系の類はありませんので、行動中に頻繫に使用するものは全て雨蓋に入れておく事になりますが、

この雨蓋の収納力が凄まじく、「行動食(1日分)、ナルゲンボトル(1ℓ)、GPS機器、地形図」が余裕で入るので、休憩時にザックの雨蓋を開ける必要がありません。

 

基本に則ったパッキングと、自分なりの創意工夫で大方問題無いと感じています。

 

 

耐久性

耐久性は非常に素晴らしいです。
滅茶苦茶頑丈です。

マカルーは840dnのHDナイロンが採用されています。
UL系が70D~210D前後、一般的なザック:400D前後となっており、それをと考えると、どれだけに分厚く丈夫な生地が使われているかお分かり頂けれると思います。

実際、使用開始から4年以上経過し、夏山から厳冬期の北アルプスまで使っており、時には少々荒っぽい扱いをする事もありますが、破損は一切ありません。

分厚く丈夫な生地と、単純構造という点が最大限に活きています。

耐荷重に関して、メーカーの公式表記はありませんが、山岳部や玄人、プロの山岳ガイドがこのザックに40KG以上の荷物を入れて長期山行をしている記録を見ていると、まぁ一般登山者が背負う重量では全く問題がないことでしょう。

 

登山以外でもガンガン使える

一番手前のブルーのカバーが被さっているのが「マカルー80」です。

ちょっとどうでも良い話に逸れるのですが、マカルー80は「頑丈」×「デカい」なので、登山以外でもフル活用する事が出来ます。

私の場合、キャンプにも良く行くのですが、マカルー80に「マット・寝袋」など嵩張る物を詰め込んでルーフラックにのっけています。

マカルー

それ以外にも旅行鞄としてもガッツリ使い込んでいます。

  • 夏は海へ!

    夏は海にも泳ぎに行くので、マカルー80の中に、フィンやマスク、薄い物であればウェットスーツだって入ります。
    ※塩が直接つかないようには配慮しています。

  • 飛行機の預入として使えます!

    造りが頑丈&シンプルなので、飛行機の預入荷物としても使っています。
    ※壊れる心肺の無い物だけ入れています。

→登山以外でもガンガン使っていますが、全く問題ありません。

 

 

マカルー80Lのまとめ

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

ココがおすすめ

  • 大容量(冬季幕営装備+ロープ・ガチャ類は余裕)
  • 安い(24,000円)
  • 軽い(2,050g)
  • 頑丈(藪漕ぎ、岩稜、なんでも来い!雑に扱っても傷がつく気配はありません。)
  • 雨蓋がデカい(「行動食1日分」+「サーモス1ℓ」+「地形図」+「GPS」が収納可能。)
  • 腰ベルトがペラペラなので、狭いテントの中でも嵩張らない。
  • 肩に比重を置くザックなので、ハーネスとの相性がいい。
  • 腰ベルトが外せるので、ハーネスとの干渉を避けられる。
  • 構造が単純なので、雪が付着しにくい。(叩けば落ちる)

ココに注意

  • パッキングが下手だと背負い心地が悪く、見た目も不細工になる。
  • ザックのコンプレッションバンドが長過ぎて、風が吹くとヒラヒラなびいて邪魔。(地味に危険)
  • デカいザックなので、荷物が少ない時は逆に困る。(テント泊等で、荷物はテントに置いて山頂だけピストンする時など)
  • 最新の便利機能な一切なし(※腰ベルトの小物入れや、背面パッドの吸汗性などは無い)
  • 腰に荷重は移せない

 

▼総括

このザックは先人の方々の言う通り、使う人を選ぶザックだと思います。

▼向いている人

  • パッキングを自分なりの方法で試行錯誤する気のある人
  • とにかく大容量で丈夫なザックを探している人
  • マカルーみたいなザックに惹かれる人(これが重要かもしれません)

▼向いてない人

  • パッキングが苦手な人
  • 腰に荷重を乗せるザックに慣れている人
  • 小物入れ等の色々と便利な機能が欲しい人
  • 小屋泊しかしない人(※小屋泊ではこのサイズが必要な程、荷物を持たないと思います。)

 

このザックを購入してから、冬季の槍ヶ岳、初冬や残雪期の剱岳、夏の北アルプス、低山など累計80日以上をこのザックで登山に出掛けていますが、

「概ね満足している。」というのが正直な感想です。

正気な所、マカルーを背負っていて苦しい時もあり、「最新のザックの方が良かったのかもしれない...」と思う時もあります。

しかし、「値段・重量・容量・材質」全てが完璧なザックというのはないので、どこかで折り合いをつけなければいけません。

 

苦しいのは単純に「私自身の体力が低い」というのもあると思っています。

 

このマカルーに興味を持たれている方は、大なり小なり高い志をお持ちの方が多いと思います。

ザックとの相性はとても大切なことですが、結局は登山者自身の体力が伴っていなければ、意味がありません。

ですので、"このマカルーと一緒に、登山者として成長していく"という気持ちで、このザックと付き合っていくのが一番かなと思います。

 

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