山のあれこれ 装備について

【徹底解説】登山ザックの容量の選び方「夏山/雪山・日帰り~テント泊など」

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

ザックを新しく購入する際に、「サイズ(容量)はどれを選べばよいか?」というのは非常に迷うポイントだと思います。

今回は自身の経験から、ザックの容量の選び方についてお話ししていきたいと思います。

 

尚、今回お話しする内容ですが、"日帰り登山は○○Lリットル"と言った数字に関しては参考値としてご紹介し、選ぶ際の基準などを中心にご紹介します。

【徹底解説】登山ザックの容量の選び方「夏山/雪山・日帰り~テント泊など」

サイズ・容量の選び方

その1:まずは基本を知ろう

2019.12.28涸沢岳053

ザックで選びで最も悩むのがサイズの問題ではないでしょうか?

まずは、個人的に思うザックの容量をまとめてみました。

ザックの容量の目安

  • 夏山日帰り(20L
  • 夏山小屋泊(30L
  • 夏山テント泊(38L~50L)
  • 冬山日帰り(30~40L
  • 冬山小屋泊(30~40L
  • 冬山テント泊(70L~)

こんな感じで、山行の種類によって荷物の量が異なる為、求められるザックの容量も幅があります。

 

7年間 登山をやってきた経験から言うと、

「複数のザックを山行によって使い分ける」

というのが理想ではありますが、、、、

 

最初のうちは難しいと思うので、取り敢えずどれか一つを買うことになると思います。

 

ということで、

最初の一つにお勧めのサイズがこちら

その1:20L前後のザック

ブラックダイヤモンド ブリッツ

※写真は30Lのモデルとなります。

夏山日帰りは20Lあれば十分対応可能となります。

レインウェアや防寒着、水筒なども十分にキッチリと収納できて、まずは低山の日帰り登山から始めたいという方にはおすすめのサイズとなります。

尚、アイゼンやプローブの収納が不要な場合は、雪山登山でもギリギリ対応可能となります。

その2:40L前後のザック

2023年1月22日 阿弥陀岳南陵03060

マット・シュラフ・コッヘル等の装備品をコンパクトなモデルで揃えれば、40L前後のザックでも夏山テント泊ギリギリ可能。

ロープを含む本格的な冬山登山(日帰り)でも40Lあれば十分対応可能。ロープ等を持参しない場合は30Lでも十分です。

 

この2種類のどちらかを持っていれば、

どの季節でも登山が開始できると思います。

 

 

その2:「大は小を兼ねる」は止めた方が良い

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

補足事項として、ザック選びにおいて「大は小を兼ねる」がダメな理由についてお話しします。

 

例えば、テント泊もやる予定ということで50Lのザックを買って、

このザックだけで全部対応しよう!というのは止めてましょう。

良くない理由は、オーバースペックなザックで山に行くと、ザックに空白部分が出来てしまうからです。

注意ポイント

50Lのザックのみで登山した場合

  • 夏山日帰り(20Lで十分)
    →30L分余る
  • 夏山小屋迫(30Lで十分)
    20L分余る
  • 冬山日帰り(30~40Lで十分)
    10~20L分余る
  • 冬山小屋迫(30~40Lで十分)
    10~20L分余る

この様に「荷物の量」と「ザックの容量」があまりにも合っていないと、基本に乗っ取ったパッキングが出来ません。

 

理想のパッキング

パッキングの基本は「軽い物は下、重い物は上寄りの背中側」というのが基本となります。

正しくパッキングすると重心が背中寄りになる為、ザックとの一体感が増し安定感が生まれます。

ザックのサイズが適正であればあるほど、理想的なパッキングが可能となります。

駄目な例

容量的にオーバースペックなザックの場合、中がスカスカで綺麗にパッキングする事が困難で、例え整えたつもりでも歩行中にいつの間にかザックの中がぐちゃぐちゃになってしまいます。

そして、重心が下に偏るので、バランスにも影響します。

 

パッキングが正しくされていないと...

  • 背負い心地が悪くなり、疲労が溜まりやすい
  • バランスも悪く、事故を誘発しやすい
  • 欲しい物を直ぐに取り出せない
  • 装備を紛失しやすい

などなど色々と不具合が起こってしまいます。

このようにパッキングはとても大切で、パッキングの為には適切なサイズ選びが重要となってきます。

 

 

 

その3:サブザックという考え方もあり

テント泊など大きなザックで登山に出掛けた際、縦走ではなくBC型で、テントから山頂を往復する時など、どうしてもザックの容量と荷物の量が合わず、背負い心地が悪くなる時があります。

 

そんな時は、サブザックを導入するというのもアリです。

私も実際に「マカルー80L」と「28Lのサブザック」の組み合わせで山に登っています。

アプローチ時の重量は数百グラム増えてしまいますが、テント場から山頂往復時の快適性の差は歴然です。

 

 

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

【レビュー】超軽量サブザック「アライテント ライペン RAIZ PACK」

 

 

その4:自分のスタイルを考える

2023年1月22日 阿弥陀岳南陵03060

一般的な○○リットルというのは一つの目安に過ぎません。

ザックに求めるサイズは登山者によって千差万別で、これらはパッキングの上手下手という事だけではなく、「山に何を持って行くのか」などの、それぞれのスタイルが大きく影響してきます。

 

スタイルは千差万別

【カメラ系】

  • 一眼レフ or アクションカメラ

【宿泊系】

  • テント or ツェルト
  • エアーマット or クローズドセル
  • マットは外付け or 収納
  • 着替えの有無
  • 食料はドライ系 or 調理

【登攀ギア】

  • ロープやガチャ類の有無
  • ヘルメットは外付け or 収納

 

例えば「テント泊の為のザックが欲しい!」という場合でも、テント泊が「目的」なのか「手段」なのかによっても、装備品やザックの選び方は変わってきます。

山旅を楽しむという事であれば、基準よりも大きめのザックを購入しておけばOKですが、

荷物を少しでも軽くして軽量即効型で行きたいのであれば、各装備を購入する時点でザックの容量を考慮し、可能な限りコンパクトな装備を選んで購入する必要があります。

 

このように

自分がどんなスタイルの登山がしたいのか

ということをしっかりと考えておくと、ザック選びで失敗せずに済みます。

 

 

正直コメント

ただし、自分のスタイルを見つけるというのは、ある程度の登山経験が必要です。沢山の山に登り、何に楽しいと感じて、今後どんな山に登りたいかなど、色々な事を感じる中で少しずつ自分のやりたい方向性が見えてきます。

そして、見つけたはずの「自分のスタイル」のも、長く登山を続けていく中で、年齢や体力度合い、経済状況によって少しずつ変化していく為、定期的に装備の選択に悩む時期がやってきます。

 

 

その他「ザック選びの注意点」

パッキングのやり易さ

MAMMUT Trion Nordwand

ザックを選ぶ際は、「そのザックがパッキングしやすいかどうか」を必ず確認するようにしましょう。

 

「どんなザックがパッキングがし易いか」は登山者によって好みや考え方、レベルにより大きく異なります。

ザックの内外の便利な機能が欲しい人もいれば、要らない人もいます。

 

自分のこれまでの山行を振り返り、実際に使うイメージをしながら選ぶようにしましょう。

 

 

便利機能は状況によっては邪魔なだけ

MAMMUT Trion Nordwand 38_2852

少し過激な表現になりましたが、ザックについている便利な機能が必ずしも万人を満足させれるという訳ではありません。

使用環境により善し悪しがありますので、正しく理解して取捨選択するようにしましょう。

 

背面メッシュ

背面にメッシュが強いものは、夏の時期は汗を感じにくく快適に使用することが出来ますが、メッシュは雪が付着しやすいという側面もあります。

サイドポケット

ザックのサイドポケットは水筒やトレッキングポールの末端を入れたり便利なように見えますが、雪山登山では雪が大量に溜まるポイントとなります。

ペットボトルホルダー

岩稜登山や藪漕ぎでは岩に引っ掛けるリスクが高い。

ウエストベルトのポケット

行動食、鎮痛剤、ホイッスルなど使用者の好みで小物を収納できる為、便利ではありますが、無くても何とかなります。

 

不思議なもので、便利な機能というのは過酷な環境に行けばいくほど邪魔な機能へと変わっていきます。

個人的な感想としては雪山登山での使用を視野に入れている場合は、極力構造がシンプルな方が使い易いです。

 

 

軽量ザックは生地の薄さに注意

軽量ザックというのは無駄な機能を省いていると同時に、生地が薄いものが多いので、注意しなければいけません。

 

こんな時は要注意

  • 強烈な藪漕ぎを行ったり、
  • 岩稜登山で岩を磨りながら登ったり、

こんな環境では薄い生地のザックの場合、穴が開くリスクが高まります。

通常使用しているくらいでは問題はありませんが、過酷な環境で使用する場合は、注意が必要です。

デニールなどの数字は参考値として捉えておく事をお勧めします。

 

 

私が実際に使っているザックを紹介

最後に私が実際に登山で使っているザックをご紹介します。

 

アライテント:マカルー(80L)

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

日本の老舗山岳ブランド「アライテント」が出しているザック「マカルー」

シンプルイズベストを突き詰めた質実剛健なザックで「大容量」と「頑丈さ」は折り紙付きです。

 

80Lは無尽蔵に装備を収納でき、長期縦走でも困る事はありません。

そして、登山で遭遇するあらゆる過酷な状況で酷使しても破損の心配は皆無です。

 

私は雪山テント泊はマカルー80で行っています。

↓↓↓こちらの記事で詳しく紹介しています。

【レビュー】大容量ザック「アライテント:マカルー80」を紹介します。

 

 

MAMMUT:トリオンノードワンド(38L)

スイスのアウトドアブランド「MAAMUT」から出ている軽量なアルパインザック「トリオンノードワンド(38L)」

主に夏のテント泊や、日帰りの雪山登山で使用しています。

こちらはアルパインザックとしての位置付けとなり、腰に荷重を移す一般的なザックとは異なり、背中と肩で背負う為、アルパインザックが初めての場合は注意が必要となりますが、軽量でハーネスとの相性も良く、動きを妨げない設計ものが多い為、岩稜登山やアルパイン要素を含む山行をされる登山者にはお勧めです。

 

↓↓↓こちらの記事で詳しく紹介しています。

【レビュー】軽量アルパインザックMAMMUTトリオンノードワンド38L

 

 

ブラックダイヤモンド:ブリッツ(28L)

ブラックダイヤモンド ブリッツ28L

ブラックダイヤモンドから出ている超軽量なアルパインザック。

重量は38Lで420gと非常に軽量で、テント泊時のサブザックとして使用しています。

 

背中には取り外し可能なパッドが入っている為、軽量化を最優先する人はより軽量にすることが出来ます。

そこまで軽量化をしない場合でも、パッドを取り外せる事で、アプローチ時はパッドはメインザックの背面に入れて、ブリッツは折り畳んでコンパクトに収納する事が出来るという利点でもあります。

 

ザック外部の機能としては、ピッケルホルダーが2箇所、ロープの外付けようのクリップが1個と非常にシンプルな造りとなっています。

個人的にはサイドのコンプレッションベルトがあった方が良かったです。

Amazonはこちら:https://amzn.to/4gQVC10

 

 

 

アライテント:ライズパック(28L)

アライテントから出ている超超軽量なザック。

重量は何と約100gです。

こちらもテント泊時のサブザックとして使ったり、夏の日帰り登山で使用しています。

 

↓↓↓こちらの記事で詳しく紹介しています。

【レビュー】超軽量サブザック「アライテント ライペン RAIZ PACK」

公式サイトはこちら:アライテント公式サイト

 

 

まとめ

MAMMUT Trion Nordwand 38_2852

色々とお話してきましたが、

ザックの選び方に結論はありません。

それだけにザックのサイズ選びというのは、個人の考えやスキル、目指すスタイルによって千差万別だからです。

その上で私の経験からアドバイスをさせて頂くと、

 

初めてのザックを購入する場合

20L程度の小さなザックを購入して日帰り登山を楽しみましょう。

20Lのザックでも防寒着、レインウェア、水筒などの最低限の装備を入れることができます。

その上で、自身の登山スタイルを見極め行き、次のザック選びの際の基準を見つけていきましょう。

テント泊のザックを購入する場合

テント泊のザックの容量に関しては、夏季と冬季で大きく異なってきますが、

であれば50L~60Lのザックがあれば余裕を持ってパッキングが出来ますが、装備を選定すれば40Lのザックでもいけなくはないです。

であれば60L~70Lのザックがあれば余裕を持ってパッキングが出来ますが、装備を選定すれば50Lのザックでもいけなくはないです。

 

ザックを複数所持するというのはお金の掛かる事ですので簡単ではありませんが、山行スタイルに合わせて適切なサイズのザックで登山に出掛けると、とても快適で楽しむ余裕が生まれます。

 

 

是非、皆さんの参考にして下さいね。

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