雪山登山を始めて5年が経過し、これまでの雪山登山を振り返ると「あの時は、ちょっと危なかった」という事がいくつかあります。
今回は雪山での「怖かった体験」を4つご紹介していきます。
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実際に遭遇した山での恐怖体験-雪山編-「5選」
第4位:決死の猛攻ラッセル
これは、2017年の1月の某日、近畿でも数年に1度の大寒波が来た日。
この日、愚かにも「比良山系の武奈ヶ岳」にテント泊で行っていました。
自宅から登山口に向かう途中、バイパスから見える比良山系には、既に黒く厚い雲がかかっており、近づくと雪が舞い始めました。
雪がしんしんと降る中登山を開始しましたが、積雪はせいぜいスネの中程でしたので、ツボ足で黙々と登って行きました。標高を上げるにつれて、天候は悪くなり中腹(八雲ヶ原)まで来た所で、この日の登頂は無理と判断し幕営しました。
この頃は「テントの中は暖かく快適だ」と呑気に寛いでいました。
翌朝、頭を圧迫されている感覚で目が覚めました。
テントの外に顔を出すと猛吹雪で、テントが雪で埋れ掛けていました。
どうやら一晩で50センチ以上積もっただった。
登頂なんてもってのほか。
テントの撤収をしている間にも雪は降り続け、者の数分で外に置いておいたザックは真っ白になっていました。
下山を開始するが、これが苦行。
常に膝上〜腰ラッセルで、吹き溜りでは胸まで埋もれる始末に。
未熟だった私には幕営装備が肩に重くのしかかり、雪に埋もれて前に進めません。
仕方なく先頭の私はザックは置いて空身でラッセルし、後で荷物を取りに戻るというのを繰り返しました。
下山中も猛吹雪で
標高を下げても吹雪が収まる気配は無く、積雪は時間と共に容赦無く増えていくのが目に見えて分かりました。
一晩で地形が変わるほどの積雪と、視界が非常に悪い事もあり、慎重に進むしかありませんでした。
結局、CT2時間半程の所に5時間程かかって下山しました。
通い慣れたルートであったので、悪条件の中でも無事に下山をする事ができましたが、もしも不慣れなルートであれば自力で下山できたのかも不明です。
下山してからも、まだまだ下界は先でした、、、。
車が雪に埋もれていたのです。
車から雪を下ろし、凍りついた窓を溶かし、林道の雪掻きをして、やっとの事で帰路に着きました。
低山を馬鹿にすると、こうなります。勿論今はこんな馬鹿な事はやってません。
第3位:尻セードで2回転半
「尻セード」とは、滑り台を滑るように、お尻を雪面に付いて、「スーッと」滑って楽に下山することですが、恐らく誰もが1度はやった事があるのではないでしょうか?
ただこの「尻セード」実は物凄く危険であるという事はご存知でしょうか?
雪面の状況によっては予想以上にスピードが出て、滑落や足首の捻挫を誘発する危険性があるので、極力「尻セード」は行わずに、やるにしても状況をしっかりと確認しなければいけません。
偉そうな事を書きましたが、私自身も「尻セード」で1度危険な目にあった事があります。
残雪期の槍ヶ岳で飛騨沢を降っていた際に、もう少しで「宝の木」付近という場所で、「もう大丈夫だろう」と尻セードで降り始めました。
最初のうちは楽しく降っていましたが、柔らかい雪面の下に凍った層があったようで急にスピードが出始め、止まらないといけないと思った瞬間、前に出していた足が雪面に引っ掛かり、勢いが付いていたこともあり、思いっきり前方向に身体が投げ出され、そのまま2回転半し、上半身が下を向いた状態で止まりました。しかも片足は雪面を踏み抜いており、抜け出すのに非常に苦労しました。
飛騨沢で尻セードなんて馬鹿すぎるのは言うまでもありませんが、似たような場所で「尻セード」をしている人も多いのではないでしょうか?
実際、下降中に信じられない場所で「尻セード」をしたであろう痕跡を見かける事があります。
「尻セード」は危険なだけではなく、ウェアを傷める原因にもなるので極力行わないようにしましょう。
第2位:恐怖のホワイトアウト
「ホワイトアウト」と言えば雪山の恐ろしさの一つ。
これまで"西穂"や"槍ヶ岳"でも、ホワイトアウトさながらの危ない場面はありましたが、危機的状況に陥る迄にギリギリ抜け出せていましたが、一度だけ完全なホワイトアウトに襲われた事があります。
それは2018年2月の伊吹山(岐阜&滋賀)での出来事です。
その日は、メジャールートではない尾根筋から山頂を目指していました。
その日は夜から天気が崩れる予報でしたが、天気の崩れが大幅に早まり昼過ぎから急速にガスが沸き始め、あっという間に吹雪となり、尾根筋を登りきった頃には完全にホワイトアウトとなってしまいました。
伊吹山の山頂付近は広い平野状の地形で草木が少なく、ホワイトアウトになりやすい事は警戒はしていましたが、認識が甘かったようです。
三角点まで残り直接距離で300m程。戻るよりも山頂を目指し、側にある避難小屋に避難する方が安全と判断し、慎重に歩みを進めました。
完全な白の世界の中、恐らく山頂まで残り100m程という所で、遂にやってしまいました。
なんと同じ所に戻って来てしまったのです。「これがリングワンデリングか!」心拍が一気に上がった。
景色など殆どない状態でしたが、時折見える微かな人工物の残りで、同じ所に戻って来た事は明白でした。
この時点で1時間以上彷徨っていた僕の精神は、折れてしまい半分パニックになってしまいました。
幸いにも妻の方は冷静さを保っており、その後はルートファインディングを先導してもらい、何とか避難小屋を発見しました。
避難小屋を見つけた時の感激と安堵感は、今でも覚えています。
そして驚いたのは、避難小屋はかれこれ1時間以上彷徨っていた所から、それほど離れていなかったという事。
その後、もうこの日は小屋で休もうかと考えていましたが、天候が落ち着き始めたので、何とかその日の内に下山する事が出来ました。
降りて来てから冷静に考えると、対処の仕方は何通りかありましたが、当時は全く考えに至りませんでした。
この山行は雪山の恐ろしさと、自身の未熟さを身を持って味わった山行となりました。
第1位:西穂の稜線で見た幻影
雪山登山を始めた2年目の冬に西穂高の山頂を目指していた時の話です。
新穂高ロープウェイで西穂高口まで上がり、そこから1時間ほどの距離にある西穂山荘にテント泊を行い、翌日に西穂山頂を目指すという計画でした。
2日目の朝、テント場を出発し、独標を超えてピラミッドピークまで来た時に、一緒に歩いていた妻が「疲労により下山したい」と言い出しました。
これまで2回撤退していた私はこの日どうしても山頂に立ちたい思いから、別行動を提案し、私はそのまま山頂へと向かっていきました。
(※この様な稜線上での別行動は絶対にやってはいけない行動です。今でも反省している愚かな行為です)
その後、妻は別行動とは言っても、一人で下山する勇気もなく、ピラミッドピークで私の帰りを待っていました。
最初の内は山頂から降りてくる他の登山者が通過していき人の気配がありましたが、時期に人の姿は完全になくなり、妻は一人になりました。
その頃からガスが湧き始め視界が少しずつ悪化していきました。
冷たい風に打たれながら、西穂山頂の方に目を向けると、ピラミッドピークから少し進んだ小ピークに人が座っているのが見えたのです。
しかし、そこはルートから逸れた急斜面。「尋常ならざる状況でそこにいる」と思い助けに行こうと、少し歩き出して「これはおかしい」と思い立ち止まりました。
妻は、ポケットからスマホを取り出して写真を撮って拡大して、何度も確認したといいます。
そうこうしている内に、私が山頂から降りてきましたが、ガスが迫ってきていたので、すぐに西穂山荘へと下山しました。
この日に遭難や行方不明のNEWSも出ていなかったので、
恐らくは「冷たい風が吹き付ける稜線に一人でいるという恐怖心と、体温の低下による認識力の低下による”見間違い”を起こした。」のだと思います。
あの時「岩に向かって歩き出していたら」と思うと今でもゾッとします。
そして、更に怖かったのは妻が「見間違い」を起こしていたであろう同じ時間に、私も西穂の山頂からの下降中に急速に湧き出したガスにより一瞬道迷いを起こしそうになっていたのです。
当時の未熟さが招いた人為的な出来事(ミス)であり、通常であればこんな事にはならないはずです。
二人一緒だったら「そもそも岩が人に見える」なんて状況にはなっていなかったでしょう。
二人一緒に登っているのならば、絶対に別行動をしてはいけません。
今回の出来事で、一つの判断ミスが事故を誘発するのだと身をもって実感しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
夏山での恐怖体験に続いて、冬山での恐怖体験をご紹介させていただきました。
以前の記事でも言いましたが、山で一番怖いのは「自然」なのです。
山での恐怖の原因を作っているのはいつも人間である自分自身です。
行動判断、天候判断など、一瞬の判断ミスが大惨事を引き起こすということを忘れてはいけません。
雪山は美しくもありながら、一瞬で命を奪う危険な世界でもあります。
「安全」を第一位に雪山登山を楽しみましょう。
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