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雪山登山でのロープの長さと種類について「シーン別に解説」

登山 ロープ ペツル

雪山登山は危険箇所を通過したり下降することも多く、状況によってはロープによる安全確保が必要な場面が出てくることもあります。

しかし、一体何メートルのロープを持参するのが適切なのか、非常に迷うポイントでもあります。

今回は、自身の経験から雪山登山で必要となるロープの長さや種類について解説していきたいと思います。

雪山登山でのロープの長さと種類について「シーン別に解説」

ロープの長さと種類

ロープの長さ

登山 ロープ ペツル

 

雪山登山に関する参考書などでは、「雪山登山においては、50mのシングルロープが必要」と記載されている事が多い。

確かに50mあれば、相当な距離の安全確保を行う事ができ、懸垂下降においても十分な長さを下降する事ができます。

 

しかし、全ての場面において50mが必要かと言われると、そうでもないのが事実です。。

勿論、どのような山行を実施するのかによって、必要なロープの長さは変わってきますが、ざっくりと纏めると以下のようになります。

 

▼一般的な冬季ルートにおいて、安全確保を行う場合

「30mで足りる場合が多いが、場合によっては50mが欲しい」

一般的な冬季ルートの難所において、「リーダーはフリーで十分に登下降できるが、他のメンバーは念の為ロープによる安全確保を行いたい。」といった場合、30mあればひとまず難所を引き上げたり、ロアーダウンさせたりは可能となります。

しかし、懸垂下降を行う場合、30mロープの場合、最大で半分の15mしか下降する事ができないので、状況によってはメンバーをロアーダウンさせた後に、自分自身もクライムダウンで降りる事が求められます。

また、難所が連続して、ピッチを切りながら繰り返し確保を行う事が想定される場合などは、初めから50m以上のロープを用意しておく方がスピードダウンにならずに済む。

 

▼バリエーションルートを積極的に攻める場合

「50m以上のロープが必要」

八ヶ岳のバリエーションルートや、「冬季バリエーションルート」と名の付くルートの中でも、特に難易度の高いルートに挑む場合などは、50m以上のロープが必要となります。

 

 

実際、私自身もロープは30mと50mの2種類を所有しており、山行によって使い分けています。

 

 

ロープの種類

雪山登山に関する参考書などでは、「雪山登山においては、50mのシングルロープが必要」と記載されている事が多いです。

危険個所において、ロープ1本のみで確保を行う場合は、セオリー通り「シングルロープ」での運用が最も確実であることは間違いありません。

 

しかし、シングルロープははっきり言って「重いですよね」

どれだけ軽量なモデルで、シングルロープの50mともなれば、重量的にも結構な重さとなり、「念の為」としてロープを持っていく場合、現実的ではないと考えてしまうのではないでしょうか?

それであれば、ダブルロープの50mであれば、シングルロープに比べて比較的軽量で済む為、重量面での問題は解決へと向かいます。

 

「ダブルロープを1本で使用しても良いのか?」という問題が起こりますが、これは登山者の自己の責任において運用することとなります。

雪山登山で遭遇する「危険個所」では、クライミングでの自由落下のような滑落ではなく、登山者自身が斜面を滑り落ちる際の抵抗により墜落による荷重が分散されるので、ダブルロープを1本で使用しても問題はないであろうと判断して使用しています。

 

 

  • シングルロープ50mの重さを敬遠して、持参せずに危険個所をフリーで通過するリスク
  • シングルロープを1本で使用するリスク

どちらの方がリスクがあるかと言えば、前者の方が危険度は高いでしょう。

重量を気にして危険箇所を安全対策を何もせずに通過するくらいであれば、ダブルロープを1本で使用する危険性を理解した上で運用する方が安全だと言えます。

 

▼補足

  • ロープ選びは、クライミング用のダナミックロープであることは必須。
  • 表面にドライ加工が施されていることは必須。
  • ロープの経は「細すぎるとクリップや確保がしにくい」というデメリットがあると言われているが、それはクライミングの話であり、登山での難所で使用するという観点から見た場合、クライミングのような極限の姿勢でロープを操作するという場面がないので、ロープの径が細いことを心配する必要なないように思う。

 

 

実際の山行別に紹介

西穂高岳

西穂西尾根

西穂高岳は冬季登山における一つの大きな目標として設定されるほどで、本格的な雪山の登山技術が求められる。

しかし、人気の山域ということもあり、登山者も多く、ステップ等のトレースが明瞭であることも珍しくない。

西穂高岳に関してはロープを必要とする場面は少なく、登場するとすれば「独標直下」や「主峰の直下」などが想定されますが、30mロープで対応可能と思います。

 

 

西穂高岳 西尾根

西穂西尾根

西穂高岳の冬季バリエーションルートである「西穂西尾根」は数箇所、難所と呼ばれる場所が登場するので、当日のコンディションやメンバーの力量によってはロープの出番もありうるので、是非持参したい。

必要な長さに関しては、リーダーやメンバーの力量、どこまでの範囲を確保するのかにより必要な長さが分かれると感じました。

「ここは滑ったら危ない...」という箇所のみ随時ロープを出すということであれば30mでも対応できますが、その場合、確保者と被確保者の両方が一定以上のレベルを有している事が前提となります。

 

槍ヶ岳 中崎尾根

厳冬期槍ヶ岳 中崎尾根〜西釜尾根

冬季の槍ヶ岳へと至るルートは、一般の登山者は新穂高側からの入山が一般的となり、「飛騨沢」「中崎尾根」「大喰岳西尾根」のいずれかとなるでしょう。

 

中崎尾根の上部の岩峰を直登した際に、後続を確保しました。岩峰のみの確保の場合は30mロープで十分に足りましたが、その後に待ち構えているリッジも継続して確保する場合は、30mでは足りず50m以上が望ましいと感じました。

穂先に関しては、冬季に槍ヶ岳に挑戦する時点で求められるアイゼン・ピッケルワークを有していればロープの確保は不要だと多いますが、完全に氷化している場合など、確保を必要とする場合においても、30mロープで対応可能と判断しました。

 

 

南岳 西尾根

南岳西尾根2022年5月

 

南岳西尾根は冬季バリエーションルートの中でも、総合的な難易度として高い部類に入ります。

下部の急登から、稜線上のリッジ、主稜線に上がってからも状況によっては中岳からの下りなど、ロープを積極的に使う場面が出てきます。

支点を確保できる場所も不確定なので、50m以上のロープが必須となります。

 

 

涸沢岳西尾根

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

涸沢岳西尾根は、奥穂高岳へと通じる冬季メジャールートですが、急登から始まり、雪庇帯の通過、ルンゼや岩と雪のMIX帯のが続く総合力の求められるルートとなります。

しかしながら、ロープを真に必要とする場面は意外と少なく、メンバーの力量が伴っていればロープの出番はない場合もあります。

涸沢岳までに絞れば、ロープを必要とする場面は、「蒲田富士直下のFIXロープの箇所」及び「F沢のコルの後のルンゼから左手の岩稜帯へと取り付く箇所」の2回ほどとなります。

ロープの長さとしては、「登りの引き上げ」及び「下降のローアーダウン」で30mロープでは完全には足りず、50mもなくとも良いと言った印象です

。後続のメンバー念の為、確保するという程度であれば、重量とのバランスを考えて30mでも問題ないかと思われます。

 

 

剱岳 早月尾根(初冬)

10月~11月の初冬の「剱岳 早月尾根」の場合、ロープの出番はそれほどなく、出すかどうか迷うとすれば山頂直下のルンゼのみでした。

ルンゼは50m弱ありますが、懸垂用の視点が3箇所あるので30mロープでも3ピッチに分けて降りてくることが出来ます。

その為、初冬であれば30mロープで対応可能となります。

 

 

南八ヶ岳 縦走「赤岳〜硫黄岳」

厳冬の南八ヶ岳

南八ヶ岳の赤岳から硫黄岳へと縦走する場合、難所をいくつか通過するので本格的な雪山装備と相応の技術が必要となります。しかし、人気ルートの為、天気の良い日であれば、登山者も多くトレースも明瞭で、危険個所においても立派なステップが出来上がっており、ロープの出番はほとんどありません。

こちらに関してもどの程度の距離を確保するのかにより、求められる長さは変わってきますが、30mロープで十分と言えるでしょう。

 

 

まとめ

登山 ロープ ペツル

「ロープは要らないだろうけど、念の為に...」というのであれば、30mで対応できるケースがほとんどですが、それはメンバー全員の力量が一定以上備わっていなければいけません。

ロープによる安全確保は、雪山という不確定要素を含めた万が一の滑落に備えてというもので、挑戦する山行に求めれれる岩登りの技術やアイゼンピッケルワークが備わっている事は前提条件となります。

 

ロープは長いほど対応できる幅は広がりますが、重くなったり、ロープの取り回しに時間が掛かるというデメリットがあります。

全ての問題を解決するには、日頃からロープの操作を練習し、体力をつけて、50mロープを問題なく担ぐ事ができるようになる事だと思います。

 

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