テント泊を行うようになると山にどっぷりと浸かることが出来て、日帰り登山では味わえない山の楽しさを味わうことが出来ます。
しかし山岳テントは色々なメーカー・ブランドがあり、何を選んだ良いのか分からなくなると思います。
今回は、低山から北アルプス縦走、厳冬期の雪山登山などテント泊を累計167泊した経験から、テントの選び方について徹底的に解説していきたいと思います。
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【解説】初めての山岳テントの選び方
まずはじめに、登山で使用するテントを選ぶ際の大前提をお伝えしておきます。
【大前提1】山岳テントを選ぶ
キャンプ用やビーチ用のテントなどを登山で使用するのは大変危険です。
またシェルタータイプも夏は良いですが、冬は現実的ではありません。
【大前提2】自立式を選ぶ
夏の登山では非自立式のシェルターも見かけますが、悪天候などの緊急時を視野に入れると、最初の一張目は自立式の方が安全です。
ダブルウォール テントとは...
ダブルウォールテントは、テントの構造が「通気性・透湿性に優れた本体」と「防水性に優れたフライート」の2つに分かれているのが大きな特徴です。
メリット1:前室がある
フライシートのお陰で「前室」というスペースがあるのが、ダブルウォールの最も大きなメリットだと思います。
ココがおすすめ
- とりあえず脱いだ靴を置いておける
- お湯を沸かしたり、調理ができる
※結果的に、テント内の結露の発生を抑えられる
前室があることで、テントの中を広々と使うことができます。
また、前室があれば夏場など暑い時期に、フライシートは閉じて、本体の入口は全開放(メッシュ)にしておくなどすれば、空気を入れて涼しくしつつも、プライバシー空間を保つということが可能。
メリット2:結露しにくい
テントの構造的に、シングルウォールに比べると結露が発生しにくい事も、ポイントの一つとなります。
こんなイメージ↓
テントの構造が「通気性・透湿性に優れた本体」と「防水性に優れたフライート」の2つに分かれているので、
内部で発生した蒸気がテントの外に逃げて行きやすくなっています。
デメリット1:設営に「時間」と「広さ」がいる
ダブルウォールテントの設営の手順
1.本体にポールを通して、組み立てる
2.フライシートを被せて、張綱をフライシートに通す
3.張綱を最低8箇所固定する
という流れになります。
晴天無風の日であれば、この作業も楽しみの一つですが、風雨が激しい時などは一刻を争うのでなかなかに大変です。
▼混雑時は大変
フライシートを広げる分、シングルウォールに比べると設営に必要な面積は大きくなり、テント場が混雑している場合や、限られた場所でのビバークの時などは場所の確保に難儀する時があります。
▼整地がちょっと大変
また、雪山登山では「整地」という地味に面倒な作業が必要で、フライシートの分も十分に確保しなければならず、時間がかります。
但し、これらのデメリットは「シングルウォールに比べれば」という程度の話ですので、比較の際に参考にして下さい。
デメリット2:結局は結露する
先程のメリットの結露しにくいとは矛盾する内容になりますが、結露し難いいというだけであり、
その時の湿度や風・ガスの有無などの様々な条件により結露が発生することも多々あります。
また、テントの「四隅(ポールの通っている箇所)」や「テントの上部」などはフライシートと本体が密着する為、このあたりはテント内部の蒸気が上手く逃げずに結露が起こりやすくなります。
過度な期待をすると裏切られることになります。
シングルウォール テントとは...
シングルウォールテントは、テントが1枚の生地で出来ており、コンパクトで素早い設営が可能なところが大きな特徴となります。
メリット1:設営に時間がかからない
「設営が早い」これが最も大きなメリットだと思います。
シングルウォールテントの設営の手順
1.テントにポールを通して組み立てる
2.張綱を4本固定する
これで完成です。
設営が早いということは、撤収も早いということです。
BC型の単純ピストンの山行の場合だとあまり気になりませんが、縦走登山や雪山登山の場合、常に時間との戦いになります。
メリット2:設営場所は最小限でOK
また、シングルウォールテントは、ダブルウォールと違いフライシートがないので、テントの本体分のみの広さがあれば設営が可能となります。
ココがポイント
- テント場が満員の時...
- 予想外の場所でビバークを余儀なくされた時...
このように十分な広さが確保されない場所でも、
テントの本体分のみの広さがあれば設営が可能となります。
テント泊を行なっていると、予想外の出来事も起こります。
柔軟に対応出来るというメリットは、非常に大きなアドバンテージとなります。
また、雪山でのテント泊の場合、「整地」という地味に面倒な作業が必要ですが、シングルウォールの場合は、整地も最小限の時間で終了します。
デメリット1:前室がない
ダブルウォールのように前室がないので、調理や湯沸かしなどはテントの外で行うか、テントの中で行わなければいけません。
快晴無風であれば、テントの外で優雅に過ごせるのですが、雨が降っていたり、冬で寒かったりするとテントの中で過ごさざるを得ません。
テントの中でお湯を沸かすという作業は予想以上に大変です。
ココに注意
- 雨が降っていると、換気の為に開放した入り口から雨が滴り落ちてくる...
- 湯沸かしの蒸気で結露が発生する...
- もしも転倒したら、水浸し&火傷...
疲れた身体に鞭を打ち、神経を尖らせながら作業をしなければいけません。
雪山登山の場合は、水作りという一仕事があるので、更に大変です。
(※テント内での火器の使用は細心の注意のもと、自己の責任にて行ないましょう)
前室がないので、荷物を一時的に置いておく場所もなく、全てテントの中に収納しなければならず、整地整頓が求められます。
デメリット2:耐久性には少し劣る
ダブルウォールテントは、本体+レインフライの2枚重ねに対して、シングルウォールテントは1枚の生地で出来ています。
その為、紫外線や風雨に直接さらされており、どうしてもダブルウォールに比べると耐久性では劣ってしまいます。
とは言え、何年という長い年月使用し続けて初めて現れる差ですので、あまり心配はいりません。
テントの選び方
ダブル? それとも シングル?
「ダブルウォールテント」と「シングルウォールテント」のそれぞれにメリット・デメリットがあり、一概にこちらがおすすめ!とは言えませんが、
「ダブル」と「シングル」の両方のテントを所持しており、数十泊のテント泊の経験から言わせていただくと、
今後の登山の方向性を見極めた上で購入するのがベスト
だと思います。
とは言っても、
これから初めてテント泊を始める段階で、これから先の展望なんて分からないのが実情だと思います。
そうなると、やはりセオリー通り、
最初の1張目は「ダブルウォール」
2張目以降は「シングルウォール」
というのがベターだと思います。
(最初の内は軽量性よりも快適性を優先する方が無難という考え)
夏だけではななく、冬も積極的にテント泊を行う場合は、最後の「アドバイスの項目」も是非参考にして下さい。
サイズの選び方は?
「どのサイズが自分に合っているか」は、各登山者の山行スタイルによって異なってくるので、自身の経験を通して理解を深めていくしかありません。
が、しかし、
その上で、アドバスをするとなると、やはり
定石通り最初の一張目は「使用人数+1人」のサイズのテントを選ぶと良いと思います。
初めてのテント泊は想像している以上に大変です。
最初の内はハイレベルな山行はしないと思うので、快適性を優先する方が無難です。
私は妻との2人1組で登山に行っており、所有しているテントは、以下の3種類です。
▼ダブルウォールテント
「モンベル・ステラリッジ3(3人用)」
※初めて購入したテント
▼シングルウォールテント
「アライテント・エックスライズ2「2人用)」
※2張目として購入目
▼シングルウォールテント
「fine trackカミナモノポール2」
※3張目として購入目
ゆったりとしたテント泊山行の時は、モンベル・ステラリッジ3「3人用」を使用
雪山や縦走などの攻めるテント泊の時は、アライテント・エックスライズ2「2人用」を使用
軽量性を徹底的に求めるテント泊の時は、fine trackカミナモノポール2「2人用」を使用
山行スタイルによって使い分けるようにしています。
入口のタイプ「横型?縦型?」
入口 横型タイプ
【メリット】
- 間口が広く、出入りがし安く。前室で調理をする時も楽
【デメリット】
- 夜トイレなどに出る時に、奥(入り口から遠い側)に寝ている人は入り口側に寝ている人を跨いで行かなければならない
- 間口が広いので、風の強い日はテント内に風が入りやすい
- 雪山登山などで最小限の場所でテントを設営する時に、設営に求めらる面積が、入り口が縦型に比べて多く必要
入口 縦型タイプ
【メリット】
- 間口が狭いので、風の影響を受け難い
- 雪山登山などで最小限の場所でテントを設営する時に、設営に求めらる面積が最小限で済む
【デメリット】
- 入り口が狭いので、調理や湯沸かしなどは入り口側にいる一人しか作業が出来ない。
どちらのタイプもそれぞれ良い所と、不便なところがありますが、
個人的には入り口が縦型の方が便利なように思います。
どのメーカーがオススメか?
山岳テントはいろいろなメーカーから様々なモデルが発売されており、どれを選んだら良いか迷うことでしょう。
耐水圧や防風性など数値的な面では、山岳テントとして有名なメーカーであれば大きな差はありません。
ですので、有名なメーカーの中から選ぶのであれば、見た目や直感など、自身の好みで選んで問題ないと言えます。
有名山岳テントメーカー
- モンベル(mont-bell)
- アライテント(ARAI TENT)
- ファイントラック(Fine track)
- MSR
- エスパース
あえて言うならば、「モンベル(mont-bell)」「アライテント(ARAI TENT)」「ファイントラックFine track」など日本のブランドを選んでおくと、
故障時の修理対応や、アタッチメントの購入など、安定した共有網に期待が持てます。
アドバイス
冬用の外張よりも、シングルウォールを選ぶべき
テントを選ぶ際に、考えて欲しいのが「今後、雪山登山をするかどうか」という点です。
ダブルウォールテントを買って「冬は外張で対応する」と考えている場合、一度考えてほしいです。
冬用の外張の是非の話の前に、フライシートの仕組みについて振り返っておきましょう。。
▼フライシートの仕組み
フライシートは上の図の通り、完全防水の為、フライシートは雨だけではなく風も通しません。
その為、テントの内外の空気の換気は、フライシートの裾の地面との10数センチの隙間で行われています。
(一応、ベンチレーターも換気の役割もあります。)
▼フライシートでテント泊した際の危険性
雪山では一晩で数十センチの降雪があることも珍しくなく、仮に夜の間に20cmの降雪があった場合どうなるかというと、、、
上述の通り、フライシートの裾の10数センチの隙間で換気を行なっているので、20cmもの降雪があると裾が雪で埋もれてしまう可能性が十分にあり、フライシートは空気を通さないので換気ができず、テント内は一酸化炭素中毒になる危険性が高いのである。
(ベンチレーターがあるので完全密封になる訳ではありませんが、ベンチレータだけを頼りにするのは危険)
▼外張りなら降雪があっても安心
その点、冬用の外張は空気を通すので、テントが埋もれない限り、問題はありません。
▼外張りの欠点
しかし冬用の外張は、風を通すという性質上、完全防水ではないので、雪には対応できますが、雨やみぞれには弱いです。
雪であれば、外張の上に雪が乗っても、風で飛ばされたり、テントの中から叩けば落ちますが、ミゾレの場合は外張に付着し、内側からの熱で溶けて水分となり、テントの中に染み込んで来てしまいます。
雨ともなれば容赦無くそのまま染み込んできます....
北アルプスなどの3,000m級の高山で1~2月の厳冬期に積極的にテント泊を行うのであれば、冬用の外張は大きな力を発揮しますが、
1,000m級〜2,000m 級の山では冬でもミゾレ混じりとなることも多く、
また3,000m級の高山でも春先にかけては2,000m付近など、主にテントを設営する標高では雨やミゾレとなることも多く、
外張が本来の力を発揮する機会は予想以上に少ないです。
また、冬用の外張はフライシートに比べて非常に重く嵩張り、設営にも一手間かかるということを覚えておいておくと良いでしょう。
▼シングルウォールは万能
それに比べて、シングルウォールテントは「雨を通さず空気は通す」ので、雨・雪・ミゾレの全てに対応できるので、外張よりもシングルウォールをオススメします。
因みに、冬用の外張は保温効果が上がると言われていますが、私の経験で厳冬期の北アルプスなどではどんなテントであっても、寒いものは寒いので、大きな差はありません。
fine trackのカミナモノポールは、シングルウォールテントでありながら、前室があるという画期的モデルとなっています。
また、2人用で総重量が1kgを切るという驚異の軽量性を誇っているのもポイントです。
※これはツェルトやシェルターではなく、山岳用テントとしての位置付です。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
【レビュー】超軽量テントfinetrackカミナモノポール2
モンベルのシングルウォールテント「マイティードーム」であれば、前室のみのアタッチメントも発売されているので、「雨の日だけ前室があるバージョンにする」ということも可能。
私も本当はマイティードームが欲しかったのですが、当時は欠品続きで再販の見込みが経っていなかったので、エックスライズを購入しましたが本当は「マイティードーム」+「前室のみのアタッチメント」が欲しかったです...。
画像の引用サイト
モンベル | オンラインショップ | マイティドーム2 オプショナルキャノピー
まとめ
いかがでしたでしょうか。
山岳テントは1張5万円ほどするので、簡単には買い替えたり、買い足しすることができないので、迷いどころだと思います。
ダブルウォールとシングルウォールのまとめ
- ダブルウォールは、快適だけれど、少し重たくて設営が少し面倒
- シングルウォールは、少し軽くて設営が楽だけれど、快適性に少し劣る
選び方のまとめ
- 老舗の山岳テントメーカーを選べば、後は好みでOK。
- 1張目はサイズにゆとりをもった「ダブルウォール」
- 2張目以降は最小限のサイズの「シングルウォール」
というのがベター
テント泊で登山の可能性を大きく広げましょう!