雪山登山で必須装備の一つである「アイゼン(クランポン)」
今回はグリベルの12本爪アイゼン「G12」を8年間使用している経験からレビューをしていきたいと思います。
▼関連記事
【レビュー】12本アイゼン:GRIVEL(グリベル) G12EVO・ニューマチック
アイゼンの紹介
▼GRIVEL(グリベル) G12EVO
「GRIVEL(グリベル) G12EVO」は一般的な縦走登山からアルパインクライミングまで雪山登山全般に対応可能な12本爪アイゼン(クランポン)です。
グリベルのG12は最も有名なアイゼンの一つで、山の中で見かける事も多いですね。
タイプは2種類が展開されています。
≪オーマチック≫
装着方法:ワンタッチ式
重量:1012g
≪ニューマチック≫
装着方法:セミワンタッチ式
重量:1006g
ワンタッチ=つま先、かかとの両側を金属パーツで固定する方式
セミワンタッチ=つま先はプラスチックハーネス、かかと側はバインディングシステムの方式
▼使用 ているアイゼンはこちら
Amazonで購入する場合はこちら
※アイゼンは靴との相性が重要となりますので、事前に靴との相性を確認した上で、型番に注意して購入するようにしましょう。
実際のフィールドでの使用レビュー
雪面への食い込み
グリベルG12の最も大きな特徴として、2本目の爪が長く、斜め前方向に向いている為、急斜面で雪面を蹴り込んだ際の食込み度合いは申し分なく、2本目の爪の上部は少し後方に鋭く反り返っているので、安定性も高くなっています。
雪山での山行記録などで「前爪しか刺さらない状態....」というワードをよく見かけますが、先端の2本も大切ですが、雪面に触れているのは2本目であることが多いので、雪面安定性という面では2本目の歯の形状が最も大切だと言っても過言ではありません。
岩場での安定性
グリベルG12の最も大きな特徴である「2本目の爪の長さ」は、「雪面安定性」においては非常に高い力を発揮しますが、
しかし、
「G12」と「エアーテックEVO」を比べた場合、汎用性の高さから「G12」が圧倒的にお勧めです。
その最も大きな理由としては、「実際で岩場での安定性は、登山者自身の力量による所が最も大きくなる」からです。
適切な技術が伴っていれば、理屈上の優劣を簡単に補うことができます。
実際、G12で西穂高などの雪面と岩場が交互に現れるMIX帯や、槍ヶ岳の穂先などの岩場が連続する場面などを沢山歩いてきましたが、問題なく対応できています。
アイゼンをシチュエーションに併せて複数所持できる場合を除けば、理論上での判断ではなく、汎用性を優先する方が良いでしょう。
柔雪への対応力
前爪が横広タイプなので、アイスクライミング用の縦タイプよりも浮力は高めと言えます。
また、シャフト部分にはアンチスノープレート(別売り)を装着する事が出来るので、雪団子が付着しにくくなっています。
しかし、こればかりは雪面の状態がどの程度緩んでいるのかなどの環境的要因が最も大きく影響するので、モデルによる差別化は難しいと感じています。
その他、ハード面のレビュー
登山靴との相性
グリベルのアイゼンは、数あるアイゼンの中でも登山靴との適合率が最も高いとされています。
私はスカルパの「ファントムガイド」や「モンブランプロGTX」とグリベルG12を合わせて履いています。
※靴とアイゼンの相性は非常に大切です。必ず自分自身の靴と適合するか確認の上、購入しましょう。実店舗での購入や、通販購入でも靴を郵送すれば、店舗で適合可否を確認してくれるサービスを行っているショップもあります。
また、グリベルではソソールが内側へカーブしているシューズに対応する為のジョイントプレートが別売りで販売されています。
必要に応じて購入するもありです。
サイズ調整のしやすさ
アイゼンのサイズ調整はプレートと踵のバインディングシステムで調整します。
旧モデル(右)は無段階調整式でしたが、最新モデル(左)は3段階式となっています。
これは正直、不便ですね。
旧モデルの「かかと」のツマミを回す無段階調整式は、好みの硬さに出来るので良かったのですが、3段階式だと「キツイ」か「緩い」のどちらかになってしまう場面もあります。
ここはグリベルさん何とかして欲しかったです。
あと、ワンタッチ式のつま先側の金具の調整がめちゃくちゃ固い!
つま先側の金具は靴とのサイズ調整の為に、装着箇所を2箇所の穴から選べるのですが、これの取り外しがめちゃくちゃ固いんです。
これは腕力の問題を超えています。
因みに私達は夫婦で同じアイゼンを履いているので、2足分持っていますが、どっちも凄まじく硬かったです。
説明書に記載のやり方でやりましたが、非常に苦労しました。
アンチスノープレートの性能
アイゼンのプレート部分には別売りのアンチスノープレート(ゴムのチューブ)を取り付ける事により、雪がアイゼンに付着することを抑制する効果があります。
実際の効果の程ですが、
【気温が低く乾燥した雪】アイゼンに付着する事はほとんどありません。
【雪がそれなりに締まっている場合】大きな問題にはなりません。
【雪に多くの水分を含む柔雪の場合】雪団子が出来る事が多々あります。
といった具合で、雪の状態によっては雪が多量に付着することがあるので、無いよりはマシという程度に捉えておく方が良いでしょう。
これも、旧モデルの場合は標準装備だったんですが、最新モデルからは別売りになっています。
耐久性 & メンテナンス
アイゼンの買い替えの理由として靴の変更以外では、「刃の短さ」と「パーツの損傷」のどちらかが殆どだと思います。
【刃が短くなる】
アイゼンの使用後は程度の差はあれ、必ず刃先は丸くなるので、下山後は必要に応じて次の山行の為に必要丸くなった刃を研ぐ必要がありますが、この繰り返しが刃を短くする要因の一つとなります。
氷結した雪面に対応する為にはアイゼンの刃が鋭く尖っている必要がありますが、刃を鋭く研げば研ぐほど摩耗も激しくなります。
また、岩と雪のMIX帯や残雪期などの岩が露出する機会が多い場面も、摩耗が進みやすくなります。
【金具やプラスチック部分の破損】
下山後なるべく早く「洗浄・乾燥・錆落とし・防錆処理」等の行い、器具の接合部分にはオイルを差すなど、適切なメンテナンスを行っていれば防ぐことの出来る問題です。
▼必要なメンテナンス
- アイゼンは解体する
- 水で洗って汚れを落とす
- 乾燥させる
- 錆を金属ブラシ等で落とす
- 丸くなった刃を研ぐ
- 研いだ刃を含めてアイゼンの金具の部分に防錆処理を施す
アイゼンを雪山に持って行けば絶対に錆は発生します。
錆びの放置は劣化を速める原因となるので、時間がない場合などでも、水洗い後の乾燥までは必ず行いましょう。
【私の使用状況はこちら】
私の場合は、6年使用して刃がそこそこ短くなったので買い替えを決意しました。
11月の初冬から5月の残雪期までワンシーズンで10回くらい使用しており、岩と雪のMIX帯にもよく出かけ、アイゼンの刃は毎回そこそこ鋭く研いでいました。
交換直前は上の写真のような状態で大分と刃が短くなってきていました。
アイゼンは消耗品です。どれだけ大切に扱っていても、いずれは買換えが必要となります。
また、アイゼンが山の中で破損・故障した場合、状況によっては下山が出来なくなったり、滑落事故を起こしたりと、非常に危険な状態となります。
日頃からメンテナンスを行なうと共に、傷みなどがないか小まめにチェックするようにしましょう。
まとめ&総評
今回はグリベルの12本爪アイゼン「G12」をご紹介させて頂きました。
冒頭でも述べましたが、最も多く使用されているアイゼンの一つであり、山の中でも同じモデルを目にすることも多く、それだけ多くの登山者に愛用されているということでしょう。
実際に8年間使用してきましたが、雪面への食い込みや岩場での安定性も高く、信頼の置けるアイゼンと言えます。
最新モデルに代わってから、かかとのバインディングシステムが無段階から3段階式に変わった点だけが唯一の不満点です。
造りも非常にしっかりとしており、トラブルも一度も起こっていないので、使用後のメンテナンスさえしっかりと行なっていれば、長く使用することが出来ます。
靴との適合性さえ問題なければ、購入して間違いのないアイゼンだと思います。