fine trackから発売されている超軽量テントの「カミナモノポールテント」
- シングルウォールなのに前室がある。
- テントなのに1kgを切る
という他ではあまり見ないスタイル。
今回はこちらのテントをご紹介していきます。
※雪上での体験談もご紹介しています。
関連記事
【レビュー】軽量テント finetrack カミナモノポール2
テントの紹介
カミナモノポールは国産アウトドアブランドの「ファイントラック(finetrack)」から出ているシングルウォールテントです。
特徴を挙げると....
▼超軽量でコンパクト
本格的な山岳テントとしては最高レベルの軽量コンパクト性を誇っています。
【重量】
- 1人用:890g
- 2人用:990g
【収納サイズ】
- 1人用:縦5×横16×高24cm、ポール39cm
- 2人用:縦6×横17×高25cm、ポール39cm
もう一回言わせて下さい。これはツェルトでもシェルターでもなく、テントです。
テントで1kgを切るのは凄いことです。
比較すれば一目瞭然
- 左:アライテント エックスライズ2
- 右:fine track カミナモノポール2
同じシングルウォールテントと比べるとコンパクト性は一目瞭然。
収納サイズも一般的なテントと比べても、非常に小さいです。これであれば、小型のザックでも十分にパッキングが出来ます。
▼オールシーズン使用可能な全天候型
前述の通り、超軽量でありながら、厳しい環境下でも使用可能なので、ハードな山登りをガシガシされる方にもおすすめです。
- 風速25~30mの耐風テストをクリア
- 十分な耐水圧:本体1,000㎜、底1,800mm
- 十分な透湿性:6,000g/m2
雨天でも気にせずに使用できるると言うのは、気象条件が変わりやすい日本の山岳地帯においては、非常に大きなポイントと言えます。
▼前室があるシングルウォール
シングルウォールの最大の欠点である「前室がない」という問題をクリア。
前室で湯沸や調理が出来るので、雨の日も怖くありません。
前室があるので、雨天も結露を気にする事なく、お湯を沸かす事が出来ます。
今のところ、オプションでの装着を除き、前室があるシングルウォールテントは他にはありません。
紹介しているテントはこちら!
設営の仕方(動画あり)
▼動画で見る場合はこちら
テントを広げていきます。
風が強い中でテントを広げる際は、風上側からテントを広げて、水筒などの重みのあるものをテントの上に置いて、風で飛ばされないようにします。
テント本体の四隅にペグダウンをしてテントを固定します。
この時にテントに歪みがないように張り気味で位置固定を行いましょう。
風が強い場合、風上側から優先的にペグダウンを行います。
ポールをスリーブに通していきます。
ポールが末端まで行ったことを確認したら、ポールを起こして行きます。
必ず末端まで届いているか確認しましょう。
これはテント全般で言える注意事項ですが、末端まで届いていない状態で、無理にテンションを掛けるとスリーブに穴が開きます。
ポールの末端をグロメットに差し込みます。
冬季など気温が低い時期は、生地やポールが固くなる時があります。その際は、差し込むグロメットを内側と外側で調整します。
四隅の張り綱をペグダウンしていきます。
尚、ペグダウンはポールの通っていない側から対角線順に行います。
ガイドラインを調整してテントを固定していきます。
1度で強く締めすぎずに、2周くらい回ってくると均一に固定出来ます。
ペグダウンはテントの四隅の対角線の延長線上に行い、張り綱はしっかりと張りを持たせましょう。
張り綱のテンションはテントの全般で大切な事ですが、特にこのテントの場合は快適性や安全面に直結します。
最後に前室部分のペグダウンをすれば完成です。
完成!
周りから見るとこんな感じ。
※クリックすると大きく表示されます。
実際に使用した感想(試し張り~実際の登山)
これまで、試し張りが1回、実際の登山での使用が3回使用(軽6泊)の経験から、実際に使用した感想をご紹介します。
ファーストインプレッション(試し張り)
▼設営のし易さ
設営のし易さについては、最初の内は慣れが必要だと思います。
(しかし、これに関してはどんなテントでも同じ事が言えるので特に問題ありません。)
今回は敢えて風が強く吹き抜けている峠でテントを設営してみましたが、問題なく設営が出来ました。
特に風のない場所での設営の場合、非常に簡単だと思います。
▼入口について
テントへの出入りのし易さについては、テントが2人用にしては若干小さい為、間口も小さい印象です。
とはいえ、「超軽量テント」と言う大前提を考えると気にならないレベルです。
入り口にはメッシュが付いており、虫の侵入を防ぎつつ換気を行う事が可能。
メッシュの開閉は入口側から行えます。
テントによってはメッシュの開閉は外側からというモデルもあるので、これは評価ポイントです。
入口はフルオープンには出来ないので、開けておきたい場合は、まとめて留めておきます。
これが間口が狭いと感じる所以です。
前室には靴を2人分置けます。(前室は夜間に結露が発生する場所なので、就寝時はテントに入れるかゴミ袋等に入れてから置きます。)
詰めれば、ロープやヘルメットなどの嵩張るものも一緒に置くことが出来ます。
湯沸や調理も可能。
▼ベンチレーターについて
標準で付属のベンチレーターの紐にはクリップが付いていない為、若干開閉がやり辛い印象です。
メッシュ生地は閉めないと夏などは虫の侵入が気になります。
自分で追加!
自前でクリップを追加!
これでメッシュを完全に閉じる事が可能です。
(※本体生地は酸欠防止の為に完全には閉じません。)
クリップは数百円で変えるので、ご自身で装着される事をおすすめします。
▼内部の広さについて
マットを2人分並べるとこんな感じ。
カミナモノポール2のサイズは、
縦:210cm
横:120cm
高:103cm
ですので、マット(横51cm)を2人分並べると、左右の余りは片側9cmと殆ど無くなります。
前後は比較的余裕がありますので、整理整頓をすれば問題ありません。
中で座って食事をとるとこんな感じ。
一人での利用であれば特に問題ありません。
2人での利用の場合は各自が前後に分かれて座る事になるので、常に前に傾いた姿勢になります。
どちらの場合も圧迫感はありませんが、我慢は必要な印象です。
強い風が吹くと、こうなります。
ポールの内側に風がぶち当たると、その部分が内側に凹みます。
その時の内側はこんな感じです。
テント内に結露などが発生していた場合は、衣類やシュラフを濡らす原因となりうるので、注意が必要です。
今回はわざと風が強い峠で設営し、尚且つ、風が直当たりする角度で設営したので、このような感じになっていますので、稜線上で幕営する場合は、風向きなどを配慮する必要があります。
風が直撃しない場合は、ここまでの事にはならないと思います。
但し、テント自体はびくともしないので、「風速25~30mの耐風テストをクリア」と言うのも、嘘では無さそうです。
実際のテント泊での感想(夏山~雪山)
▼居住性について
気になるテントの中はこんな感じ。正直狭いです。
横幅が一般的な2人用のテントよりも数センチ短いという事は天井が低くなる角度も早くなります。
夏の縦走時もそうですが、最も荷物の多くなる雪山登山では上の写真のように、テント内は荷物でごった返してしまうので、一般的なテント以上に整理整頓が求められると思います。
私達は男女2名(夫婦)ですが、男性二人だと非常に狭く感じるかもしれません。
荷物の整理さえ行えば、狭いことによる就寝への影響は特にありませんでした。
私達も対策として、天候が安定している日の場合は、ロープ、ハーネス、ヘルメットなど嵩張る物で最悪多少濡れても問題がない物は厚手のゴミ袋に入れて、テントの前室またはテントの外に置いています。
また、このテントの特筆すべきポイントの内の一つである前室ですが、やはり便利です。
朝、起床後に朝食用の湯沸かしをテント内で行う場合、その間は未動きが取れません。しかし、テント外で行うと風の影響もあり時間もガスも余分に消費していしまいますが、前室で行えば両方の問題を解決する事が出来ます。
前室は積極的に利用しています。
▼軽量性
このテントの最大のメリットである軽量性についてですが、一般的な山岳テント(同じサイズのシングルウォール)と比べると約400g軽く、実際の山行時にもその恩恵を十分に感じる事が出来ます。
また、それに加えてコンパクトである事から、ザック自体の容量をワンサイズ落とす事も出来る為、装備全体の大幅な計量化を行う事が出来ました。
私自身、カミナモノポールで2023年の北鎌尾根に挑戦した時は、ザックの容量38L、装備全体の重量はロープや食料、水込で15.8kgに抑える事が出来ました。
▼結露について
結論から言うと、他のテントに比べると結露には弱いように感じます。
これまでの幕営経験としては、残雪期の剱岳の早月尾根で2泊、夏の北鎌尾根で2泊、下ノ廊下で2泊と合計6泊しており、まだ比較するには少ないですが、状況としては以下の通りです。
- 場所:早月小屋前の雪上
天気:晴れ
結露:全くなし
- 場所:北鎌沢出合(晴)
天気:晴れ
結露:全くなし - 場所:北鎌尾根(晴~ガス~晴)
天気:晴れ
結露:全くなし
- 場所:阿曽原温泉小屋
天気:雨のち晴れ
結論:大量 - 場所:池の平小屋
天気:晴れ(湿度非常に高め)
結論:大量
テント内外との気温差が大きい冬山や、湿度が高くなる沢筋であっても晴れていれば、他のテントと同等の透湿性を発揮出来ているように感じましたが、雨が降ると凄まじい量の結露に襲われる結果となりました。
外部の雨も勿論ですが、ザックやレインウェアなど多量の水分を含んだ装備をテント内に持ち込まざるを得ないというのも結露を増大させた要因のひとつと思われます。
雨の中の阿曽原温泉小屋でのテント泊の際は、テント内に発生した結露が就寝中の顔に飛んできて冷たい思いをしましたし、翌日の池の平小屋では結露を乾かす為にタオルで拭いてガスで火を炊いた瞬間は結露が消えますが、止めた途端に結露が再発生する無限ループに陥り、非常に苦労させられた経験があります。
雨の日などは他のテントであっても結露は必ず発生するものですが、このテントは特に酷いように感じました。しかし結論を出すにはまだ絶対数が少ないので、もう少し様子を見ていきたいと思います。
▼気になった点
実際に使っていて気になった点として、底面(フロア)の立ち上がり(バスタブ構造)が浅い点があります。
底面(フロア)はテントの中で最も分厚い生地を採用している為、この箇所の面積が増えるという事は重量の増加に繋がる為、軽量性を推し進めると底面(フロア)の立ち上がり(バスタブ構造)が浅くなってしまうのは、ある程度仕方の無いことではあります。
実際の山行でもそこそこ強い雨天時に設営しても、雨の侵入等は起こっていませんが、一般的なテントよりは設営場所にはより一層の注意が必要だと思います。
▼雪山での使用
残雪期の「剱岳 早月尾根」で実際に使用してきました。
雪上での設営の手順と共に、使用した感想をお話ししていきます。
▼設営方法
まずは整地。
テントを広げたら、まずはテントが飛ばされないように、ピッケルなど四隅を固定します。
雪山登山では鋭利なものが多いので、テントの生地を傷付けないように注意しましょう。
仮固定の後は張り綱の固定に入っていきますが、雪山特有としての一工夫が必要となります。
調整リングが雪中に埋まると張り綱の機能を最大限活かす事ができなくなるので、雪中に埋めている竹ペグと調整リングとの間に1本のアクセサリーコードを噛ませることにしました。
完成!周りから見るとこんな感じです。
※クリックすると大きく表示されます。
雪山なので、靴はテントの中に入れますが、とりあえずの物を置いておけるというのは助かります。
まとめ
Q&A
- Q:設営しやすいですか?
A:ツェルトと同じでコツが必要ですが、慣れれば問題ありません。
設営スピードは一般的なシングルウォールテントの方が早いです。 - Q:結露は発生しますか?
A:結露の発生に関しては晴天時は通常のテントと同じ基準で考えて問題ないと思いますが、雨天時は弱い印象です。
前室があるので、湯沸かしや炊事をテント外で行えるので、賢く使えば通常のシングルウォールよりは結露は発生しにくいと思います。
但し、テントが狭く風が吹いた際にテント生地が靡きやすいので、少しでも結露が発生した際に、衣類に水分が付着する可能性は大きいと思います。 - Q:狭いですか?
A:ツェルトよりは圧倒的に快適です。
しかし、同じサイズ設定の一般的なテントと比べると小さめのサイズ設定となっているので、荷物の多い冬の時期や大柄な体形の方にとっては狭く感じると思います。
しかし、その若干の窮屈さを上回る軽量性があるので決してマイナス要素にはなりません。 - Q:軽さは実感出来ますか??
A:十分に体感出来ます。
同じタイプの同じサイズのテントに比べると約400g軽く、これだけでも十分に体感出来ますが、コンパクト性を活かしてザックの容量も落とせばキロ単位での軽量化へと繋げる事が出来ます。
これらのポイントをまとめると、、、
カミナモノポールは、こんな方におすすめ
- 軽量コンパクトなテントを探している人
- テントは重いけど、ツェルトやシェルターには不安が残る人
- シングルウォール愛好家だけど前室が欲しい人
逆に、初めてのテント泊の方にはオススメ出来ないかなぁ、と感じました。
一定以上のテント泊経験のある人で、幕営は手段であるというスタイルの山行に向いているテントだと思います。
テント泊で使用回数が増えれば、記事を随時アップデートしていきますので、また覗きに来て下さい。
紹介しているテントはこちら!