3月~5月は残雪期と呼ばれており、厳冬期の1~2月に比べると、天候も安定しやすく、日照時間も伸びるので、これからの時期にチャレンジしてみようと考えておられる人も多いのではないでしょうか。
しかし、そこは雪山。
厳冬期とは違った注意点がいくつかありますので、残雪期の登山で注意すべき点をご紹介していきます。
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【解説】残雪期の雪山登山で注意すべき5つのポイント
雪質の変化
残雪期は気温の変化が大きく、朝晩は-10度前後まで下がっていても、日中は5度くらいまで気温が上がることもあります。
この気温の変化により雪質も大きく変化します。
カチカチのアイスバーン
日中の気温の上昇により溶けた雪が、朝晩の気温の低下により、非常に固く凍り付く事があります。
アイゼンがしっかりと効く場合もありますが、爪が丸いと刺さらない場合もあるので、滑落には十分に警戒が必要です。
ザラメ雪
ザラザラのザラメ雪の場合、踏み固めることが難しく、トレースが無い場合はラッセルに苦しめられる事になります。
団子雪
水分を多く含んだ雪は団子状になりやすく、靴やアイゼン、ワカンなどにへばり付いて凄まじい大きさになります。
これが非常に重く、叩き落しても数歩歩けば、元通りになるので、本当にキリがありません。
非常に体力を消耗します。
雪質一つで、行動時間も大きくことなるので、余裕を持った計画を心掛けましょう。
雪崩への警戒
残雪期は気温の上昇に伴い、雪崩のリスクが高まる季節となります。
気温が上がる残雪期には、斜面の全ての雪が崩れる全層雪崩に警戒が必要となりますが、弱層の上に新雪が積もると表層雪崩が起こる可能性があることも忘れてはいけません。
雪崩が起こりやすい地形を理解すると共に、周囲をしっかりと観察し、雪崩の兆候がないかを確認するようにしましょう。
- 雪面にクラック(亀裂)やシワがある
- 雪面を雪の玉が転がり落ちていく
などなど、
このような場合は、非常に危険な状態となります。その場を迅速に離れなければいけません。
ポイント
当日の天気は快晴であっても、前日などに雨が降っている場合には、雪崩の危険性が高まっているので、山行の数日前から天気予報をチェックし、当日の雪の状態を予想するようにしましょう。
また、雪崩以外にも、落石にも警戒が必要です。
雪解け時は、岩の周辺の雪が溶ける事により、岩が不安定となり、ふとした事で落石が発生します。
雪面を転がり落ちる岩の怖い所は、無音であるということです。
雪は音を吸収する為、何の気配もなく、凄まじいスピードでこちらに向かってきます。
ゴルフボールサイズでも直撃すれば怪我をする恐れが十分にあります。
サイズによっては即死レベルのものもあるので、上部への警戒を怠る事は出来ません。
アバランチギアは必ず携帯しましょう
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渡渉の発生
冬の間は、大量の降雪により沢は全て雪の下となっていましたが、春の訪れと共に、気温が上昇し、沢が顔を見せ始めます。
スノーブリッジが残っている間は、その上を渡れば良いのですが、これもいつ崩壊するか分かりません。
必ず、雪の状態を確認してから乗るようにしましょう。
スノーブリッジが使用できない場合は、いよいよ渡渉が必要となります。
この時期の沢の水は雪解け水が流れているため、水温は非常に低いです。
誤って転倒すると非常に危険な状態となりますので、無理をせず安定して渡れる場所を探しましょう。
幕営場所と水の確保が困難に!?
積雪が豊富な時期は、極端な話、どこでもテントを設営する事ができますが、残雪期になり、雪が減ってくると、笹薮が出現し、尾根上などの森林限界以下での幕営が困難となってきます。
例えば
2022年の5月に北アルプス南部の南岳西尾根にトライした時の出来事ですが、
この日、本来であれば尾根状のどこかでテントを張る予定をしていましが、想像以上に雪がなくなっており、尾根状での幕営が到底不可能な状態となっていました。
「想定通りに行かなかった時にどうするか」ということも念頭に置いておき、複数パターンの行動計画を立てておかなければいけません。
変化が目まぐるしい
残雪期は1年の中で最も変化の大きな季節だと言われています。
気温の変化
1日の中でも寒暖差が大きく、日中は半袖で過ごせるくらい暑くても、夜になると厚手の防寒着が必要となります。
雪の量が大幅に変わる
この時期は気温の上昇により雨が降ることもあるので、1週間もあれば、雪の量が大幅に増減します。
ルンゼ帯を詰めるルートなどは、雪の量により通行が不能となる場合があります。
SNSなどで他の方の記録を元に計画を練られる人も多いと思いますが、上述の通り気温や雨などによっては前の週と大幅に異なることもあるという事を、念頭に置いておかなければいけません。
雨のち雪
雨が降ったかと思うと、その後気温が下がり、雪へと変わることもあります。
この場合、濡れたウェアが凍り付くだけではなく、低体温症の危険性があるので注意が必要です。
一瞬で真冬に逆戻り
残雪期は春のような陽気かと思えば、寒気が入れば厳冬期さながらの状況へとなります。
特にGW前後までは厳冬期と同等の装備が必要となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、残雪期の注意点についてご紹介させていただきました。
厳冬期とは違った注意点などもありますが、日照時間が伸びたり、好天の機会が増えたりと、少しずつ登りやすい季節へと変わっていきます。
万全の体制で、厳冬期には挑めなかった山域に挑戦してみましょう。
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