山のあれこれ 成長の仕方について

【解説】下界での登山の為のトレーニング方法

トレーニング

登山の体力はどうやって付けたらいいのか?皆が悩んでいる問題ではないでしょうか。

一般的に「登山の体力は、登山でしかつかない」と言われており、まさにその通りだとは思いますが、「毎週山に行く時間はない!」という方も多いと思います。

今回は私が実際に取り組んでいる内容をご紹介します。

【解説】下界での登山の為のトレーニング方法

トレーニングの重要性について

槍穂高完全縦走1日目(西穂~ジャンダルム~奥穂)、33

登りたい山、やりたい山行がある場合、それに相応しい身体でなければいけません。

トレーニングメニューのご紹介の前に、トレーニングの重要性についてお話ししたいと思います。

※話が長くなりますので、前置き抜きで「トレーニングメニューだけ知り!」という方はこちらからスキップして下さい。

 

夢の山に登る為に

かの有名な登山家スティーブ・ハウスもこう言っていました。

「登山家の偉業のうち1割が才能で、残りの9割は大変な努力によるものだ。山での成功の多くは、準備というきつい仕事をやったことから来る。」と。

登山家の言葉を引用すると、大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、私達のような一般登山者にとっても同じ事が言えます。

・憧れの縦走路
・憧れの冬季○○岳

登山者の経験や潜在的身体能力により、達成難易度は大きく異なります。技術は体力の上に成り立っているものなので、土台が出来ていない、毎週は山に行けないという場合には、下界でのトレーニングは必須と言えるでしょう。

安全に下山する為に

この記事では詳しい統計情報は割愛しますが、山岳遭難事故での年齢別の割合は以下の通りとなっています。

10代:5%
20代:7%
30代:8%
40代:14%
50代:19%
60代:22%

これは登山人口の年齢層自体が影響している為、50~60代の年齢層が多い事など分母の違いも考慮しなければいけませんが、40代以降を起点として50代60代と加齢と共に進む肉体の衰えが事故の要因の一つとは言われています。

尚、中高年のもう一つの特徴として、仕事や結婚子育て等に奮闘していた人が、時間やお金に余裕が生まれ、趣味に復帰するのもこの年代でもあります。しかし、上述の通り、身体能力の低下が起こっているという点は忘れてはいけません。

また、20代~30代の若年層においても、SNSの普及により技術体力共に不足している状態での安易な入山により、事故を起こしているという事例もある為、若さだけの過信は厳禁です。

話が長くなりましたが、登山において夢を叶える事が出来れば素晴らしい景色が広がっていますが、それは怪我無く無事に下りて来る事が大前提です。

 

この記事では主に下界でのトレーニングについてお話していますが、登山そのものがトレーニングになりうるので、毎週末目的意識を持って山に登っていれば、下界でのトレーニングは特に必要ないかもしれません。

しかし、年齢的、生活環境、自身の身体能力など様々な要因から、月に1~2回程度の登山頻度では能力の向上はおろか、現状維持すら難しくなってきます。

これらの事を考えると、下界における登山の為のトレーニングはやはり重要なのです。

 

私も以前は目標や夢ばかりが先走り、身体が釣り合っておらず、無事に登頂しても、下山はボロボロという時期がありました。
「このままではいつか事故を起こす。」と自覚したことから、トレーニングに励むようになりました。

 

トレーニング方法を紹介

山の中では延々と続く急登、繰り返されるアップダウン、テント泊装備を背負った状態での長時間の歩行など、正に体力勝負の世界であるのです。

私は日々、「筋力・体幹トレーニング」と「心肺機能の向上」をメインでトレーニングを行なっています。

 

ポイント

登山においては「歩き方」「呼吸法」「ザックの背負い方」などが非常に重要なポイントになるので、基本をおさえたうえでの追加のトレーニングとなります。

 

筋力&体幹トレーニング

トレーニングを始めて最初の1年はまずは自宅でのトレーニングから開始し、その後はジムでのトレーニングに変更しました。

 

 

▼自宅トレーニング

登山×筋トレ×ダイエット

種目

【開始~2ヶ月目】

  • 大胸筋(腕立て伏せ)
  • 背筋(スーパーマン)
  • 腹筋(クランチ)
  • 大腿四頭筋(スクワット)
  • 脹脛(カーフレイズ)

始めたばかりの頃は、上記の種目を10回3セットをやるだけで、筋肉プルプルで次の日はひぃーひぃー言っていました。

【2ヶ月目~】

人の身体はしっかりと順応するもので2ヶ月くらいから自重だけでは物足りなくなってきたので、ダンベルとベンチを購入して種目を追加・変更しました。

  • 大胸筋(ダンベルベンチプレス
  • 背筋(ワンハンドロウイング
  • 腹筋(クランチ)
  • 大腿四頭筋(ダンベル+ランジ
  • 脹脛(カーフレイズ)
  • 上腕二頭筋(ダウンベルアームカール

自宅でのトレーニングでは、ダンベルがあるとは言っても限界があるので、

  • 高重量:低回数
  • 低重量:高回数
  • サーキットトレーニング

など複数のパターンを取り入れてマンネリ化を防止していました。

 

 

▼ジムでのトレーニング

トレーニング ジム

自宅での筋トレ開始から1年が経過した頃、色々な理由からジムへの入会を決意しました。

ジムへの入会の理由...

  • 重量の更新が滞るようになった。
  • 関節を傷める事が多くなった
  • 使用できる重量に限界を感じた
  • 狭い賃貸の部屋で器具が広がっているのが嫌になった
  • 生活環境の変化でトレーニング時間を長く取れなくった

といった感じで、自宅トレーニングの限界にぶち当たった感じがありました。

 

種目

これは私の嫁が取り組んでいるメニューの一例です。

  • 足(大腿四頭筋):レッグプレス(140kg10回4セット)
  • 胸(大胸筋):ベンチプレス(25kg10回4セット)
  • 背中(広背筋):フロント・ラットプルダウン(30kg10回4セット)
  • 背中(広背筋):プーリーロウ(32kg10回4セット)
  • 背中(広背筋):チンアップ(1~2回3セット)
  • 腹筋:腹筋ローラー(膝コロ10回4セット)
  • 腕(上腕二頭筋):EZバー・アームカール(10kg8回4セット)
  • 腕(上腕三頭筋):ケーブル(12.5kg10回4セット)

 

ジムに入会してから実感したのは、

  • トレーニングの効率が良い
    →私自身、最初の1年はダンベルを購入して、そこそこ本格的な自宅トレーニングをやっていたつもりでしたが、やはりジムにある専門的な器具を使用したトレーニングには適いません。また器具を使用する事で怪我の防止にも繋がったので、結果的に扱える重量が上がり、筋力も増えてダイエットもスムーズに運ぶ事が出来ました。

  • トレーニングが楽しい
    →ダイエットの為の筋トレですが、その中にも中間目標として「チンアップ連続〇〇回」や「ベンチプレス〇〇kg」を掲げていました。ジムには色々なマシンがあるので、マンネリ化した時や伸び悩んでいる時に対処しやすいのでモチベーション維持も比較的簡単でした。

という点でした。

ジムに入会してから、体力の向上やダイエットは明らかに大きく前に進みました。

 

 

勿論、ジムへの入会は必ずしも絶対ではありません。しかし、トレーニング全般に共通して言える事は、

毎回全力を出すこと

身体は正直で、自分に甘い日が続くと、体の変化はありません。

怪我には気を付けつつ、「もう動けない!」ってなるくらいに追い込みましょう。「ふぅ、終わった」って鼻息くらいであれば全然足りません。

 

ポイント

因みに、女性の場合「筋トレをすると腕や足が太くなると嫌だから...」という人がいますが、一言言わせて下さい。

心配いりません。そんな簡単に筋肉はつきません。

もしも筋トレを始めて直ぐに腕が太くなったと感じたのならば、食事管理などが間違っていて脂肪が付いているからだと思います。

私の妻も51kgまで痩せた時点で、ベンチプレス32kgを10回4セットは余裕で上げており、何もしていない女性と比べると筋肉質だとは思いますが、ムキムキとは程遠い体型ですので、全く心配いりません。

 

心肺機能を鍛える

トレーニング

急登を登ったり、アップダウンが続くとどうしても心拍が上がり、息切れを起こしてしまいます。
心肺機能を鍛える為に、平均週2~3回は有酸素トレーニングを行っています。

有酸素運動に関しても、ジムへの入会前と後で取り組んでいた内容が違います。

 

自宅や公園

トレーニング

【頻度】週1~2回

【内容】

  • 大階段トレーニング
    空身の走り込み
    重り(10~15kg)を入れたザックを背負って登る
    早歩き一段飛ばし+踊り場スクワット
  • 腕立てバーピージャンプ(HIIT式)
  • ラントレ(HIIT式

ジムトレ

トレーニング

【頻度】週3

【内容】

  • トレッドミル/ランニング「30分の日」
    00分~05分:傾斜02、速度4で歩いてアップ
    05分~10分:傾斜05、速度8で慣らしで走る
    10分~30分:傾斜08、速度9で走る
  • トレッドミル/ランニング「20分の日」
    00分~05分:傾斜02、速度4で歩いてアップ
    05分~10分:傾斜05、速度8で慣らしで走る
    10分~20分:傾斜15、速度10で1分走る→速度6で速歩き→速度10で1分走る(繰り返し)

主に上記のメニューをしていましたが、その日の気分や体調、マシンの空き状況などによっては、エアロバイク、クロストレーナー等も活用していました、

毎週毎週山に行くことが難しい場合、1回20分~30分の比較的強度が高い有酸素運動を週2~3回のペース続けるだけでも、体力の低下を防ぐ事が出来ます。

勿論、定期的な登山と併用して行った場合、体力アップは十分に見込めます。

 

 

個人的に感じたこと

ながら有酸素はダメ:スマホいじりながらエアロバイク漕ぐ等、なんとなく~漕いでいる場合、

有酸素で痩せるには20分以上?:「有酸素運動を開始して20分以上から脂肪がエネルギーとして使われる...」と言われていますが、どうなんでしょうか。
何事も「継続は力なり」ですので、続けていれば、必ず効果はありますが。

 

 

トレーニングの頻度

登山×筋トレ×ダイエット

どのくらいの頻度で行なっているかというと、

  • 筋トレは週3回ほど
  • 有酸素は週2〜3回

というくらいです。働きながら怪我なく続けられるのは、これくらいが限界かなと思っています。

 

結果が出る間に掛かった期間

私は登山を始める前は、超運動音痴基礎体力は無いに等しい状態でした。

登山開始から半年後にトレーニングを開始し、更に半年で少しずつ効果が見え始めました。

トレーニング開始から2年で、登山者としての一人前の身体が出来上がり、ようやくスタートラインに立つことが出来ました。

始めはなかなか目を見張る様な結果が出ず、トレーニングが楽しみであると同時に「いつになれば効果が現れるのだろう...。」と悩みもしました

しかし一度「体力がついた」「コースタイムで歩けるようになった」などの効果を実感すると、自然と次の目標ができて、それに向けて更にトレーニングに励むことが可能になりました。

もちろん登山に終わりはないので、根気よく続けています。

 

 

その他、大切なこと

関節を大切にする

バスタブ

トレーニングと同じくらい大切にしないといけないのが体のケアです。

山やトレーニングで関節を痛めない為に、日頃から体のケアに気を配らなければいけません。

 

ココがポイント

  • ストレッチが大事
    これはトレーニングに限った話ではありませんが、山行やトレーニング前は必ずストレッチ入念に行いましょう。
  • 姿勢を正す。足は組まない。
    登山やトレーニングも大事ですが、それ以外の時間の方が圧倒的に長いので、日々の日常の過ごし方が重要です。
    歩き時、食べる時、寝る時、座っている時、本当に塵も積もればですので、気をつけるようにしています。
  • サポートタイツやリストバンド等は積極的に活用
    関節を傷めている時などは、普段のトレーニングでもサポートタイツを着用する事がありますし、ウエイトトレーニングの際はそこまで重量が重くなくても、リストバンドを着用するようにしています。
  • 痛めたら直ぐにアイシング
    これ大事ですね。トレーニングや山からの下山後に関節に違和感を感じたら、早期のアイシングが重要。トレーニング後であれば帰宅後直ぐに、登山であれば帰路のコンビニで氷を買って直ぐに冷やします。
  • 入浴で身体を温める
    これが一番大切だと思います。毎日の入浴は面倒ですし、昨今の光熱費の値上がり家計的にも厳しいですが、入浴の効果は色々な側面で身体に良いことばかりですので、出来る限り入浴するようにしています。

 

関節を痛めていない人でも、将来的なことを見越して、関節は大切にしていく方がいいと思います。

 

 

やっぱり登山が一番大事

下界でのトレーニングが大切ですし、それが次の登山へと繋がっているのは事実ですが、やっぱり実際の登山が一番大事です。

 

登山は「低負荷・長時間の運動」ですが、これと同じことを日常のトレーニングで行うことは不可能です。

登山でしか得られない身体への不可も非常に多く、1回の登山での成長幅は下界でのトレーニングの10数倍の効果があるのではないかと感じる程です。

 

登山と登山の間を繋ぐのが下界でのトレーニングです。

 

 

まとめ

今回ご紹介した私が実施しているトレーニングメニューは、”自己流”です。

プロのトレーナーや、その道のプロからすると、「間違っている」と指摘が入るところもあるかもしれません。
しかし、その人々によって生活環境は違いますし、登山にとってベストなトレーニングメニューを全員がこなせるわけではないと思います。

「何もやらないよりは、何かしよう。何か始めよう。」

自分なりにトレーニングをして山に挑み、反省点が見つかれば改善していく。そして継続する努力を忘れない。

私はそれでいいと思っています。

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