
早速ですが、自分の登山者としてのレベルを≪初級・中級・上級≫で分けるとすると、どれになると思いますか?
今回は、私が個人的に思う、登山者の「初級・中級・上級」のレベル分けの定義や基準などについてお話したいと思います。
※この記事で紹介している内容は、登山者のレベルを3段階に分ける為の判断基準の一部分であり、全てではありません。また、あくまで個人の考えである点をご理解下さい。
目次
【解説】登山者レベルの診断基準について「初級・中級・上級」
一般的な「登山者のレベル分け方≪初級・中級・上級≫」

まずは、一般的に使われている登山者のレベル分け方法について触れたいと思います。
色々な判断基準があり、「コレ」という決まった物はありません。
- 累計登山日数からの判定
これは、一番当てになりません。ハイキングレベルを1000日続けてもレベルは上がりませんし、ブランクがあれば当然体力も技術も低下します。
- 荷物重量と歩行スピードからの判定
単なる体力レベルのみを計るもので技術指数は計れません。
- 信州 山のグレーディング
対象の山域に登る際の確認事項であり、登山者のレベル分けには不向きとなります。
一般的に、高難易度とされる「西穂高岳~奥穂高岳の縦走」「大キレット」「剱岳」には多くの登山者が足を運んでいます。では彼等全員が上級者かというと、そうでもないでしょう。
一つ一つの判定基準は理にかなっている部分があるのと同時に、どれか一つだけを取って自分のレベルは○○だと認識するのには、少し誤りがあるように思います。
私が思う「登山者のレベル分け方≪初級・中級・上級≫」

次は私が個人的に思う、登山者の「初心者・初級・中級・上級」の区別についてお話したいと思います。
ここでのレベルの分けは「アマチュア登山者」を対象としています。登山の専門家はレベル分けの区分には考慮しないものとし、あくまで一般登山者の枠内でのお話となります。
【比較対象外】
・プロ登山家
・登山アスリート
・山岳ガイド
・登山インストラクター
など
初心者

≪活動域と登山活動≫
山登りを始めたばかり。
登山の頻度も数ヶ月に1回程度で、1回の山行も数時間で完結するものが多い。
観光やハイキングの延長でも登れる程度の山登り。
≪体力&技術≫
登山に関する知識も経験も殆どない。
自身の体力レベルを把握していない。
初級者

≪活動域と登山活動≫
活動山域は1,000m級の低山~3,000級の高山まで幅広く、山行内容も、縦走登山・岩稜登山・雪山登山と多岐に渡るが、
経験者やプロガイドに追従する形で登山を行っており、計画の立案や実行、ルートの選定、天候判断などは基本的にリーダーが行う。
≪体力&技術≫
【体力】
自身の装備を持って、概ねコースタイムで歩く事が出来る。
【技術】
そのルートを歩く上で必要な技術を有しており、緊急時にはリーダーや同行者の助けを借りて身の安全を確保する。
【雪山/バリエーションルート】
雪山登山では、基礎的なアイゼン・ピッケルワークを有しており、パーティーメンバーが作成(または既存)したトレースを活用して、安全に通行する事が出来る。
ルートファインディングも、リーダーや同行者に確認しながらであれば行うこともできる。
中級者

≪活動域と登山活動≫
活動山域は1,000m級の低山~3,000級の高山まで幅広く、山行内容も、縦走登山・岩稜登山・雪山登山と多岐に渡り、
計画の立案から山行当日の行動選択を自身で行い、他者の助けを借りずに、自立した登山を行うことが出来る。
≪体力&技術≫
【体力】
自身の装備+共同装備を持って、概ねコースタイムで歩く事が出来る。
【技術】
そのルートを歩く上で必要な技術及びセルフレスキュー技術を有しており、緊急時には自身の判断で身の安全を確保する事が出来る。
【雪山/バリエーションルート】
雪山登山では、経験豊富なアイゼン・ピッケルワークを有しており、自身でラッセル・ルートファインディングを行い、危険箇所を安全に通行する事が出来る。
上級者

≪活動域と登山活動≫
活動山域は1,000m級の低山~3,000級の高山まで幅広く、山行内容も、縦走登山・岩稜登山・雪山登山と多岐に渡り、
計画の立案から山行当日の行動選択を自身で行う事は勿論、パーティー登山では参加者の力量を正しく把握し、包括的な登山計画の立案・実行することが出来る。
≪体力&技術≫
【体力】
自身の装備+共同装備+緊急用品を持って、概ねコースタイム以下で歩く事が出来る。
【技術】
そのルートを歩く上で必要な技術を有すると共に、レスキュー知識や、十分なリーダー経験があり、緊急時にはパーティー全体の安全を確保する事が出来る。
【雪山/バリエーションルート】
雪山登山では、経験豊富なアイゼン・ピッケルワークを有しており、自身でラッセル・ルートファインディングを行い、危険箇所を安全に通行する事が出来る。
【育成】
また、登山技術を他者に的確に伝え、指導・育成する事が出来る。
初級と中級の違いをおさらい

登山者の「初級・中級・上級」の個人的な見解については、お話させて頂きましたが、ここからは、「初級と中級の違い」について、もう少し補足させて頂きたいと思います。
上述の通り、初級と中級での活動領域は然程大きくは変わらないように記載しましたが、その実施形態に大きな違いがあります。
ここで改めて、初級と中級の違いを簡潔に述べるとすると、
「自身の行いたい登山を他人に頼ることなく遂行し、安全に完結する事が出来る」か否かという点にあると思います。
短く要約すると
・他人の力を借りているのか
・自分の力だけで行えているのか
という違いあると思います。
例え、ソロ登山であっても力量を超えた無謀な登山をしていたり、天候判断・ルートファインディング・ラッセル等が自身で出来ないようであれば、それはまだまだ「安全登山」とは言えないでしょう。
国内一般登山道の最難関の西穂高岳~奥穂高岳への縦走路も、シーズン中は多くの登山者が通行していますが、
- ガイド同伴の小屋泊登山で、計画や天候判断、ルートの選定等、全て信頼のおけるリーダーが行う
- 個人のテント泊登山で、計画から当日のルートファインディングまで全て自身で行う
上記2つ状況では、難易度が大きく異なる事は明白でしょう。
このように、登った山の名前だけで、登山者のレベルを把握する事は出来ません。
登山 中級者になる壁の厚さ

中級者の指針の一つである「自立した登山者であること」は、結構難しいです。
上述の西奥縦走でも触れましたが、高難易度な登山では「ルート選定・天候判断・撤退判断」など全てが成功可否や安全に直結しますが、
それらを全て自分の判断で行うとなると、
「本当にこれでいいのか....?」と
心に重く圧し掛かるプレッシャーは物凄いものになります。だからこそ、自身でやりきった時の達成感は素晴らしいものになります。
この初級から中級へのレベルアップ難易度が結構高く、
日々の登山LIFEにおいて、体力向上、技術習得など、主体性を持って能動的に活動していく中で、多くの経験を積み中級域へ到達できると思います。
中級層の広さ

そしてもう一つが、中級レベルの範囲がとても広いという事です。
全レベルを100で表すなら、
・初心者:~5
・初級者:6~20
・中級者:21~70
・上級者:71~100
くらいの広さがあると思います。
※数値はイメージです。
中級レベルが求められる山行は非常に多岐に渡ります。
先述の通り、登った山のレベルではなく、自立した登山者であるかどうかが診断基準だとは言いましたが、中級レベルであることが大前提となる山行は多数存在します。
夏の一般縦走から、冬季の3,000m級のバリエーションルートまで、中級登山者の活動領域は数多く存在します。
登山を始めた頃の自分は、「冬季バリエーションルート」を歩いた人の記録を拝見しながら、
「すげぇ!エキスパートじゃん!」って思っていました。
※実際にエキスパートな人達も沢山います。
今私達も、厳冬期の北アルプスの冬季バリエーションルートに登っており、2024年の2月には厳冬期の奥穂高岳に登りました。
では、自分達はエキスパートなのか?と聞かれると、
「いえいえ、全然エキスパートではないですし、「中級レベル」だと思っています。」
ここまで来るのに多くの山に登り沢山の経験を積んで、登山者として成長してきた自負はありますが、それと同時に自分の現在の力量を痛感しています。「中の中」に居れたらいいなと思いますが、どうなんでしょうか....
これは謙遜ではなく、やればやるほど山の奥深さを思い知らされるという事です。
まとめ

冒頭でも述べた通りに、登山者のレベル分けには明確な診断基準はありません。
今回ご紹介したポイントである「自立した登山者」というのも、登山者の力量の指針の一つに過ぎません。
実際には、山の中で求められる体力や技術は非常に奥深いものです。
そもそも登山という大自然の中で活動するアクティビティにおいて、
大自然の中での人間なんて本当にちっぽけな物で、それは、大地の大きな吐息ひとつで吹き飛ばされてしまう程...
そんな環境下で「初級・中級・上級」と人間の物差しで測るというのも少し可笑しな話かもしれません。
自身のレベルを把握する事は大切な事ですが、決して慢心することなく、安全第一で登山を続けていきたいものです。
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