北アルプス 山行記録

厳冬期 奥穂高岳への挑戦(涸沢岳西尾根)/ 2022年1月7日〜9日【2~3日目】

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

「厳冬期 奥穂高岳」

厳冬期の奥穂を目指すのはこれで3シーズン目となる。「3度目の正直となるのか?」
2022年1月、2泊3日で涸沢岳西尾根に挑戦してきた。

この記事では2日目と3日目の記録を紹介します。

厳冬期 奥穂高岳への挑戦(涸沢岳西尾根)/ 2022年1月7日〜9日【2~3日目】

ルート

2022年01月7日(金)〜01月9日(日)

1日目:新穂高〜右俣林道〜涸沢岳西尾根〜2360m地点テント適地

2日目:2360m地点テント適地〜蒲田富士〜涸沢岳〜蒲田富士〜2360m地点テント適地

3日目:2360m地点テント適地〜右俣林道〜新穂高

 

アクセス

新穂高「登山センター」前、県営駐車場

※冬季は岐阜市内より新穂高へと至る道は、積雪・凍結があり、ノーマルタイヤでの通行は不可能となります。尚、夜間においては除雪がされていない場合もありますので、走行に際しては注意が必要です。

 

天気

1日目:ガスのち晴れ

2日目:快晴!

3日目:雪のち、下山後は晴れ

 

登山道の積雪状況・危険個所

■2360m地点テント適地〜蒲田富士〜涸沢岳

  • 「2360m地点テント適地〜蒲田富士」:テント場を出ると程なくして、森林限界を超える事になるので防寒対策の切り替えのタイミングが大事。蒲田富士へと上がるFIXロープ箇所の雪壁を登る場合は雪質に要注意。雪質に不安がある場合は左の岩稜帯へと切り替えも必要となる。
  • 「蒲田富士〜F沢のコル」:蒲田富士の雪庇帯はこのルート上で最も気を付けなければならない箇所の一つ。先行者のトレースが付いている場合も多いが、必ずしも正しいルート取りとは限らないので、通行の際は自身で"雪庇の上ではないか"、"雪崩の危険はないか"などに注意しなければならない。尚、蒲田富士の最後(F沢のコルより)の部分は細いリッジとなっているので、転倒には十分に注意したい。
  • 「F沢のコル~涸沢岳」:F沢のコルにはクレバスが空いている事があるので、注意しなければならない。その後は、"ルンゼを詰める"か"左の岩稜帯を登る"かのどちらかとなるが、ルンゼを選ぶ場合は雪崩に警戒したい。主稜線に上がると突如風が強まるので、強風による転倒や低体温賞にも警戒したい。また、風により雪面は固くクラストしているので、スリップには十分に注意したい。
  • 「その他」:悪天候時の道迷い個所として次の箇所に気を付けたい。「テント場から稜線に上がる所」「蒲田富士の雪庇帯&中間ポイント」「F沢のコルへの下降点(帰路時)」「ルンゼ下降からF沢のコルへの移動ポイント」

※剱岳の積雪状況が刻一刻と変化するので、最新の気象情報に注意して下さい。

 

山行記録

2日目:2360m地点テント適地〜蒲田富士〜涸沢岳(往復)

4時40分にテントを出発し、50分程で森林限界を超える。

先には先行者の明りが見えていたが、FIXロープ箇所で戻って来られる。

FIXロープは出ており、雪質も安定しており問題なく登る事が出来た。

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

蒲田富士の雪庇帯へと突入するタイミングで日が昇り、背後には最高の朝焼けが広がってくる。

 

 

途中までは先行者のトレースが付いており辿らせて貰うが、気が付くと雪庇の下側を歩いていた。

「これは危険」と直ぐに引き返す。

恐らく先行者の方は暗い中ルートをロストして引き返して来られたのであろう。

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

正しいルートへと戻るとそこからはトレースはなく、ラッセルとなるが開始早々に腰まで埋まり、雪庇に気をつけながら両雪庇帯とナイフリッジを通過し、なんとか蒲田富士を突破した。

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

自分達で引いたラインを振り返る

 

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

"F沢のコル"への下りとその先の"ルンゼ"も所により腰まで埋もれる雪の量で、スピードダウンは避けられない。

F沢のコルにはクレバスが空いている事があるので、注意しなければならない。

 

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

最初はルンゼを詰めて行くが雪質がどうも怪しく、雪崩への警戒も兼ねて途中から左の岩稜帯へと切り替えた。

 

 

息も絶え絶えに主稜線に上がると、気温はマイナス20度&風速15mで流石に指が冷たかった。

 

 

主稜線に上がると雪質は一点して硬くクラストしており、一歩一歩気を付けながら、偽ピークを3個ほど超えて涸沢岳の山頂についた。

途中、滝谷の雄姿と絶対的な圧迫感に魅入られた。

奥穂は目の前だ。
行きたいが、今日はここまでだろう。
慎重に来た道を下っていった。

結局、僕達以外は誰も来なかった。

 

 

足への疲労も大きいので、危険個所は迷わずロープを出した。

 

 

安全地帯までは距離がある。

一歩一歩確実にあるいて行くが、足に疲労が出始める。

やはり、涸沢岳で引き返した判断は正しかっただろう。

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

この日僕たちが付けたトレースも夜の間の降雪により、全て消えてしまったという。

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

テントへの帰還後は、赤く燃える美しい夕日と、綺麗な星空が出ていたが、夜遅くに天気は一転して雪が降り始め、テント場でも15㎝以上の積雪となった。

 

 

3日目:2360m地点テント適地〜蒲田富士〜涸沢岳(往復)

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

日付が変わる頃から雪が降り始め、翌朝にはテント場でも15㎝以上の積雪となっていた。

テントを撤収し、下山開始。

いつもの通り、登りにあれだけ苦労した西尾根も下りは早い。

 

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

途中休憩を1回挟み、倒木を超えて傾斜が緩くなった頃、トウヒは突然現れる。

無事に帰ったきた。

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

白出沢から眺めるジャンダルムはいつもかっこいい。
反省会をしながら、1時間半の林道を消化。

 

 

 

厳冬期 奥穂高岳(涸沢岳西尾根)2022年1月

新穂高で新鮮な飲料にて祝杯を挙げ、今回の山行は終了となりました。

 

まとめ&感想

▼1日目

入山日の1月7日は平日という事もあり、入山者はいないだろうと思っていたが、新穂高に到着する駐車場には既に数台の車が止まっており、右俣林道にもトレースが付いていた。

 

駐車場で2時間程仮眠して、出発する。

右俣林道は単調でそれでいて長く、いつ来ても辛い。

途中「穂高平小屋」からは、これから登る涸沢岳西尾根、そして明日目指す蒲田富士や涸沢岳が見えて、登らなければならない標高差を叩きつけられる。

ひたすら無心で歩き続け2時間強で白出沢出合いに到着し、休憩と併せてビーコンの電源を入れる。

 

西尾根に取り付くが先行者のトレースもあり、比較的快調に登る事が出来た。

適度に休憩を挟みながら、嫌気が差し始めた頃、無事に2360m地点テント適地に到着する。

誰も居らず貸し切りだった。

 

「整地、テント設営、水造り、夕食」と雪山の幕営生活の一連の流れをこなしていく。

今回は軽量性を最優先として、「フリーズドライ+インスタントラーメン」で、食べ終わったフリーズドライのパックにラーメンを入れてお湯を注ぐ。鍋を汚さず時間の節約にもなるので、今回はこのスタイルを試してみた。

整地が不十分だった為に、寝心地は最悪だったが疲れも後押ししてか、シュラフに入ると1分程で眠りに落ちていった。

 

▼2日目

2時40分起床、4時40分出発

起床後は昨夜温めておいたサーモスのお湯をフリーズドライに注ぎ、15分待っている間にラーメンを食べたり、ココアを飲んだり、水筒のお湯を足したりして過ごす。

身支度を整え、4時40分テントを出発。

 

1時間弱で森林限界を超え、FIXロープの箇所で先行の登山者が引き返して来られ、蒲田富士の途中から僕たちだけとなった。

 

"蒲田富士"と"ルンゼ"のラッセルを超えると涸沢岳へと続く主稜線に上がるが、途端に風は強くなり体感温度はマイナス30度程だっただろう。
後ろを振り帰っても他の登山者の姿は無く、稜線にいるのは自分達だけ。
山に「自分達だけでどこまで出来る?」と問われている様だった。

涸沢岳の山頂に立った時、そこから1時間程の距離にある奥穂の頂が、僕にはとても遠くに感じた。

頑張れば届くだろうが、恐らく余力は無くなる。
「登山は山頂でやっと折り返し。帰りも同じだけ危険地帯を超えなければならない、ここが引き際だろう。」
冷静な思考の裏には、既に気後れしている自分がいたのが、正直なところ。

この1年、「厳冬期の奥穂」の為に過ごして来たが、またしても届かなかった。それでも確かな手応えはあったし、去年よりは近づけた。

来年はもっと近くで奥穂を見たい。

 

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