登山者憧れのルートであり、国内最難関ルートの一つ「槍ヶ岳 北鎌尾根」
私も昨年の2022年の9月に挑戦してきましたが、トラブル発生により敗退となりました。
今回は、「北鎌尾根」に挑戦する上で必要だと思うことを、自身の敗退を元に考察して行きたいと思います。
【解説】北鎌尾根を敗退した経験から対策を考える
体力
やっぱり体力。
いつもいつも偉そうに言っておきながら、やっぱり体力が必要だと思います。
▼標高差がエグい
メジャールートである上高地からのアプローチでも、
- 上高地バスターミナルから水俣乗越まで標高差954m登り、
- そこから北鎌沢出合まで標高差640m降り、
- 北鎌沢出合から北鎌のコルまで標高差630m登り、
- そこから更に険しい岩峰地帯を標高差709m降って槍の山頂へと至る。
累計標高差は、登り2293m、降り2300mとなります。
▼装備が重い
【幕営装備】北鎌沢出合や北鎌のコルなどの稜線上での幕営が必須(※中房温泉側からの貧乏沢経由を除き、)
【水】尾根上に水源はありません。最後の水源である北鎌右俣で余分目に汲まなければいけません。
【ロープ】メンバーの力量などによっては必要となるでしょう。
装備は軽量化に努めても10kgにはなるでしょう。
▼コースタイムが長い
1日あたりの行動時間が10時間を越えます。
演習的な山行で、自身の体力レベルを確認することが重要で、
これまでの経歴だけではなく、今現在の体力レベルを客観的に知る事が大切だと思いました。
軽量化
装備の軽量化が避けられないと痛感しました。
ザックが重いと体力を削られるだけではなく、体が振られて危険性が高まるので、ザックを軽量コンパクトに抑える事が非常に重要だと感じました。
お金が許すなら、買い替えも検討した方が良いと思います。
私も2~3キロ程の軽量化に向けて、装備を一部買替中です。
但し、それと同じくらい大切なのが体力の向上。
装備の買い替えは物理的な効果もありますが、自身の意識を高める意味が大きいと思います。
計画性
「体調管理」「装備の選定」「天候判断」「ルート(地形)の把握」、その他諸々が完璧でないといけないと実感しました。
例:テントかツェルトか
テントは安心&快適ですが重く体力を削られます。
ツェルトは軽いという圧倒的なメリットがありますが、快適性はテントに比べて劣るというデメリットがあり、経験が浅いとメリットをデメリットが大きく上回ってしまいます。
例:行動食
行動食は何をどれだけの量を持って行くのか。
栄養価や吸収力の違い、自分の身体への相性など、考えることは沢山あります。
水も同じで、何リットル必要なのか。水が無ければ命に関わる事にもなりかねませんが、持てば持つほど重たくなり、結果的に体内の水分を多く消費してしまう原因にもなります。
通常の縦走登山では気にならない程度の「些細な違い」が、北鎌尾根では顕著になって現れるので、
自身の経験から最善の選択が求められます。
ガイドブックやインターネットの山行記録などを情報源にしつつも、自分自身のこれまでの経験と実力を元に、「自分達で達成できるのか」ということを冷静に見極めなければいけないでしょう。
精神力
独標の手前までしか行っていませんが、北鎌尾根には凄まじい圧迫感があります。
水俣乗越を下れば、即圏外になりますし、四方を山に囲まれて、山の中にどっぷりと浸かっている感覚になります。
「無事に生きて帰れるのか」
そんな不安が押し寄せる中、「逃げ出したい」という弱い気持ちに打ち勝って「目の前にあるチャンスを掴む」強い精神力が必要だと思いました。
ルートファインディング力
独標の手前までしか行けていないので、偉そうなことは何も言えませんが、やはり「ルートファインディング力」が重要となります。
というか、言うまでもなく必須ですよね。
撤退する勇気と技術
登っても降りられなければ、生きて帰れません。
前回私達も、独標を視界に捉えた所で、トラブル発生により、下山してきましたが、あれ以上進んでいれば戻るのも厳しいものとなっていたことでしょう。
「進むのか、戻るのか」判断を迫られた時に、状況に合わせて適切な判断ができなければいけません。
北鎌尾根のほとんどが一方通行ですが、
「万が一の際に、自分達はどうするのか」
出発前は勿論、行動中も、総合的に考えながら進むことが必要だと思いました。
まとめ
自分自身の経験から思ったのが、
北鎌尾根を達成する為に重要なのが、
自身の経歴だけではなく、「北鎌の為にどれだけの準備をして、どれだけ身体を作り上げてきたか」
そして「どれだけの情熱を持って挑めているか」。
そんな数値では測れない部分も重要になってくるではないかと思っています。
夏山開幕まで残り3ヶ月とちょっと。
頑張っていきましょう!