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【レビュー】雪山登山のベースレイヤー「モンベル:ジオライン EXP. ラウンドネックシャツ」

モンベル:ジオライン EXP. ラウンドネックシャツ

低温下で活動する雪山登山において、最も重要となるのが「レイヤリング」です。

そして、その起点となるがベースレイヤーであり、快適性・安全性にも大きく影響してくるウェアの一つです。

今回はモンベルの「ジオライン EXP. ラウンドネックシャツ」を8年間使用している経験から、使用感、耐久性など詳しくレビューしていきたいと思います。

【レビュー】雪山登山のベースレイヤー「モンベル:ジオライン EXP. ラウンドネックシャツ」

ベースレイヤーとは

MILLET WHOLE GMT WAFFLE WOOL

まず初めにベースレイヤーの重要性と選び方について少し触れたいと思います。

 

まず初めにベースレイヤーの重要性と選び方について少し触れたいと思います。

そんなの知ってるから「ジオラインのレビューだけ知りたい」という方は、こちらから本題へどうぞ

 

ベースレイヤーの重要性「汗冷えは大敵」

厳冬期 奥穂高岳

ベースレイヤーが「何か」という事は既にご存知だと思います。では、どれだけ重要な役割を果たすかという事はご存知でしょうか?

 

雪山登山は1,000m級の低山であっても常に氷点下の世界であり、3,000m級の高山ともなれば-15度から-20度を下回る事もあります。

そのような低温下においても、雪山登山は実は非常に多くの汗をかいてしまします。

その主な理由としては、

  • 荷物の重さ
    ピッケル、アイゼンなどの冬山特有の装備が増える為、必然的に夏山よりも装備は増えます。
  • 急登
    積雪により夏道が使えず斜面を直登する事も多々あります。
  • ハードシェルの着用
    雪が降っている場合、ウェアを濡らさない為に、例え風が無くてもアウターを羽織ります。
  • ラッセル
    ラッセルは想像以上に体力を消耗し、それと同時に大量の汗をかきます。

等があります。

 

 

厳冬期 奥穂高岳

汗に含まれる水分は、空気に比べて25倍の熱伝導率があります。

樹林帯の登りで汗をかき、森林限界を超えて気温が大幅に低下する中、強い風に晒されればあっという間に体力は奪われ、低体温症にもなりかねません。

 

「汗冷え」がどれだけ危険なことかお分かり頂けると思います。

 

 

ベースレイヤーの選び方

MILLET WHOLE GMT WAFFLE WOOL

次にベースレイヤーを選ぶ際のポイントを、いくつか簡単に説明します。

 

▼メーカー/ブランド

MAMMUT、MILLET、montt-bell、Fine track、THE NORTH FACEなど、登山用品を出しているブランドの商品を選ぶと良いでしょう。

メーカーごとに強みや特徴は異なり、使い勝手などには差があるかもしれませんが、ブランド毎に物凄く大きな性能差があるかと言われるとどうでしょうか...。有名なブランド品を選んでおけば、雪山登山に求められるスペックはどれも満たしていると思います。

一番の違いは価格帯にあると思います。海外ブランドほど高価にある傾向にあるので、予算と照らし合わせながら選びましょう。

 

▼素材

多くのベースレイヤーで使用されているのは、「ウール」や「ポリエステル」などの化学繊維が主流ですが、最近ではウールと化学繊維の融合型やメーカー独自の素材を駆使したモデルも多くあります。

とにかく「吸汗速乾」である事が大前提です。

【当然ですが...】
先述の通り、雪山登山において汗冷えは大敵ですので、綿を含む素材はNGです。登山ブランドから出ているベースレイヤーで綿を含むものは無いと思うので、その辺りは安心してよいでしょう。

 

 

▼サイズ

サイズ選びは非常に重要です。

ベースレイヤーの機能の一つである「吸汗速乾」を最大限に活かす為には、サイズはピッタリである必要があります。

身体とウェアの間に隙間があると、身体からでた汗を生地が上手く吸い取る事が出来ません。

極端に小さなものは良くありませんが、身体のシルエットが見えるくらいには、ピッタリの物を選ぶようにしましょう。

 

▼形状

ベースレイヤーの形状は主に次の三種類があります。

  • ラウンドネック
    最もオーソドックスなタイプ。一般的な丸首なので、登山だけではなく普段使用も可能。
  • ジップネック
    首元がチャック付きタイプ。チャックの開閉で温度調節が出来る。
  • フーディ
    フード付きタイプで、バラクラバの役割も果たす。但し、ミドルレイヤーやヘルメットなどの組み合わせには注意が必要。また首回りが詰まっている為、温度調節も難しい。

 

ポイント

ベースレイヤーを選ぶ際の、個人的なポイントをご紹介します。

▼個人的には、ジップネックタイプがお勧め!

温度調節がし易い点や、ビーコンを装着した際に首に擦れるストレスを軽減しくれる点にあります。

▼保温性能よりも速乾性能を重視

寒がりの人ほど厚着の傾向にありますが、実際は汗冷えによる所が大きいです
速乾性を重視して商品を選び、寒さが気になる場合は、ドライレイヤーの着用で保温力を上げるという方法がお勧めです。ドライレイヤーは汗冷え予防だけではなく、空気の層を沢山持つことが出来る為、保温効果の向上に効果があります。
尚、ミレーのドライナミックメッシュであれば、ノースリーブ・半袖・長袖と数種類あるのでお勧めです。

 

 

商品概要「モンベル:ジオライン EXP. ラウンドネックシャツ」

ジオライン EXP.ラウンドネックシャツ Men's

画像引用元:モンベル公式サイトhttps://webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=1107712

話が長くなりましたが、ここからは「モンベルのジオラインEXPの使用レビューになります。

まずは商品を概要を見ていきましょう。

商品情報】

厳寒地での着用を前提に保温性を重視。放射熱で身体を芯から暖めるとともに、三層構造のふっくらとした空気層が暖かさを逃がしません。厚手ながら、軽量でストレッチ性に優れるため、重ね着しても軽快です。

【最適な用途】

冬季登山/スノースポーツ/極地遠征

【素材】

【素材】ジオライン[ポリエステル100%]
【平均重量】224g
【カラー】ブラック(BK)、ネイビー(IND)
【サイズ】S、M、L、XL

※モンベル公式サイトより引用

ざっくりと言うと、雪山登山に最適ということです。

 

で、ジオラインって何?という事ですが、

メーカーの説明分を非常にざっくりと要約すると、以下の通りです。

  • モンベル独自開発の極細高性能素材
  • 特殊加工を施した、速乾性を可能にする繊維
  • 極細繊維と独自の構造により、生地に多くの空気を保持し保温性の実現

 

そして価格も6,000円台(メンズ)と、ベースレイヤーとしては非常に安い部類に入ると言えます。

 

 

紹介しているウェアはこちら!

 

Q&A

同じモンベルの冬季用のベースレイヤーとして「スーパーメリノウール」がありますが、その違いについて軽くご説明します。

▼スーパーメリノウール
価格:10,000円台
素材:ウール79%+ポリエステル18%+ナイロン2%+ポリウレタン1%
特徴:高い発熱量+速乾性

▼ジオライン
価格:6,000円台
素材:ジオライン(ポリエステル100%)
特徴:高い速乾性+保温力

どちらも冬季登山に求められる「保温力」や「速乾性」は備えていますが、ジオラインとの違いを簡単に違いをまとめると以下の通りです。

  • スーパーメリノウールは、汗を発熱に変えて暖かさを実現
  • ジオラインは、汗を素早く排出することに快適性を実現

非常に多くの汗をかく雪山登山では、発熱性能よりも速乾に重きを置いている「ジオライン」がお勧めです。実際にモンベルの店員からも同じように推奨されました。

※説明用にポイントを要約しています。

 

 

使用レビュー

厳冬期 西穂高岳西尾根

それでは次は、実際に使用した感想をそれぞれ詳しく紹介していきます。

 

 

保温性能

厳冬期槍ヶ岳 中崎尾根〜西鎌尾根

結論から言うと、保温性能としては雪山登山において、十分な性能があると思われます。

1,000m級低山及び、北アルプスなどの3,000m級の「初冬〜厳冬期〜残雪期」の冬季登山全般で使用していました。

 

▼メーカーの謳い文句が「実際にはどうか?」を解説していきます

メーカー「厳寒地での着用を前提に保温性を重視。放射熱で身体を芯から暖めるとともに、三層構造のふっくらとした空気層が暖かさを逃がしません。」

実際の感想謳い文句は概ねクリアしていると言えるでしょう。着込んだ瞬間の冷たさはなく、着た瞬間から自身の身体から発せられる熱を包み込んでいるという感覚は十分にあります。

発汗性も売りにしている為、ジオライン1枚のみ着用している状態で風が吹くと冷気が入り込み寒さを感じますが、ベースレイヤーとしての性質や冬季という環境的な要因を考慮すると、こちらは問題のない範囲と言えます。

結論としては、肌着としての暖かさは、十分に備えていると言えます。

メーカー「厚手ながら、軽量でストレッチ性に優れるため、重ね着しても軽快です。」

実際の感想ストレッチ性は非常に優れており、単体での着用の場合はクライミングなどのダイナミックな動きにもストレスを感じません。

重ね着をした際の軽快性に関しては、上から羽織るミドルレイヤーがタイトな場合などは、若干窮屈さを感じるかもしれませんが、こちらも十分に及第点と言えるでしょう。

 

発汗性能

比良 ラッセル山行

メーカー「驚異の速乾性が行動中の発汗を素早く乾かし、休憩時の汗冷えを防ぐ」

実際の感想「汗冷えは軽減されるが、ジオライン1枚では完全に汗冷えを防ぐことは出来ない。」と感じました。

しかし、

これらはジオラインの性能が低いということではなく、

ゴアテックスの高機能レインウェアの蒸れや、テントの結露などを完全に防ぐ事が出来ないのと同様に、

汗による衣類と地肌の密着により発生する物理的な問題で、ミレードライナミックメッシュなどの「ドライレイヤー」との併用で、最大限の発汗性能が発揮されると感じています。

 

 

実際に使用している感想としては、

  • ドライレイヤーやハードシェルのベンチレーターの活用し、
  • 適切な衣類の脱着を行い、
  • 汗をかきにくい歩行スピードを心掛ける。

など、雪山登山で求められる基本的な行動理念に従っていれば、ジオラインの発汗性能に不満を感じた事はありません。

 

 

▼実際に着用しているドライレイヤーはこちら

Amzonはこちら:https://amzn.to/4iflQff
公式サイトはこちら:https://www.millet.jp/drynamic/mesh/

 

 

耐久性

現在、モンベルのジオラインを2着目リピート中ですが、1着目の使用履歴を元に耐久性について紹介します。

使用状況

  • 使用期間:5年間
  • 使用頻度:冬季シーズン中(11月~5月)に約15回+寒い日の平日(×5年間)
  • 洗濯回数:合計約100回

▼写真:左
一番擦れる背中には、比較的早い段階から毛玉が発生していました。背中の摩耗はザックを長時間背負う為、致し方ありません。

▼写真:中央
5年目突入後、急に右肘に小さな穴が開き始め、ある日の山行で急に大きな穴が空いてしまいました。

▼写真:右
5年目突入後、随所に小さな穴が開き始めました。

 

結論:5年目以降、急に劣化が顕著になりました。

 

 

縮みについて

 

5年間、使用と洗濯を繰り返した結果、、、袖が大分縮みました。

写真では分かりにくいですが、袖が3㎝程短くなっています。

丈も若干短くなったように感じます。

 

 

因みに、伸びるという事は一切起こっていないと言えるでしょう。

縮みに関しても、5年間かけて徐々に縮んでいったので、別段不自由を感じることはありませんでした。

 

5年間で約100回ほど着用し、着た日は基本的に毎回洗濯していましたので、洗濯も100回ほど行っています。

それでこの結果なら十分ではないでしょうか。

尚、「ネットへ入れる」「柔軟剤は使わない」「陰干し」は徹底していました。

 

 

総評・まとめ

モンベル:ジオラインのまとめ

  • 【保温性】ベースレイヤーとしての保温性能に文句なし
  • 【速乾性】発汗性能は、ドライレイヤーとの併用で効果が最大限発揮される
  • 【耐久性】5年目突入時に急に破れが多くなり、洗濯を合計100程繰り返すと、最終的には徐々に縮む(伸びることは無かった)

5年目に突入時に破れが多くなり、買い替えを決意しましたが、逆にいうとそれまでは何の問題もありませんでした。

 

モンベルのジオラインを約8年間使用している経験と、他のベースレイヤーも使用した経験から、ジオラインEXPの最大のメリットは何かと答えるなら、

圧倒的なコストパフォーマンスにあると思います。

 

各社から販売されている雪山登山用のベースレイヤーが10,000円台であることが多いなか、6,000円台という非常に低価格でありながら、雪山登山で求められるスペックを十分に満たし、耐久性にも問題なしと非常に素晴らしい商品だと言えます。

 

価格重視の方には非常にお勧めのウェアです。

因みに、ジオラインのコスパに魅了されて、タイツも同じモンベルのジオラインEXPタイツを履いています。

 

現在、妻は同じモンベルのジオラインをリピート購入し、

私は色々なベースレイヤーを使ってみたかったので、ミレーの「WHOLE GMT WAFFLE WOOLへと乗り換えました。

 

それではまたお会いしましょう。

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