雪山登山における重要なレイヤリング。
その起点となるがベースレイヤー。それはタイツにおいても同じことが言えます。
モンベルの「ジオライン EXP.タイツ」を実際に使用した経験から、レビューしていきたいと思います。
【レビュー】モンベル:ジオライン EXP.タイツ
雪山登山のタイツの選び方
雪山登山のタイツで重要視すべきポイントは、
結論、速乾性と保温性です。
速乾性の大切さ
常に氷点下の世界の雪山登山でも、荷物を背負って登っていると結構汗をかきます。その為、寒いからと言って闇雲に暖かいモデルを選び過ぎると、汗冷えによりより一層寒くなってしまいます。寒がりな人ほどこの失敗をすると言われています。
兎に角、かいた汗を出来る限り早く外に放出し、肌を乾いた状態に保つことが、結果的に暖かさへと繋がります。
保温性の大切さ
雪山登山は動いている間は暑い(寒くない)事が多いですが、当然ですが寒い時もあります。
- 出発準備中
- 休憩中
- テントの設営中やテントの中
など止まっていると直ぐに寒くなります。
過剰な暖かさは良くありませんが、自分自身の対応は逃がしてはいけません。
このように体温は逃がさず、汗は外に逃がすという事が非常に重要です。
それでは、その他の細かな点についてもご紹介していきます。
下半身のレイヤリングについて
雪山登山におけるレイヤリングの重要性は既にご存知だと思いますが、これは下半身においても同じことです。
下半身には体の筋肉の60~70%が集まっており、行動中に常に動かす部位であることもあり、寒さへの耐性は上半身に比べて強いです。
しかし、だからと言って下半身のレイヤリングを疎かにして良いという訳ではありません。
行動中は上半身も下半身も結構な汗をかきますが、下半身は行動中の衣類の脱着はほぼ不可能です。
だからこそ、雪山登山における下半身のレイヤリングは重要となります。
下半身のレイヤリングとしては、以下のいずれかパターンが多いです。
下半身のレイヤリング
≪A≫ベースレイヤー+ミドルレイヤー+アウターシェル
薄手のタイツ
+
3シーズンパンツ
+
シェルパンツ(ハードが多い)
≪B≫タイツ+アウターシェル
中厚or厚手のタイツ
+
シェルパンツ(ハードorソフト)
私は、「厚手のタイツ+ハードシェルパンツ」の組合せです。
これで1,000m級の低山から、厳冬期の3,000m級、残雪期登山まで、雪山シーズンは全てこれで行っています。
「厚手のタイツ+ハードシェルパンツ」の組合せで寒いまたは暑いと感じる場合は、下半身においてもドライレイヤーを追加すると良いと思います。
注意ポイント
途中から雪が出始めるような場合、そこまで気温も低くない為、「薄手(中厚手)のタイツ+3シーズンパンツ」で登り、雪が出始めたらシェルパンツを履く方が温度調節がし易いように思います。しかし、実際にはどうでしょうか?
▼後から履くのが面倒くさい
雪が出始めてから、「シェルパンツを履く」という動作が非常に面倒くさいです。
ザックを下ろして、パンツを出して、こけないように注意しながらパンツを履く....
レインウェアのパンツだって履くの面倒くさくないですか?
結局面倒くさがり、シェルパンツを履くタイミングが遅れて「ミドルウェアのパンツが濡れた」なんて事にもなりかねません。
▼着心地が悪い
3層にすると少なからずゴワツキます。この重なり具合をどう感じるかは個人の感覚が大きいですが、私は不愉快でした。
歩いている時の足上げも、トイレの時も、衣類の調整の時も。
登山の際は、行動中のストレスを少しでも減らす事が重要です。
▼荷物が増えるのが嫌
総合計な重量は2層式よりも重くなります。小屋泊などであれば良いですが、重量を少しでも減らしたい山行の場合は結構気になる重さです。
この様な理由から私は「厚手のタイツ+ハードシェルパンツ」の組合せを選んでいます。
タイツの選ぶ際のポイント
▼中厚か厚手か
本格的に雪山登山を始めるなら、厚手をお勧めです。
1,000m級の低山で好天の場合、暑さを感じることありますが、その時はシェルパンツのベンチレーションで調整しています。
2,000m~3,000mの厳冬期では厚手が当然ですが、悩むのは残雪期です。好天で太陽が出ている場合は、正直暑いです。
しかし、早朝や夜間など太陽が沈むと急激に気温が低下する為、やはり厚手の一択となります。
もしも今後の登山が「1,000m以下の里山で雪があるかもしれない...」といった登山であれば、中厚で十分だと思います。
※これらは「タイツ+ハードシェルパンツ」の2層の組合せの場合です。
▼サイズと着心地
サイズは感は非常に重要です。出来る限り試着の上、購入するようにしましょう。
主なチェックポイント
・サイズ
小さいと圧迫感や裾上がり、足を上げる動作が負担になります。
大きいとズレや、余白があり体温が逃げて寒さを感じてしまいます。
・ストレッチ性の確認
足を大きく上げてもストレスがないか確認しましょう。
・ハードシェルパンツとの相性
試着の際には組み合わせて履く予定のパンツを上から履いてみて、ゴワツキやツッパリが無いかを確認しましょう。
▼素材
素材は主にウール、ポリエステル、またはこれらを使った各メーカー独自素材などが主な素材となります。
このあたりは有名な山岳ブランドが出している商品であれば問題はありません。
商品概要
それではmont-bellのジオラインタイツのレビューをしていきたいと思います。
まずはウェアの説明がこちら
【商品情報】
厳寒地での着用を前提に保温性を重視。厚手ながら伸縮性に優れフィット感を備えたアンダーウエアです。滑らかな表面の層と、柔らかい質感の肌面の層を隔壁でつないだボックス構造を採用。ふっくらとした空気層がデッドエア(断熱層としての動かない空気)をたっぷりと保持することで暖かさを逃がさず、高い保温性を実現しています。表面の滑りが良くストレッチ性に優れるため、重ね着の際も快適。足上げもスムーズです。
【仕様】
【素材】ジオライン®[ポリエステル100%]
【平均重量】189g
【カラー】ブラック(BK)
【サイズ】S、M、L、XL、M-S(ショート)、L-S(ショート)、XL-S(ショート)、U/S(海外モデル)、U/M(海外モデル)、U/L(海外モデル)、U/XL(海外モデル)
【特長】スパイラルスランテック®カフ / フラットシーマー / エラスティックテープ / 前開き付き
【最適な用途】 スノースポーツ / 極地遠征 / 冬季登山
※モンベル公式サイトより引用
ざっくりと言うと、雪山登山に最適ということです。
冒頭でも述べた雪山登山のタイツの重要なポイントである速乾性と保温性もしっかりと備えたモデルとなります。
★ポイント
モンベルからはスーパーメリノウールとジオラインと2種類の生地がラインアップされていますが、雪山登山での冷えの大部分を"汗冷え"が占めているので、発汗性能により特化したジオラインを選択するのが良いでしょう。
また、ネットのレビューではバイク乗りなどのツーリング時に使用している人が「寒い」とコメントしている人がいますが、これも前述の通りジオラインは一定以上の保温性能を有した上で、「発汗性能」に重きをおいている為、発汗が少ないアクティビティではジオラインの真価を発揮できないという事です。
価格も定価で5,000円台と、登山用のタイツとしては比較的安い部類に入ると言えます。
紹介しているウェアはこちら!
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上半身(シャツ)のジオラインの方でも詳しく解説していますので、よろしければそちらの記事もどうぞ
使用レビュー
結論から言うと、雪山登山に求められるスペックは十分に有していると思います。
1,000m級低山及び、北アルプスなどの3,000m級の「初冬〜厳冬期~残雪期」で使用していますが、非常に満足しています。
「保温」「履き心地」「発汗性」に関して、メーカーの謳い文句をどの程度クリアしているのかなど、詳しく解説していきます。
保温性能
メーカー「厳寒地での着用を前提に保温性を重視。滑らかな表面の層と、柔らかい質感の肌面の層を隔壁でつないだボックス構造を採用。ふっくらとした空気層がデッドエア(断熱層としての動かない空気)をたっぷりと保持することで暖かさを逃がさず、高い保温性を実現しています。」
実際の感想「謳い文句は概ねクリアしていると言えます。質感に関しても、メーカーの言うように"ふっくら感"は手触りと履き心地の両方で感じます。空気の層による暖かさもしっかりと感じており、止まっている時の下半身の冷えの軽減に活躍してくれています。」
履き心地に関して
メーカー「厚手ながら伸縮性に優れフィット感を備えたアンダーウエアです。表面の滑りが良くストレッチ性に優れるため、重ね着の際も快適。足上げもスムーズです。」
実際の感想「"ふっくらとして厚みがありながらも、ストレッチ性に優れている"=これはその通りで、着用していることによるストレスはありません。重ね着の際の快適性に関しても、厚手(EXP)を着用するは、ハードシェルパンツなどの大きめのパンツを履く事が殆どなので、生地表面の滑りが良いという事もあり、タイツがパンツの中で干渉するということは起こりません。
因みに、街で吐くような通常の綿のパンツなどの場合、タイツが突っ張るような感覚になることはあります。」
腰の部分には厚手のゴムが通っており、行動中のタイツのズレを出来るだけ防いでくれています。
厚手のゴムも柔らかい為、窮屈さや痒みなどは起こっていません。
またタイツの足首周辺には縫い込みがしてあり、裾部分がズレ上がることを防いでいます。
こんな感じでダイナミックな動きをしていても、タイツのツッパリやズリ上がりもなく快適に過ごすことができます。
そして、モンベルのタイツの素晴らしい所は、サイズ設定が豊富な事です。
基本的な日本サイズで合計7サイズが展開されています。ここは他のメーカーにない良いところだと思います。
S
胴囲:72-76
総丈:71-76
M-S(M ショート丈)※胴囲はMと同じで丈が少し短い
胴囲:76-81
総丈:68-73
M
胴囲:76-81
総丈:74-79
L-S(L ショート丈)※胴囲はLと同じで丈が少し短い
胴囲:81-87
総丈:71-76
L
胴囲:81-87
総丈:77-82
XL-S(XL ショート丈)※胴囲はXLと同じで丈が少し短い
胴囲:87-93
総丈:74-79
XL
胴囲:87-93
総丈:80-85
これだけのサイズ展開があれば、自分にピッタリのサイズにである事が出来るでしょう。
微妙な差で履き心地が異なる為、可能な限り実店舗での試着をおすすめします。
発汗性能
≪12~3月:冬季≫
低山~高山でのラッセル時にも着用していましたが、ベンチレーターの開閉など適宜必要な対応をしていれば、汗冷えによる下半身の冷えを感じることはありませんでした。
発汗性能に関しても大きな働きをしていると思います。
≪4~5月:残雪期≫
2023年5月のゴールデンウイークに北アルプスの剱岳に登った時は、全国的に7月並みの陽気で凄まじい暑さでした。
しかし、残雪期特有の天候で、
- 太陽が当たると暑い。
- 日没後や日陰は寒い。
という状況でしたので、GWなどの残雪期も冬用タイツ(厚手/EXP)で登りました。
標高の低い所では、上半身はベースレイヤーだけで、ハードシェルパンツのベンチレーターの開放、
稜線上では、ハードシェルを羽織り、状況により上下共にベンチレーターを適宜開閉するなど、
必要な対策をとっていたので、特段の汗冷えをする事もなく快適に過ごす事ができ発汗性能の高さが伺えます。
発汗量の多い人や、寒がりだけど汗冷えが気になる人は、下半身にもミレーのドライナミックメッシュの併用をおすすめします。
僕はドライレイヤーは上半身だけ使っていますが、滅茶苦茶快適です。1回使ったらもうやめられません。
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耐久性〜縮みについて
まだ購入してから3シーズン目ですが、大きな伸び縮みもなく快適に使用できています。これから継続的に経過を見てい行きますが、同じモンベルのジオラインのシャツを5年間使用していた経験から考えると、タイツに関しても洗濯時はネットに入れるなどの配慮をしていれば心配はないと思います。
ジオラインシャツの耐久性に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、よろしければどうぞ。
【レビュー】雪山登山のベースレイヤー「モンベル:ジオライン EXP. ラウンドネックシャツ」
総評・まとめ
モンベル:ジオライン EXP.タイツのまとめ
- 【保温性】保温性能に文句なし
- 【速乾性】発汗性能は、ベンチレーターの開閉など必要な対応をすれば、快適に過ごせる。
- 【快適性】肌触りや伸縮性も抜群でストレスフリー
- 【耐久性】洗濯に気をつければ長期間の使用も問題なさそう。
結論:購入して大変満足しています。
シャツと同様にモンベルのジオラインは価格帯から考えても非常にコスパは高いです。
下半身は多くの筋肉がついており、下半身の冷えはそのまま臓器の冷えへと繋がっているので上半身と同じように防寒対策には重点を置かなければいけません。
もしも今、
- 雪山で寒いと感じる
- 登山の登りで足が突っ張る
- 専用品じゃない薄手のタイツで雪山に登っている
という場合、タイツの買い替えを検討してみるのも良いかもしれません。
きっと、驚くほど快適になると思います。
それではまたお会いしましょう。
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