雪山登山で必須装備の一つである〝アイゼン(クランポン)〟
今回はグリベルの12本爪アイゼン「G12」を実際に使用した上でのレビューをしていきたいと思います。
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【使用歴6年】12本爪アイゼン「グリベルG12」使用レビュー
アイゼンの紹介
▼GRIVEL(グリベル) G12EVO・ニューマチック
グリベルのG12は最も有名なアイゼンの一つであり、山の中で見かける事も多いですね。
- 爪の本数:12本
- 固定方式:セミワンタッチ
つま先側:プラスチックハーネス
かかと側:バインディングシステムとなっています。 - 重量:片方530g(合計1060g)※最新モデルは片方503g(1006g)となっています。
アイゼンの固定の強弱の調整は「かかと」のツマミを回す事で微調整が可能。
シャフトにはアンチスノープレートが付いており、アイゼンへの雪の付着の軽減効果がある。
※写真は、使用歴6年の状態の為、非常にヘタリが出ており、爪も非常に短くなっています。当たり前ですが、新品は爪も長いです。
実際のフィールドでの使用レビュー
雪面への食い込み
グリベルG12の最も大きな特徴として、2本目の爪が長く、斜め前方向に向いている為、急斜面で雪面を蹴り込んだ際の食込み度合いは申し分なく、2本目の爪の上部は少し後方に鋭く反り返っているので、安定性も高くなっています。
雪山での山行記録などで「前爪しか刺さらない状態....」というワードをよく見かけますが、先端の2本も大切ですが、雪面に触れているのは2本目であることが多いので、雪面安定性という面では2本目の歯の形状が最も大切だと言っても過言ではありません。
岩場での安定性
まず基本的な事から述べますと、
▼一般的には...
グリベルG12の最も大きな特徴である「2本目の爪の長さ」は、前述の通り「雪面安定性」においては非常に高い力を発揮しますが、岩場での歩行に関しては「エアーテックEVO」の様な2本目の爪が短いモデルの方が岩場での安定性は高いと言われてます。
またその他にも「エアーテックEVO」の場合、2本目の爪が下方向に向いている為、雪面がアイスバーンと化している場面が多く想定される場合にも「エアーテックEVO」の方が優位であるとも言われています。
さてここからが本題ですが、
結論から言うと、「G12」と「エアーテックEVO」を比べた場合、汎用性の高さから「G12」が圧倒的にお勧めです。
その最も大きな理由としては、「実際で岩場での安定性は、登山者自身の力量による所が最も大きくなる」からです。
適切な技術が伴っていれば、理屈上の優劣を簡単に補うことができます。
実際、G12で西穂高などの雪面と岩場が交互に現れるMIX帯も沢山歩いてきましたが、問題なく対応できています。
アイゼンをシチュエーションに併せて複数所持できる場合を除けば、理論上での判断ではなく、汎用性を優先する方が良いでしょう。
柔雪への対応力
前爪が横広タイプなので、アイスクライミング用の縦タイプよりも浮力は高めと言えます。
また、シャフト部分にはアンチスノープレートが装着されているので、雪団子が付着しにくくなっています。
しかし、こればかりは雪面の状態がどの程度緩んでいるのかなどの環境的要因が最も大きく影響するので、モデルによる差別化は難しいと感じています。
その他、ハード面のレビュー
登山靴との相性
グリベルのアイゼンは、数あるアイゼンの中でも最も適合率が高いとされています。
私はスカルパのファントムガイドを履いていますが、グリベルのG12と合わせています。
使用から6年経ったのとは別に、元々前爪の露出が少し足りないようにも思います。
※一応これで、槍ヶ岳(厳冬期&残雪期)、西穂高岳(厳冬期&残雪期)、涸沢岳 (厳冬期)などに無事に行けています。
サイズ調整のしやすさ
アイゼンの固定の強弱の調整は「かかと」のツマミを回すタイプで、無段階調整式となっているので、微調整が可能となっています。
調整のしやすさは無段階調整式なので好みの硬さにできるので便利です。
但し、この構造上緩みが発生しやすいので、好みの硬さにしていてもアイゼンの着脱を繰り返した時に、再度調整が必要となることもあります。
また、宿泊を伴う山行の場合、1日の終わりにはツマミの所に詰まった雪は取り除くようにしましょう。翌朝凍りついて調整が出来ない場合があります。
「締める・緩む」が「時計周りなのか、反時計回りなのか」は事前に覚えておきましょう。
実際に山の中で調整していると、どっちがどっちか分からなくなることあります。
アンチスノープレートの性能
アイゼンのシャフトの部分にはゴムのチューブ(取外し可能)が付いており、これにより雪がアイゼンに付着することを抑制する効果があります。
実際の効果の程ですが、
【気温が低く乾燥した雪】アイゼンに付着する事はほとんどありません。
【雪がそれなりに締まっている場合】大きな問題にはなりません。
【雪に多くの水分を含む柔雪の場合】雪団子が出来る事が多々あります。
といった具合で、雪の状態によっては雪が多量に付着することがあるので、無いよりはマシという程度に捉えておく方が良いでしょう。
耐久性 & メンテナンス
工具なしで写真の状態までバラす事ができるので、メンテナンスは比較的やりやすいと言えます。
▼必要なメンテナンス
- アイゼンは解体する
- 水で洗って汚れを落とす
- 乾燥させる
- 錆を金属ブラシ等で落とす
- 丸くなった刃を研ぐ
- 研いだ刃を含めてアイゼンの金具の部分に防錆処理を施す
アイゼンの大敵は錆であり、アイゼンを雪山に持って行けば絶対に錆は発生するので、時間がない場合などでも、3番の水洗い後の乾燥まではしておいた方が良いです。
▼耐久性について
耐久性に関しては、山行の種類と頻度、メンテナンスの有無、爪の研ぎ具合などによって異なります。
【買替理由1:刃が短くなる】
岩と雪のMIX帯に行くと刃が丸くなりやすく、下山後は次の山行の為に丸くなった刃を研ぐ必要がありますが、この繰り返しが刃を短くする要因の一つとなります。
【買替理由2:金具やプラスチック部分の破損】
これは適切なメンテナンスを行っていれば防ぐことの出来る問題です。下山後なるべく早く「洗浄・乾燥・錆落とし・防錆処理」を行っておけば劣化を最小限に抑える事が出来ます。
【私の使用状況はこちら】
私の場合は、6年使用して刃がそこそこ短くなったので買い替えを決意しました。
11月の初冬から5月の残雪期まで使用しており、岩と雪のMIX帯にもよく出かけ、アイゼンの刃は毎回そこそこ鋭く研いでいました。
- 11月:槍ヶ岳や剱岳
- 12月:低山1~2回
- 01月:西穂高岳1回、低山1回
- 02月:涸沢岳1回、低山1回
- 03月:低山1回
- 04月:西穂高岳1回
- 05月:槍ヶ岳1回
どれだけ大切に扱っていても、いずれは買換えが必要となります。
また、アイゼンが山の中で破損・故障した場合、状況によっては下山が出来なくなったり、滑落事故を起こしたりと、非常に危険な状態となります。
日頃からメンテナンスを行なうと共に、傷みなどがないか小まめにチェックするようにしましょう。
まとめ&総評
今回はグリベルの12本爪アイゼン「G12」をご紹介させて頂きました。
冒頭でも述べましたが、最も多く使用されているアイゼンの一つであり、山の中でも同じモデルを目にすることも多く、それだけ多くの登山者に愛用されているということでしょう。
実際に6年間使用してきましたが、雪面への食い込みや岩場での安定性も高く、信頼の置けるアイゼンと言えます。
造りも非常にしっかりとしており、トラブルも一度も起こっていないので、使用後のメンテナンスさえしっかりと行なっていれば、長く使用することが出来ます。
靴との適合性さえ問題なければ、購入して間違いのないアイゼンだと思います。