皆さん、登山に行く際の天気予報は何をお使いでしょうか?
てんきとくらす、SCW、tenki.jp、などなど、多くの予報サイトがあります。
私は有料サイトの「ヤマテン」を使用しています。
今回は、7年以上使用してきた経験から、ヤマテンのレビューをしていきたいと思います。
登山の天気予報「ヤマテン」を7年間使ってみた感想「レビュー」
ヤマテンとは
「ヤマテン」は、有料の山岳気象予報サイトであり、
2011年に猪熊隆之氏が設立された、日本初の山岳専門の気象(天気)予報サービスです。
月額550円で追加料金は一切ありません。
※2024年6月25日より、従来の330円から550円へと料金改定が行われました。
山岳気象予報に特化した気象予報士による「精度の高い天気予報」に定評があります。
★猪熊隆之(氏)とは
- 山岳専門気象予報士
- 国立登山研修所の講師・専門調査員
- 中央大学山岳部出身、兼、現同山岳部の監督
- エベレストを含むヒマラヤ登山の経験あり
▼リンク
ヤマテン公式HP:https://i.yamatenki.co.jp/
サービスの紹介と実際に使用している感想
制度の高い天気予報
ヤマテンの天気予報は「スペシャル予報」と「ノーマル予報」の2つに分かれています。
▼スペシャル予報とは
山岳気象に精通した気象予報士が各山の地形や特有の気象条件などを考慮した上で、実際の登山経験や予報経験から精度の高い予報を算出します。
対象の山の予報が3日先まで予報されます。
翌 日:気象予報士による予報
翌々日:気象予報士による予報
3日後 :自動予報(ヤマテン独自のアルゴリズム)
気象予報士による予報では、
- 6時間毎の天気予報
天候・気温・風向き・風速
- 1日の天気の移り変わりの説明文
風雨が強まるタイミングや、予想される降雪量、天気の崩れるタイミング等
- 想定される気象リスク
などが詳しく発表される為、山の中での天候のイメージを掴みやすくなっています。
【スペシャル予報の対象山域】
以下の18グループの合計60山が対象となります。
- 利尻山
- 大雪
十勝:大雪山(旭岳)、トムラウシ、十勝岳
- 飯豊
朝日:飯豊山、朝日岳(東北)
- 尾瀬
燧ヶ岳、会津駒ヶ岳、平ヶ岳、至仏山
- 谷川
谷川岳、苗場山、武尊山
- 北アルプス北部
剱岳、立山、朝日岳(北ア)、白馬岳、五龍岳、鹿島槍ヶ岳、薬師岳、黒部五郎岳、黒岳(水晶岳)
- 北アルプス南部
槍ヶ岳、穂高岳、常念岳、燕岳、笠ヶ岳、焼岳、乗鞍岳、鷲羽岳
- 八ヶ岳
赤岳(八ヶ岳)、蓼科山
- 奥秩父
甲武信岳、両神山、雲取山、金峰山、瑞牆山、大菩薩嶺
- 丹沢
A丹沢山
- 富士山
丹沢山
- 中央アルプス
木曽駒ヶ岳、空木岳、恵那山
- 南アルプス
北岳、間ノ岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、鳳凰山、塩見岳、悪沢岳、赤
石岳、聖岳、光岳 - 大峰・台高
大峰山(八経ヶ岳)、大台ヶ原山(日出ヶ岳)
- 大山
- 石鎚山A
- 九重・阿蘇A
九重山、阿蘇山
- 屋久島A
宮之浦岳
▼ノーマル予報
ヤマテン独自の高精度アルゴリズムで算出した結果を元にした予報で、全270の山の予報に対応しています。
スペシャル予報に比べると予報精度は下がるとされていますが、マイナーな山域にも対応しており、天気予報の目安としては十分に活用できます。
【ノーマル予報の対象山域】
- 北海道エリア
羅臼岳、斜里岳、阿寒岳、暑寒別岳、天塩岳、ニセイカウシュッペ山、石狩岳、ニペソツ山、オプタテシケ山、芦別岳、夕張岳、幌尻岳、ペテガリ岳、カムイエクウチカウシ山、神威岳、アポイ岳、余市岳、樽前山、後方羊蹄山、ニセコアンヌプリ、狩場山、北海道駒ヶ岳、大千軒岳
- 東北北部エリア
岩木山、八甲田山、白神岳、八幡平、岩手山、乳頭山(烏帽子岳)、秋田駒ヶ岳、和賀岳、姫神山、早池峰、五葉山、森吉山、太平山、焼石岳
- 東北南部エリア
栗駒山、神室山、鳥海山、月山、船形山、泉ヶ岳、蔵王山、摩耶山、以東岳、祝瓶山、朳差岳、吾妻山、東吾妻山(一切経山)、安達太良山、磐梯山、大滝根山、二岐山、七ヶ岳、荒海山、会津朝日岳
- 尾瀬・谷川エリア
帝釈山、景鶴山、巻機山、朝日岳、仙ノ倉山、佐武流山、白砂山
- 新潟エリア
二王子岳、五頭山、弥彦山、粟ヶ岳、御神楽岳、守門岳、浅草岳、越後駒ヶ岳、荒沢岳、八海山、中ノ岳、米山、妙高山、火打山、焼山、雨飾山、青海黒姫山、金北山
- 北信エリア
高妻山、黒姫山、戸隠山、飯綱山、斑尾山、鳥甲山、岩菅山、横手山、笠ヶ岳、四阿山、浅間山(前掛山)
- 北関東エリア
那須岳(茶臼岳)、男鹿岳、高原山(釈迦ヶ岳)、男体山、女峰山、太郎山、日光白根山、皇海山、袈裟丸山、赤城山、榛名山、草津白根山、浅間隠山(矢筈山)、妙義山、荒船山、諏訪山、八溝山、筑波山
- 南関東・山梨・富士・伊豆エリア
武甲山、大岳山、御岳山、三頭山、高尾山、伊予ヶ岳、大楠山、大山、金時山、箱根山、天城山(万太郎岳)、達磨山、越前岳(愛鷹山)、御正体山、三ツ峠山、黒岳(御坂黒岳)、毛無山、七面山
- 伊豆諸島エリア
三原山、八丈富士
- 東海エリア
山伏、黒法師岳、高塚山、熊伏山、百々ヶ峰
- 奥秩父エリア
御座山、白石山(和名倉山)、国師ヶ岳、乾徳山、茅ヶ岳
- 八ヶ岳・中信高原エリア
美ヶ原(王ヶ頭)、鉢伏山、霧ヶ峰(車山)、天狗岳、入笠山
- 北アルプス北部エリア
毛勝山、奥大日岳、鍬崎山、雪倉岳、唐松岳、爺ヶ岳、蓮華岳、針ノ木岳、烏帽子岳、赤牛岳、野口五郎岳
- 北アルプス南部エリア
三俣蓮華岳、餓鬼岳、有明山、大天井岳、霞沢岳、鉢盛山
- 中央アルプス・御嶽・木曽エリア
経ヶ岳、南駒ヶ岳、越百山、安平路山、御嶽山、小秀山、奥三界岳、南木曽岳
- 南アルプスエリア
鋸岳、アサヨ峰、農鳥岳、櫛形山、笊ヶ岳、奥茶臼岳、上河内岳、茶臼岳、池口岳、大無間山
- 北陸・飛騨エリア
白木峰、金剛堂山、人形山、医王山、大門山(加賀富士)、大笠山、笈ヶ岳、三方岩岳、猿ヶ馬場山、白山、野伏ヶ岳、経ヶ岳、荒島岳、位山、川上岳、鷲ヶ岳、大日ヶ岳、能郷白山、冠山
- 近畿エリア
伊吹山、藤原岳、御在所岳、武奈ヶ岳、蓬莱山、比叡山、愛宕山、六甲山、生駒山、大和葛城山、金剛山、龍門岳、倶留尊山、三峰山、高見山、山上ヶ岳、釈迦ヶ岳、伯母子岳、護摩壇山
- 中国エリア
扇ノ山、氷ノ山、那岐山、上蒜山、道後山、吾妻山、三瓶山、冠山、大満寺山 - 四国エリア
飯野山、星ヶ城山、剣山、三嶺、東赤石山、笹ヶ峰、伊予富士、瓶ヶ森、工石山、大川嶺、三本杭、篠山
- 九州・屋久島エリア
英彦山、立石山、宝満山、脊振山、国見山、多良岳、雲仙岳(普賢岳)、矢立山、父ヶ岳、由布岳、鶴見岳、涌蓋山、大船山、祖母山、傾山、大崩山、国見岳、市房山、尾鈴山、霧島山(韓国岳)、高千穂峰、鰐塚山、桜島、高隈山(大箆柄岳)、稲尾岳、開聞岳、モッチョム岳
- 南西諸島エリア
湯湾岳、与那覇岳、於茂登岳
▼実際に使っている感想
ヤマテンの他の天気予報サイトがコンピューターの自動算出なのに対して、ヤマテンは「山岳気象予報の専門家が各山域の特性を考慮した上で、一つ一つ手作りで予報を出している」という点にあります。
ノーマル予報は自動再生ではありますが、ヤマテンのこれまでの経験が活かされた独自のアルゴリズムにより、他の一般的自動算出の天気予報とは精度に差があるように思います。
これまで、無料の天気予報サイトでは「"晴"と発表されていても、当日になって「雨」予報に変わった」といった経験はありませんでしょうか?
こういった「予報ハズレ」がヤマテンでは起こりにくいのが一番の特徴です。
また、ただ単に「雨」や「風」の有無を予報するのではなく、風やガスの湧くタイミングや風雨の程度などに関してコメントが記載されるので、山行計画が立てやすくなっています。
▼参考話
2021年11月の剱岳に登った時、この日は正午過ぎから山頂付近はガスで覆われるという予報が出ていました。
山頂付近は危険個所や間違い尾根もあり、ガスが湧くまでに一定箇所迄下降しなければいけませんでした。無事に登頂を果たし、12時過ぎに下降中に山頂を振り返ると、山頂付近は厚いガスに包まれていました。
剱岳は12月から翌5月までは事前の申請が必要となり、一般の登山者が雪を纏った剱岳に登れる期間は非常に限られています。10月や11月などの雪が降る季節になると、終日快晴という日はなかなかなく、晴れ間を狙って登らなければいけません。
このような時に必要となるのが「確かな天気予報」だと言えます。
この時の山行記録はこちら
大荒れ情報、台風情報なども配信される
豪雨や落雷、台風などが発生した場合は、通常の予報とは別に情報が配信されます。
「大荒れ情報」
登山が危険なレベルの悪天候が予想される場合に、数日前に荒れ具合の程度や危険性などが通知がされるので、安全登山に役立てることができます。
「台風情報」
日本は台風大国なので台風問題は切り離せない問題です。そして、登山が趣味の人にとって台風の進路はとても重要な懸念点となりますが、台風が発生した際は、ヤマテンが数回に渡りヤマテン独自の台風情報を発表してくれるので、山行計画を立てるのにとても参考になります。
連休には長期的な発表がある
ゴールデンウイーク、夏休み、シルバーウイーク、年末年始や、その他の連休などには、長期的な予報が発表されるので、山行計画を立てるのにとても役立ちます。
※勿論、気象予報士の説明コメント付きです。
専門天気図が利用できる
会員サービスの一つとして、「地上天気図」や「高層天気図」などの6種類の専門天気図が利用できます。
※高層天気図は1日4回更新されます。
天気図を読めることにより、以下の様なメリットがあります。
- テント場などの山頂以外の気温や風の情報を知る事が出来る
- 自分で天気が崩れる範囲やタイミングが分かる
- 天気予報の推移を把握することが出来る
天気図って難しそう...と思われる方も多いとは思いますが、基本的な内容であれば誰でも理解することが出来ますし、運営の猪熊さんが「天気図の見方」を開設した動画も出されているので心配いりません。非常に分かりやすく解説されておられるので、何度か見ていれば、自分の登山の結構の可否くらいは判断できるようになります。
▼参考URL
色々と山の事が学べる
先程の「専門天気図」に加えて、ヤマテンでは色々な情報が発信されており、山岳気象情報を中心とした様々な情報を得る事が出来ます。
- 山域特性の解説
- 現地での講習会
- 専門天気図の読み方(Youtube)
- 机上講座
- オンライン講座
無料のものと、有料のものとがありますが、無料のものだけでも十分な知識を得る事ができるようになっています。
ヤマテンのデメリット「今後、改善して欲しいポイント」
スペシャル予報の山域が少ない?
ヤマテンを5年間使用してきて、特にデメリットを感じた事はありませんが、敢えていうなら、「スペシャル予報の山域が少ない」という点にあります。
対象山域は合計60山で、比較的有名な山が対象となっており、マイナーな山に関してはノーマル予報のみとなっています。
※スペシャル予報=専門家が手作りで算出した精度の高い予報
※ノーマル予報=ヤマテン独自のアルゴリズムが自動算出した予報
スペシャル予報予報の数に限界がある理由として
- 精度の高い山岳気象予報を算出するのはとても時間が掛かるということ。
- 山岳気象予報士を育てるにはとても長い月日が掛かるということ。
この2点があると、ヤマテンから発表されてます。
但し、マイナーな山域に関しては、「ノーマル予報」と「専門天気図」の2つの組み合わせで、十分に対応出来るので、入会するデメリットにはならないと思っています。
因みに月額料金550円は高くない
色々と無料の天気予報サイトがあるなかで、有料と聞くとどうしても敬遠してしまう気持ちは分かります。
しかし、これまで様々な天気予報サイトを使ってきた経験からすると「ヤマテンの550円」は非常にコスパに優れた優良サイトだと言えます。
無料に越した事はありませんが、予報精度の低い無料のサイトを利用して、実際に山で雨が降って途中で下山をしたとしたら、交通費が無駄になりますよね。
550円であれば、ペットボトル4本分ですし、少し節約すれば一発で取り返せる金額です。
まとめ
山の天気は本当に変わりやすいので、例え専門家であっても山の天気を完全に把握することは出来ません。
しかし、その特性を踏まえた上で言うと、「ヤマテン」の予報精度は非常に高いと言えます。
有料だけの価値は十分にあるでしょう。
▼ヤマテンへの入会をおすすめする人
- 毎月1回以上は登山をする人
- 雪山登山、沢登など本格的な登山を行う人
- パーティー登山のリーダー
- 無料の天気予報サイトの不正確さにうんざりな人
初めて利用する場合は、最初の1週間は無料で利用できますので、「どんなサービスなのか」を気軽に知る事が出来ます。
是非、参考にしてみて下さい。