2024年7月27日、夏の涸沢岳西尾根から蒲田富士へと登って来ました。 非常に深い藪に苦しめられましたが、なんとか蒲田富士まで行く事が出来ました。
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【山行記録】激藪!夏の涸沢岳西尾根から蒲田富士/ 2024年7月27日
ルート&タイム
2024年07月27日(土):日帰り
04時40分:鍋平駐車場
05時15分:新穂高登山指導センター(標高1,080m)
05時30分:新穂高温泉駅
06時20分:穂高平小屋
07時30分:白出沢出合(標高1,542m)
13時45分:蒲田富士(標高2,742m)
18時00分:白出沢出合
18時35分:穂高平小屋
19時35分:新穂高温泉駅
20時10分:鍋平駐車場
行動時間計:15時間30分
累計標高差:登り1888m
移動距離計:19.0km
アクセス
鍋平駐車場(P8〜P9)を利用
夏の最盛期は深山荘側駐車場(無料P5)への駐車はほぼ不可能と考えて、最初から鍋平(P8〜P9)への駐車を視野に入れた計画の方がいいでしょう。但し、鍋平駐車場も満車になる可能性もありますので、注意が必要です。
尚、鍋平〜新穂高は降り30分、登り40分くらいです。
天気
午前:曇り時々晴
午後:晴れのちガス、一時雨
登山道の積雪状況・危険個所
【注事項】
▼涸沢岳西尾根について
涸沢岳西尾根について、ここでは詳しくは省略しますが、本ルートは冬季の穂高バリエーションルートであり、一般登山道ではありません。
また、積雪期以外の入山者はほぼいないという点にも十分に理解しなければいけません。
新穂高〜右俣林道〜白出沢出合
崩落箇所もなく問題なく通行可能です。
取付〜FIXロープ(樹林帯)箇所
取り付きから直ぐに笹が現れ、直ぐに急登が始まります。
最初こそ膝上程度の笹ですが、程なくして笹の高さが増して来て、腰〜目線の高さな薮がメインとなります。
途中、笹の高さが背丈を超える場所が暫く続きます。藪が最も深いのがこのあたりとなります。
FIXロープ箇所〜2200m地点
薮もなく斜度もキツくない為、問題ありません。
それ以降は、木の根を登る場所が出てきますが、こちらも特に大きな問題はありません。
一部に藪漕ぎもありますが、そこまで深くはありません。
2200m地点〜2400m地点
切れ落ちた箇所や岩場の登りが出てくる為、滑落に注意が必要です。
一部に藪漕ぎもありますが、そこまで深くはありません。
2400m地点〜森林限界〜稜線
2400m地点は夏は笹が生い茂っている為、テントの設営は不可能です。
斜面の斜度はキツイですが、危険なほどではありません。しかし、標高を上げるにつれて、藪や樹木が生い茂り視界が悪くなり、稜線直下に近づくにつれて一層酷くなります。
下りではこの辺りのルートファインディングは注意が必要です。
稜線〜蒲田富士
稜線からの下降点は草木が生い茂っており、下りの時に見失いやすい為、ストックをデポするなど目印を残しましょう。
蒲田富士直下の雪壁箇所も雪がなければ登攀グレードは高くなく、普段から岩稜コースやバリエーションルートを歩いていれば技術的な難易度は問題ありません。
稜線以降も蒲田富士までハイマツが生い茂っており、引き続き藪漕ぎとなりますが、腰程度の為、大きなタイムロスにはなりません。しかし、北側に切れ落ちている箇所も多い為、踏み抜けば命は無いでしょう。
装備や行動食
装備
▼夏山、日帰り基本装備
シャツ、パンツ、靴、ストック
防寒着、レインウェア、ザック38L、
地形図、コンパス、ホイッスル、ヘッドランプ(予備電池)、GPS(予備電池)、
常備薬、時計、サングラス、ツェルト、ナイフ
行動食、非常食、飲料
▼登攀道具
ヘルメット、ハーネス、30mダブルロープ1本、カラビナ、スリング若干数
※ロープ類の出番はありませんでした。
行動食
- カロリーメイト:12本(1200kcal)
- フルグラ:300g(1300kcal)
- ナッツ&フィッシュ:180g(900kcal)
- アミノバイタル:3本(200kcal、160kcal、100kcal)
- 水:3L
山行記録:新穂高〜右俣林道〜涸沢岳西尾根〜蒲田富士
新穂高〜右俣林道〜白出沢出合
鍋平駐車場に午前2時30分に到着し、1時間だけ仮眠を取りました。
3時半に起床し1時間で準備をして、4時40分に鍋平駐車場を出発。35分で新穂高登山センターに到着。登山道は濡れていて歩きにくかったです....。
さぁ、大嫌い(苦手)な右俣林道から登山が始まります。
一つ目の九十九折からは、今日登る予定の蒲田富士が見えています。
夏の時期は、工事業者さんの計らいで、登山者用の休憩所が解放されています。
新穂高スタートの場合、まだ大した距離ではないので素通りしますが、今回は鍋平スタートで既に結構な距離を歩いているので、ここで休憩にします。屋根付きの為、椅子と机が朝露で濡れていないのが有り難い。
そして、なんとFree wifiもあるようです。ここから先、方面にもよりますが、暫くは電波も入らないので、最後の情報収集には良いですね。
今回は夏の日帰り装備ということで快調に歩いて新穂高から休憩時間を除いて50分で穂高平小屋に到着。僕達にしては早い方です。30分を切る登山者もいますが、、、到底真似する事は出来ません。
先程の休憩所で体を休めているので、穂高平小屋は素通りします。
新穂高から2時間で白出沢出合に到着。白出沢を渡って堤防の上で休憩するのが、右俣林道でのルーティンです。
休憩していると、槍ヶ岳方向に向かう登山者が続々と登って行きました。
白出沢出合~涸沢岳西尾根~森林限界(稜線)
白出沢を渡ってすぐのトウヒが涸沢岳西尾根の取付き地点です。
取付き地点。さぁ、行きますか。
入って直ぐに藪が待ち構えています。
最初こそ膝上の藪ですが、
直ぐに胸の高さとなり、
程なくして背丈を超える藪漕ぎとなります。
踏み跡と赤テープがあるので、基本的にルートは分かりやすいです。
とは言え、一定以上のバリエーションルートの歩行経験がある前提ですので、整備された登山道しか歩いた事のない場合は厳しいと思います。
こんな感じで道が分かりやすい所もありますが、安心してはいけません
直ぐにこんな感じの激藪漕ぎになるので。
こうなると怖いのが熊ですね。熊鈴とホイッスル、大きな声での会話で常に熊への警戒は怠りません。
所々、こういう歩きやすい所はスピードアップのチャンス!
FIXロープの箇所はこんな感じで、夏はなんてことのない場所です。
FIX箇所が終われば、また暫くは藪漕ぎが続きます。
木登り区間を経て、
暫く歩きやすい区間が続きます。
視界が開けて、標高を上げてきたことを実感。
藪もそろそろ終わりか?と油断してしまいますが、
そんなことありません。行手を遮るかのような藪が待っています。
冬に何度も歩いているので、大体の場所のイメージが湧きますが、初めて来た場合は面食らうと思います。
ここは、両側が切れ落ちた細りリッジなので注意が必要です。
写真では分かりにくいですが、中央以外は切れ落ちた斜面です。
目標地点はまだまだ先ですが、ひとまずだいぶん上がって来ましたね。
ここは岩をのっ越す場所で、冬も少し歩きにくいです。
リッジと岩場を超えれば、次はちょっと嫌らしい藪漕ぎトラバース。滑ったら葡萄谷に向かって滑落するので、要注意ですよ。
冬はここで幕営している人もいます。
2400m地点のテント適地に到着。
夏は膝上の草が生い茂っているので、テントの設営は無理です。
まぁ、熊の脅威もあるので幕営する気にはなりませんが。
ここから稜線に上がるまで、あともう少しです。
稜線直下に近づくにつれて、また藪が濃くなり始めます。
この辺りはルートが不明瞭なので、進むべき方向には注意が必要です。
あと、斜度の関係もあり、笹だけではなく木の上だも掻き分けていかないといけないので、そこそこ苦労します。
まだかまだかと登っていきます。
視界が開けた!やっと稜線です。
あぁ〜疲れたぁ
冬はここに赤旗を立てますが、今回は目印代わりにここにストックをデポ。
こんな感じで樹木が生い茂っていて、下降点を見失いそうです。
森林限界~蒲田富士
森林限界を越えれば藪漕ぎから解放されるかというと、そうもいきません。
今度はハイマツのラッセルが待っています。
微かに踏み跡らしき道はありますが、基本的にはハイマツを掻き分けて進むことになります。
おかげで手が松脂でベッタベタになりました。
定期的に軽い岩場が出現します。
進行方向左側は切れ落ちています。
バリエーションルートなので、一般登山道との比較はできませんが、岩場の難易度だけで言えば、西穂の稜線よりは難しいと思います。
ん?これは熊の糞でしょうか。鼻を近づけても臭くなかったので、多分熊ですよね。
当然ですが、やっぱりクマはいるんですね。
FIXロープの箇所が見えていきました。
ガスが晴れてきた!
さぁ、上りますか。
岩と緑の境の所に薄っすらとFIXロープがあるのがお分かりでしょうか?そこを登って行きます。
FIXロープは夏も健在ですが、改めて見るとかなりボロいです。
落ち着いて登れば問題ありません。
FIXロープ上部の残置。いつもお世話になっております。
FIXを登った先も、もう少し岩場が続きます。
もちろん、藪漕ぎも。
冬は雪庇に気をつけないといけない区間です。
蒲田富士の山頂が見えて来ました!
冬はFIXから蒲田富士まであっという間なんですが、夏の方が長く感じます。
蒲田富士の山頂に到着。
10分くらい休憩します。
今回ここに来たのには理由がありますが、その話はまたいつか機会があればお話ししたいと思います。
蒲田富士からF沢のコル方面。ここから先辺一帯は先は冬は両雪庇が発達する非常に危険な場所。
夏はこんな感じなんですね。
さて、帰りも長いので下山します。
下りは一層気をつけて。
うっかり左に足を滑らせると、遥か彼方まで落ちていきます。
下界は大分下ですね。日暮れまでに下りないと、藪漕ぎが面倒な事になります。
雲の切れ間から穂高連邦が顔を見せてくれました。
奥穂高岳
西穂西尾根
もう少し早く雲が取れてくれてたらなぁ。まぁ、山あるあるですね。
下りも藪漕ぎですよ。
槍平方向も綺麗に見えました。
中崎尾根〜西鎌尾根
笠ヶ岳
下りもガッツリ藪漕ぎ!
よく見てください、草の中にヘルメットが見えますか?こんな感じで人が簡単に埋もれる高さの藪が生い茂っています。
18時、涸沢岳西尾根を降り切りました。
トウヒに無事の下山の報告。
まとめ&感想
▼感想
今回は、蒲田富士に少し用事があり、涸沢岳西尾から蒲田富士へと行ってきました。
冬季バリエーションルートである本西尾は、夏は藪漕ぎに苦しめられる事で有名でしたが、実際にその通りで、蒲田富士までの7〜8割が藪漕ぎでした。
笹が背丈を超える高さの所も多く、少し距離があくと互いの姿が完全に見えなくなるので、注意が必要でした。
注意が必要と言えば、熊。
今年は、北アルプス各地で熊の目撃情報が出ており、この様な時期に人が誰も入らない藪漕ぎルートを行くというのも如何なものかと思いましたが、常に注意を払っていたこともあり、幸い出会うことはありませんでした。
しかし、森林限界以降の2600m付近に熊のものと思しき真新しい巨大な糞があり、改めて自分達が熊の生息域に足を踏み入れているのだと実感させられました。一般登山道も勿論ですが、バリルートに入られる方はより一層注意が必要ですね。
標高差1000mの藪漕ぎを経て、森林限界を超えて稜線へ上がった時の、爽快感は季節を問わず素晴らしいものです。
これまでの苦労が報われるあの瞬間のあの感覚、あれが山を辞められなくしているのでしょう。
冬はここに下降点を見失わないように赤旗を立てるが、今回はここに目印代わりにストックをデポ。
夏は樹木が生い茂っていて、違う意味で下降点をロストしやすそうでした。
稜線に上がってからも、ハイマツのラッセルがありましたが、先程までの深い藪漕ぎに比べればマシだし、FIXロープの岩稜帯も落ち着いて登れば問題ありません。
30分で蒲田富士の山頂へ。小さな手書きの看板が可愛らしい。
山頂で15分程休憩。もっとゆっくりしたい所ですが、時間も押しているので直ぐに下山開始。
登りの逆目の笹には苦労しましたが、危ないと感じたのはやっぱり下り。
特に森林限界と樹林帯の境目が少し嫌らしく、深い藪と生い茂った樹木で地形が分かりにくく、GPSで答え合わせをしながら下降しました。
降りは2400m地点までルーファイに神経を使い、行きと同じだけの藪漕ぎにウンザリしながらも、無事に暗くなる前に西尾根を下り切りました。
あとは、消化試合の右俣林道を歩いたら登山終了〜
とはならないのが、夏の新穂高の登山。
しっかり鍋平への登り返しが待っています。深山荘の駐車場は何時に来たら停められるのでしょうか。
2024.7.27(日帰り)
▼まとめ
今回の山行通じて感じた事をまとめました。
《熊への警戒について》
このルートで最も注意しなければならないポイントのひとつに熊との遭遇があります。
登山者が全く入らない為、熊からしても登山者との遭遇を想定していません。実際、稜線上に真新しい熊の糞がありました。
《ルートファインディングについて》
薮は深いですが、赤テープが沢山あり、何故が踏み跡もある程度は残っている為、基本的なルーファイが出来れば問題ないでしょう。
《ダニや蜂などの虫が豊富にいます》
深い藪漕ぎが長時間に渡り続く為、ダニや蜂などの虫との遭遇率が高まります。
私は実際にダニが身体に付着しました。
《コースタイムについて》
バリエーションルートの為、標準のコースタイムというものな存在しませんが、私が歩いた感覚では、西尾根の取付の白出沢出合いから、蒲田富士まで5時間は見ておいた方が良いでしょう。登山者の体力度合いも勿論ですが、薮の濃さによっても、所要時間は大きく異なります。
今回は私達も日没残り1時間での下山となり反省点は大きいですが、このルートをピストンまたは下山する場合、西尾根は必ず明るい内に降り切る必要があります。上述の通り笹が背丈を超える区間がある為、日没後のヘッドライトによる行動はほぼ不可能です。
また下りはルーファイの難易度が上がる事と笹を踏んで滑りやすい為、通常のルートのように下りでピッチを上げることが難しい為、所要時間は登り降り同じで想定する方が良いでしょう。
日照時間を考慮すると体力に自信のある登山者を除き、お盆明けの8月下旬までがリミットと感じます。
《このルートの難易度について》
岩稜ルートのような登攀的な難易度は高くありませんが、未開拓の山をいく、登山本来の楽しさや難しさが詰まったルートだと思います。