雪山といえばラッセル
雪山登山の醍醐味でもありますが、時に過酷さを極める時もあります。
今回は、雪山登山でラッセルをおオススメする理由についてお話したいと思います。
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ラッセルとは
ラッセルとは、新雪が降りトレース(踏み跡)のない状態で雪を掻き分けて進んでいくことを言います。
ラッセルと一口に言っても色々です。
- 足首:余裕
- 膝:Theラッセル!
- 腰:本気のラッセル
- 胸:敗退色濃厚
- 万歳:普通じゃない
雪の深さ以外にも、雪質によってもラッセルの難易度(大変さ)は大きく異なってきます。
サラサラ過ぎても踏み固められずに前に進めませんが、水分を多く含んで雪が腐った状態も沈んでばかりで一向に前に進みません。
ラッセルには「正しいやり方」や「コツ」が一応ありますが、基本的には「体力」が一番重要です。
ラッセルをおすすめする理由
満足度が倍増する
雪深いラッセルを強いられて、今すぐにでも帰りたい気持ちを押さえ、必死の思いで山頂に立った時の達成感は本当に素晴らしいです。
雪山の難易度は、トレースの有無で本当に大きく異なりますが、その分、山頂に立った時の達成感も大きく異なります。
そして何より、真っ白な雪面に自分が引いた一本の線を振り返った時、これ以上ない達成感・気持ちさに包まれます。
慣れ親しんだ低山でも全く違った景色になる
通いなれた低山も雪が沢山降り積もれば、夏とは全く違った景色へと変貌します。
それは視覚的な効果だけではなく、難易度が大きく上がるという事もあります。
夏であれば3時間くらいのハイキングコースが、雪が積もる事で6時間以上かかるロングルートとなったり、
夏であればアスレチック感覚のコースが、雪が積もる事で雪壁と化したり、
そして、これらの変化はトレースの有無で本当に大きく異なってきます。
慣れ親しんだ山にちょっとマンネリ化してきている際は、人があまり来ないマイナールートでラッセルしてみて下さい。
また違った景色が広がっています。
後続にお礼を言われる
自分が山頂に立ちたい為に、必死の思いでラッセルをしているのであり、
後続の人達から感謝されたいからラッセルをしている訳ではありません。
しかし、後ろから来た登山者から「トレースのお陰で登ることが出来ました」と言って貰ったりすることもあります。
誰かから感謝の言葉を貰うというのは、やっぱり嬉しいものです。
敗退でも清々しい
何かの理由で敗退となった時は、滅茶苦茶悔しいですよね。
天候だったり、体調だったり、色々な理由で毎回山頂に立てるわけではありません。
しかし、ラッセルで敗退となった時はどこか清々しい気持ちになります。
数時間の間、雪と揉み合って、自分が持っている物全てを出し切ったからでしょうか。
「山頂だけが全てではない」という言葉がこういう時に使うのだと思います。
自分の力量が分かる
これが案外一番重要だったりします。
なんども言っていますが、雪山はトレースの有無で難易度は大きく異なります。
北アルプスの名峰もトレースがバッチリであればサクッと登れる時があります。
逆に1,000m級の低山でもノートレースで厳しいラッセルでは手も足も出ない時もあります。
ちょっと嫌な言い方になりますが、「ロープウェイ+トレース完備」の環境下でアルプスの名峰に登っていても、「自分がどの程度の実力を有しているのか」は分かりません。
トレースがあればサクサク登れる健脚者も、ラッセルとなると途端に歩けなくなるというのは珍しい事ではありません。
それはラッセルをする体力の有無だけではなく、ラッセルをするという事はそれに付随して雪山登山の総合力が求められるからです。
とは言え、人気の山では暗い内から沢山の人が登っているので、ノートレースをゲットするのも簡単ではないのですが。
注意点
ルートの選定には気を付けよう
ラッセルをするという事は当然ですがトレースはありません。
それは即ち「ルートファインディング」が必須となるということでもあります。
雪山登山でのルートファインディングは「夏道」と「冬道」を見分けるというだけではありません。
- 沢筋を避けて尾根筋を行く
- 雪庇帯は張り出し方に注意する
- 雪質を判断して、雪崩に警戒する
ただただ雪ガシガシ前に進んで行くだけではなく、常に頭で考えながら前に進む必要があります。
【実例】涸沢岳西尾根での話
2022年の1月に「涸沢岳西尾根」を登っていた時の出来事です。日の出前から行動し、まだ暗い内に蒲田富士の雪庇帯に突入しました。
気が付くと、左上に雪庇が張り出していることに気が付きました。
正しくルートを選定していたつもりでしたが、いつの間にかルートを外れて斜面側に降りてしまっていたのです。
日の出前で気温が低く雪質も安定していたので事なきを得ましたが、正しいルートに復帰するまでは生きた心地がしませんでした。
その時の山行記録はこちら
敗退ラッセルは過酷
敗退時のラッセルは過酷です。
登りのラッセルで敗退となった時には、自分が付けたトレースを辿って下山すればよいので大きな問題はありませんが、
山中で1泊をしている間にドカ雪が降って、下山時にラッセルとなった場合は大変です。
「ラッセルも下りだったら楽だろう」というのは大きな間違いです。
- ドカ雪が降れば雪崩の危険性が高まる
- 下降時に雪深いとバランスを崩しやすい
- 地形が変わっており、道迷いを起こしやすい
また、「敗退ラッセル」と「悪天候」はセットになっている事が多いので、良いことは一つもありません。
翌日以降も悪天候が続く場合は、無理をせずその日の内に下山することをオススメします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ラッセルは滅茶苦茶しんどいですし、滅茶苦茶時間が掛かります。
実際に自分でやってみると「いかにトレースを付けてくれていた人が凄いか」という事が実感できます。
もしも、いつもの雪山登山に何か物足りなさを感じている場合は、是非「ラッセル」をしてみる事をおすすめします。