今シーズンの最後は、兼ねてから気になっていた南岳西尾根へ。
残雪期「南岳 西尾根」/ 2022年5月6日〜8日【敗退】
ルート
2022年5月6日〜8日
1日目:新穂高〜右俣林道〜白出沢〜滝谷〜槍平小屋
2日目:槍平小屋〜マッチ箱〜2750m地点〜槍平小屋
3日目:槍平小屋〜滝谷〜白出沢〜右俣林道〜新穂高
アクセス
4月1日から、新穂高「登山センター」前の県営駐車場が利用できず、深山荘方面の無料駐車場(P5)の利用が必要となります。
5月6日の午前3時頃に到着したが、深山荘方面の無料駐車場(P5)は2割ほどしか埋まっておらず、連休の賑わいは既に過ぎたようだった。
天気
1日目:快晴!
2日目:午前中「晴」、昼「稜線は曇り〜ガス&雨」、夕方「中腹以下も小雨」
3日目:朝はガス、昼前から晴れ
登山道の積雪状況・危険個所
■新穂高〜右俣林道〜白出沢
- 雪は無し。雪解け後間も無い為、右側斜面からの落石などに念の為注意。
■白出沢〜滝谷
- 9割で夏道が出ており、沢筋以外はほとんど雪もなく、滝谷まではアイゼンは不要。滝谷はまだ橋がかかっておらず(冬季の積雪で破損)、渡渉が必要。上部の雪渓も近い内に崩壊思想なので、渡渉の方が安全だと思われる。
■滝谷〜槍平小屋
- 雪がで始めるので、アイゼンの装着が望ましい。夏道が見え隠れするが、雪の状態と進むべき方向を自身で判断しながら進んだ方が良い。
■槍平小屋〜マッチ箱〜2750m地点
- 北側斜面から取り付くが、超急斜面でスリップに要注意。
- 尾根道は猛烈な藪漕ぎでこちらも要注意。
- 尾根を少しそれて斜面沿いにいくと、雪壁&草付きの超急斜面で滑落には十分に注意。
- 2600m〜2750mは歩きやすい尾根沿いに出る。
- 2750m以降は南岳小屋まで、リッジの通過、雪稜の登下降、トラバースなどが連続するので、雪質の判断は勿論のこと、一定上の雪山スキルが必須となる。
※これからの季節はルートの状況が刻一刻と変化するので、最新の情報に注意して下さい。
山行記録
1日目:新穂高〜右俣林道〜白出沢〜滝谷〜槍平小屋
午前6時30分、新穂高登山センターをスタートし、右俣林道を進んでいく。
雪のない右俣林道は歩きやすい。
穂高平小屋へのショートカットは使用しない。人によるだろうが、一定のペースでそのまま林道を進んだほうが身体が楽な気がする。
新穂高から1時間弱で穂高平小屋に到着。
ここで10分ほど休憩。
その後、途中で蒲田富士が見えるが、予想以上に雪がない、、、これでは先が思いやられる。
穂高平小屋から丁度1時間で白出沢に到着。やはり雪がないと早く進める。
白出沢を越えると登山道となるが、滝谷までは沢筋以外は9割が夏道で、快適に進んでいく。
滝谷に到着するが、橋は冬季の積雪で崩壊しており、使用は出来ない。
渡渉か上部の雪渓まで上がるかの二択だが、この時期の雪渓はいつ崩壊するか分からないので、渡渉の方が安全だ。
滝谷以降は雪が出始めるので、時間によってはアイゼンを装着しても良いだろう。
夏道が見え隠れするが、雪が多くなるので、ルート取りは自身で判断して進まないと、枝に苦しめられたり沢に近づき過ぎたりで苦戦させられる。
南岳西尾根の取り付きを観察しにいくので、南沢沿いに詰めていく。
雪解け水が冷たくて美味しい(煮沸前に飲む場合は自己責任で)
南岳西尾根の末端とその周辺を偵察するが、雪が無さ過ぎて尾根の末端からの取り付きは不可能、、、、。
この調子では尾根上での幕営は恐らく不可能なので、この日は槍平小屋に幕営することにする。
南岳西尾根の付近からは10分かからずに、槍平小屋に到着。
適当な場所にテントを設営。
水場とトイレが掘り出されており、非常に快適に過ごすことが出来た。
テントは他に一張のみで、静かな夜が過ぎていった。
2日目:槍平小屋〜マッチ箱〜2750m地点〜槍平小屋
2日目は、テントは槍平にデポして、速攻スタイルに切り替える。
北側の適当な斜面から西尾根に取り付いていく。
急斜面をダブルアックスの四足歩行で攀じっていく。
藪漕ぎと、急斜面が交互に現れる。
朝イチで雪は硬く締まっておりアイゼンは良く効くが、アイゼンの前爪しか刺さらない。
斜度は非常に急でスリップすれば一気に取り付きまで逆戻りだろう。
その後尾根は凄まじい藪漕ぎ&草付きの超急斜面となり、安全の為にロープを出す。
藪漕ぎと急斜面の登攀に苦戦しながらも2600mを越えると、ようやく悪路からも解放される。
先ほどまでの悪路に比べると、このくらいのリッジは可愛いものだ。
マッチ箱は完全に夏道と化しており、そのまま歩いて進む。
なんとか2750mを超えて主稜線を視界に捉えた。
しかしタイムリミットになってしまった。
この日は午後から天気は下り坂の予報。ビバーク装備無しで突っ込むのは無謀というもの。
速攻スタイルで幕営装備を置いてきたことを後悔した。
一番面白くなるところで、撤退を余儀なくされた。
とは言え、下山を開始して稜線は雲に覆われ始めたので、撤退の判断は正しかったのだろう。
素晴らしい景色を目に焼き付けて降りていく。
来た道を戻るが、下山も悪路に苦しめられる。
藪漕ぎ下山に限界を感じて、北側寄りの斜面を懸垂下降を交えて降っていく。
ロープがなければこの斜度の下降は不可能だろう。
その後、雪質を判断して、適当な小ルンゼから南沢の上部に降り立ち、足早に高度を下げていく。
南沢の上部にはいくつものクラックが走っており、油断は禁物だ。
無事に槍平の幕営地まで戻ってきた。
この後程なくして小雨に見舞われた。南岳小屋のライブカメラを確認すると、視界がほぼゼロだったので、やはり撤退の判断に間違いはなかった。
3日目:槍平小屋〜滝谷〜白出沢〜右俣林道〜新穂高
翌朝、早朝は槍平周辺にはガスが立ち込めていたが、日が昇ると次第に晴れていく、今日も気温が上がりそうだ。
綺麗な沢筋を眺めながら帰路に着くが、沢筋に近づき過ぎないように注意しながら降っていく。
滝谷以降は夏道で歩きやすが、次第に疲れから互いに無言のまま白出沢まで戻り、そこから消化試合というには長い林道を歩き通し、新穂高に帰還した。
感想&まとめ
「南岳西尾根」は数年前から気になっていたルートだ。
槍平から南岳にダイレクトに登あげるルートで、夏は南岳新道と呼ばれているが、夏でも非常に急斜面で事故の多い難ルートだ。
雪を纏った南岳西尾根は非常に魅力的で、前々から挑戦したいと思っていたので、今シーズンの雪山登山の締めくくりに挑戦してきたが、雪が余りにもなく、藪漕ぎに苦戦させられ見事に敗退となってしまった。
この時期は、夏道は少し出始めている程度で、まだメインで使用することは出来ず、自身でルートを見定めながら尾根沿いを基本に進むが、尾根上は猛烈な藪が待ち構えており、非常に不愉快だった(時間がかかる)
耐えかねて尾根から少し逸れると、超急斜面の雪壁&草付きとなり、ロープを出す羽目となり、こっちはこっちで時間がかかる。
悪路の強制2択に苦戦を強いられ、一番楽しくなるところで敗退となってしまったが、藪漕ぎから始まり、雪壁登攀に懸垂下降と、フルコンボの充実した山行となった。
この時期は雪がある程度ある時期でないと踏破は難しいと実感した。
しかし忘れてはいけないのいは、南岳に至った後に、中岳を経て飛騨乗越まで抜け切らないといけないという点だ。
雪が多い時期に同ルートを下降するには、非常に危険。
色々な不安要素が多く、難易度の高いルートだが、いつかは成功させたい。