岩と雪の殿堂「剱岳」に早月尾根から登って来ました。今年は例年に類をみない暖冬ですが、小屋から上にはそれなりに積雪があり、しっかりと雪山でした。
2023年の雪山シーズン開幕!
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【山行記録】剱岳・早月尾根/テント泊 2023.11.03〜05
ルート&タイム
2023年11月3日(金)〜11月5日(日)
《1日目》
07時30分:馬場島
08時15分:松尾平(展望台)
15時00分:早月小屋
《2日目》
05時30分:早月小屋
09時30分:剱岳
01時30分:早月小屋
《3日目》
08時00分:早月小屋
13時00分:馬場島
アクセス
馬場島荘前の駐車場に駐車。
連休初日の金曜日の午前5時に到着した時点で、馬場島荘前の駐車場は6割ほどの駐車率でした。
下山日の日曜日の昼前は、キャンプや紅葉見物などで満車となっていました。
※例年12月1日より伊折より先の馬場島へと至る林道が閉鎖されます。
天気
1日目:晴れ
2日目:晴れ〜曇り〜霧〜晴れ
3日目:曇りのち晴れ
登山道の積雪状況・危険個所
馬場島〜早月小屋
2023年11月5日時点では馬場島〜早月小屋間に積雪はほぼありません。
アイゼン・ピッケルなしで通行可能です。
早月小屋〜剱岳
早月小屋より上部は程なくして完全な雪道となります。
アイゼン・ピッケルが必須であることは当然のことながら、この時期は完全に冬季ルートへと移行しておらず、夏道と冬道混ざり合っている為、状況に応じて使い分けが必要となります。
僕たちが登った11月上旬の時点で、雪山初心者が登れる状況ではありません。
個人的な感想では、厳冬期の赤岳や西穂高岳よりも技術的に難しいと思います。
※12月1日以降は富山県警への事前の届出が必要となります。
※積雪状況に関しては、今後の天候の次第で、積雪量が一気に増える事が見込まれます。、最新の気象情報に注意して下さい。
動画はこちら
1日目:馬場島〜松尾平〜早月小屋
馬場島〜松尾平
3連休前も変わらず残業の嵐と、北陸道の片側規制の連続というダブルパンチで、馬場島に到着する頃には朝の5時を過ぎていました。
そのまま出発しても良いのですが、不眠だと確実に途中で、立っていられない程の睡魔に襲われるので、1時間だけ仮眠しました。
馬場島荘の駐車場から登山口へ向かいます。
試練と憧れの石碑に一礼して入山。
さぁ、急登の始まりだ。
今回はワカン以外は完全な雪山装備で来たので、早々に肩が悲鳴をあげる。
身体が冬仕様に慣れない内は辛い。
松尾平〜早月小屋
小一時間で展望台に到着。
松尾平周辺は紅葉が見頃を迎えていた。
黙々と歩き続ける。早月尾根を歩くのは今回で4回目。大体の行程も把握できるようになって、ペース配分も出来ているつもりだが、、、今回は暑い!
上部は雪山になっているので、ウェア類も雪山仕様で来たが、標高の低いところはまだまだ暑く、汗が止まらない。
少しづつ標高を上げていくが、雪がない。
雪がなければ歩きやすいので助かるが、今回は雪から飲み水を作る前提で来ているので、幕営地に雪がなければ非常に困る。
日陰には雪が一部残っている程度で、日向には雪が全くない。
小屋まで残り50m(標高差)を切っても雪がなく、流石に焦った。
がしかし、小屋に到着すれば、ちゃんと雪がありました。
とはいえ、積雪量は少なく砂やら虫やらが非常に多く混ざり込んでおり、難儀しました。
虫の煮汁で作ったうどん。美味しかったです。
周りの山々も、標高の高いところはしっかりと雪がついています。
翌日の水を作り終える頃には、夕日に燃える...とまではいきませんでしたが、剱岳が少し赤く染まっていました。
他のテントの方も写真撮影で外に出られていました。
富山の夜景も綺麗でした。
2日目:早月小屋〜剱岳(往復)
早月小屋〜獅子岩
今日は、夕方から天気が崩れる予報の為、夜明け前から出発。
早月小屋を出てすぐは土の上を空きますが、直ぐに雪道となりました。
登山道は雪で覆われていますが、大部分で夏道を歩く事になります。
太陽が昇り始めました。
山頂が遠くに見えてきました。
下部は雪が少なく岩が露出している所が多いです。
足場も中途半端に雪に埋もれているので、アイゼンを引っ掛けないように注意しましょう。
標高を上げると雪が増えてきました。
平らで広い場所というのも、この辺りが最後になるので休憩出来るポイントがあったら、早めにしておく方が良いです。
サブザックで山頂往復をしていますが、この小さなザックの中に、防寒着やプローブ、ショベル、ツェルト等のエマージェンシー用品が全て入っています。
室堂方向。
ピークが去って、さぞ静かなことでしょう。
雪が少なくMIX帯となっている所が多いです。
日向は暑いですが、日陰は寒いです。
中途半端な気温で、調整が難しいのもこの季節の特徴ですね。
引き続き、標高を上げて行きます。
前には先行パーティーが1組。
所々、前爪で登る所もあります。
久々の前爪登攀に脹脛が悲鳴をあげてます。
本峰が近くなってきました。
上部に近づくほど、危険個所が多くなってくるので、気を引き締めていきます。
獅子岩は直登を選択。
上部は細く、コルへの下降はクライムダウンが必要となりますが、積雪量的に夏道(トラバース)よりもこちらの方が安全だと思いました。
この辺りは個人の技量や経験による所が大きくなるので、トレースだけに頼るのではなく、自分自身で判断しなければいけません。
クライムダウンはある程度の岩登りの経験があれば問題ありませんが、積雪量やメンバーの経験値、装備重量によってはロープによる確保も念頭に入れた方が良いでしょう。
コルから獅子岩を振り返って。
獅子岩〜剱岳
山頂直下のルンゼに向かった登っていきます。
山頂直下は冬道のルンゼから。
取り付きが、少しイヤらしかったです。
ルンゼの上部は雪質も良く、問題なく通過できました。
※積雪量やメンバーの経験値によってはロープによる確保も念頭に入れた方が良いでしょう。
ルンゼを登りきって。
別山尾根との分岐が見えてくれば、山頂はすぐそこです。
剱岳 山頂
祠は雪に埋もれています。
立山・室堂方面はいつみても美しい。
剱岳〜早月小屋
休憩していると急速にガスが湧いてきました。
休憩もそこそこに下山を開始します。
一面ガスに覆われました。
幸い、一過性であること、トレースが明瞭であること、岩が露出していることなどから、問題なく下降する事ができましたが、積雪量が多ければ違った事でしょう。
これからの季節は十分に注意しなければいけません。
帰りも獅子岩は直登して超えて行きます。
獅子岩の頭にて。
雪が少なく岩のリッジを超えていきます。
山の事故は下りに発生する事が多いので、気を引き締めて下りていきます。
行動食と水分は意識的に接種しました。
上部のガスは掛かったままです。
結構、濃いガスです。
早めに抜けきれて良かったです。
無事に早月小屋まで下りてきました。
時刻はまだ昼過ぎなので、馬場島島まで降りようと思えば下りられますが、恐らく松尾平くらいでヘッドライトが必要になるので、早月小屋でもう一泊していく事にします。
(※食料と登山届は2泊3日の予定で提出済み)
3日目:早月小屋〜馬場島
早月小屋〜馬場島
おはようございます。
2日目の夕方から3日目の朝にかけては雨予報でしたが、幸い雨は降らなかったようです。
山頂付近に雲がありますが、ほどなくして高雲へと変わったので、今日山頂に向かっているパーティーも景色を拝めたのではないでしょうか。
テントを撤収しているとヘリが飛んできて、救助活動を行っていました。
無事である事を祈ります。
さぁ、早月小屋から馬場島まで、そこそこ長い道のりです。
立派な立山杉。
黙々と下り、紅葉まっしぐらの松尾平を抜けていきます。
ちょっと足を止めて、紅葉を眺めていると、、、
なにやら「ぶ~ん」っという音がすると思ったら、足元にスズメバチの巣が崩壊した状態で落ちていました。
展望台まで戻ってきました。
ラストスパート
急な下りが現れたら、あと少し。標高差80m下れば登山口です。
毎度、急に現れる登山口の看板。
「試練と憧れ」に無事の下山のお礼をいい、帰路につきました。
感想&まとめ
雪を纏った剱岳。厳しくも美しいその姿に惹かれる登山者達の気持ちが、最近少し分かるようになってきた。積雪期の剱岳に登るのはこれで4回目。今年は剱岳からシーズンインとなりました。
▼1日目
3連休前も変わらず残業の嵐。適当なところで仕事を切り上げて、自宅で最終のパッキングを済ませて車を馬場島へ走らせる頃には10時を回っていた。それに加えて北陸道の片側規制の連続で思うように進まず、馬場島に到着したのは5時を過ぎていた。
駐車場では早いパーティーは出発準備をしていたが、徹夜での早月尾根はキツイ。1時間だけ仮眠を取ってから出発。
試練と憧れの石碑に一礼して入山。今回はワカン以外は完全な雪山装備出来たので、最初の1段目から肩が悲鳴をあげる。
松尾平周辺は紅葉が見頃を迎えていた。
慣れない重荷に悲鳴を上げながらも順調に標高を上げていくが、雪が一向に現れない。小屋まで残り100mを切っても雪がない。
ガスは十分持ってきているが、雪が無ければ水が作れない。水は1日分しかない....
最悪のケースを想像したが、小屋周辺には一定量の雪があり、一安心。
まだまだ積雪が少ない為、雪はゴミが非常に多く混ざっており、濾過には苦労したが保水量が多く時間は短く済んだ。
夕食を終えて18時には就寝。
▼2日目
この日は夕方から天気が崩れる予報であったので、夜明け前にテントを出発。
最初こそ地面が露出していたが、次第に完全な雪道となった。それでも大部分が夏道を辿ることとなり、今年は雪が少ない印象。
昨日に引き続き気温が高く、稜線上も変わらず暑かった。シャツ1枚でも十分だったが、時折吹く風に備えてアウターを羽織らざるを得ず、ベンチレーター全開でも汗ばんでしまった。
獅子岩は上り下り共に直登を選択。
その後のルンゼは、入り口から直接取り付いたが、出だしがイヤらしかった。
その後は雪質も良く問題なく頂上へと至った。
山頂の祠は雪に埋まっている。室堂方面の美しさは、毎回見応え十分で写真撮影に励んでしまうが、帰宅後の選定に困るので今回は少なめに留めておいた。
そんなこんなで休憩していると、ガスが急速に湧来始め、1分もしない内に山頂はガスに包まれてしまった。
山頂直下くらいから怪しかったが、ガスが湧くスピードは恐ろしく早い。
獅子岩の頭なんかはリッジで、こんなところでガスに包まれたら、恐怖でしかない。
風や雪質、積雪量、事前の天気予報など総合的な判断から、ガスの湧く気配を感じながらも山頂へと登ったが、
冬山登山ではこの判断が命取りになる事もあるので、進退の判断は冷静に行いたい所である。
昼過ぎには小屋に到着。テントを撤収して本日中に馬場島まで降りられなくもない時刻だが、松尾平辺りで日が暮れそうなので、もう1泊して下山。
3日目、テントを撤収していると富山市内からヘリが飛んできて、小窓尾根上空でホバリングし、登山者1名を収容していた。詳細は不明だが、無事であったことを祈る。
十分に寝て体力も回復したので、快調に下って、試練と憧れの石碑にお礼を言って帰路に着いた。
今年は5月の早月尾根で雪山シーズンを締めくくり、今回の11月の本山行で雪山インとよいスタートを切ることが出来た。
今年も安全第一で事故なく過ごして行きたい。
※12月1日から翌年5月15日までの期間は、富山県警への事前(20日前まで)の届出が必要となります。