槍穂高連邦は、北アルプスきっての人気の山脈であり、登山家の憧れの山でもある。
その山脈を南の「西穂高岳」からジャンダルムを超えて、そして更に「大キレット」を超えて槍ヶ岳まで繋ぐ「槍穂高連邦完全縦走」。
それを「テント泊」で行うという、ロマンに溢れる山行を実施する上で必要なことなどを記していく。
【解説】「槍穂高連峰・完全縦走」に挑む上で必要なこと《技術・体力》
何より体力ルートである。
技術は勿論だか、やはり体力が求められる。
難所の通過、延々と続くアップダウン、そして緊張感がより一層体力を削って行く。
ミスが即本当の命取り(死)となるこのルートでは、集中力を欠くことが出来ない。
そして、集中力は体力と強く結びついています。
少し偉そうな言い方になりますが、ゲレンデで5.12Cの壁を登れても、長い縦走に耐えられる体力がなければ意味を成しません。
私自身、3日目の大キレットの終わりの南岳の直下の辺りで疲労による集中力の低下を感じ、「あぁ、こういう時に事故が起こるんだ」と実感した。
また西穂~槍まで、連日に辺り連続して縦走する為、日に日に疲労感が溜まって行く。
少しでも疲労感を溜めない為には、基本に乗っ取った歩行法や、1日の終わりのストレッチ、こまめな行動食や水分の摂取などはかかせない。
▼ポイント
技術の向上は勿論だが、日頃から体力トレーニングに重きを置いた方が良い。
確実な岩場の技術
高度なクライミング技術は必要ないが、
「3点支持」「クライムダウン」「トラバース・体重移動」等は確実に行えることが必須。
私が思ったポイントは、全身に疲労感が漂っている状態でも、ブレない技術が必要。
▼ポイント
自宅近郊での岩場での練習と合わせて、やはり北アルプスの岩場での実戦的な予行演習が望ましい。
他人とは適切な距離を取る。
2020年の地震の影響もあり、落石が本当に起こりやすくなっている。
実際に私自身もルート上で、人が死ぬレベルの落石を目撃した。
万が一、落石が起こった際の落下ラインに自分が入ってはいけない。
落石が起こりそうなルート上では、パートナーや他人を含め1人ずつ通過し、通過後に声掛けをする等の対応を小まめに行った方がよい。
▼ポイント
落石を甘く見ないで下さい。私は実際に目の前で目撃しましたが、あれに当たれば死にます。
天気の判断を慎重に
「西穂~奥穂」「奥穂~大キレット~南岳」はやはり天気が良い日の方が良いだろう。
軽装で体力に自信のある人や経験豊富な人であれば、少々の雨やガス等で岩や鎖が濡れていても問題ないかもしれないが、重荷を背負っている場合や、疲労出始めた頃には危険な要素となりうるだろう。
特に垂直に近い岩馬・鎖場・梯子が連続するルートなので、天候判断は慎重に行いたい。
▼ポイント
雨の日でも踏破した人の記録がネットに溢れていますが、自分も大丈夫とは思わない方が良い。
メンバー(パートナー)の技術・体力も伴っていること。
これは2人以上で行く場合であるが、一緒に歩くメンバーの体力・技術も伴っていることを、事前に確認しておく必要がある。
私と相方も今年は成功したが、3年前に奥穂~西穂を歩いた際、事前の山行歴から"行ける"と判断したが、中盤以降に体力切れを起こし、かなり危険な状態で抜けきることとなった。
"西穂~奥穂"も"大キレット"のどちらも一定以上進むと進むも戻るも危険な箇所となり、疲労が現れるのも中程まで来た頃となるだろう。
▼ポイント
パートナーの体力・技術が不確かな場合は、事前に予行演習を行い、足りない場合はしっかりとトレーニングを行いましょう。
「装備・食料」は計画的に
テント泊で長い縦走路を行く場合、装備の重量は自ずと重たくなる。
「食事だけ山荘で取る」という方法も無くはないが、やはり食料も自分で全て用意して行く方がやり甲斐は大きい。
その場合、食料だけでもそれなりの重さになる。
体力に余りある自信がある場合を除き、出来る限り軽量な物を用意したい。
▼私の実際の献立
1日目
朝:下界
昼:西穂ラーメン(これだけは譲れないんです)
夜:パスタ(早茹タイプ、ルーはカルボナーラ味の乾燥タイプ)
2日目
朝:「フリーズドライ(キムチご飯)」
昼:行動食
夜:パスタ(早茹タイプ、ルーはたらこ味の乾燥タイプ)
3日目
朝:「フリーズドライ(赤飯)」
昼:行動食
夜:「インスタントラーメン」+「山荘で買った焼きそば(誘惑に負けた)」
4日目
朝:「フリーズドライ(山菜おこわ)」
昼:行動食
夜:下界
予行演習と事前の準備
岩場の経験値「北アルプス」
- 北アルプスの岩稜帯(西穂・大キレット・剱岳)を複数回経験しておく
- 「西穂〜ジャンダルム〜奥穂」または「奥穂〜大キレット〜南岳」を経験しておく
「どれをどの程度か」というのは、個人の技量やその他の経験値にもよるだろうが、特に「西穂〜奥穂」「大キレット」の何れかの縦走は経験しておく必要はあるだろう。テント泊で「槍穂縦走」を予定している場合は、予行演習も「テント泊」で行うようにしましょう。
▼ポイント
実戦に勝る練習はありません。技術と体力の両方を確認できる。
岩場の経験値「クライミング」
クライミングをやっていなくても、技術的に問題はないが、クライミングを行える環境にある場合は、半年程前から簡単なルートで良いので取り組んでおくと大分と差が生まれるだろう。
▼ポイント
個人的には「5.10」程度で良いので、しっかりと取り組んでおくと効果が見られる様に思う。
体力の増強
西穂からジャンダルム・大キレットを超えて槍ヶ岳までテント泊で縦走する場合、通常3泊4日の行程となります。
相応の体力を事前にしっかりと作り上げておく必要があります。
私は10ヶ月程前から、意識したトレーニングを行っていました。
トレーニング内容
▼山
テント泊(月1回)「飲料水を全て担ぐ」等の負荷のちょい増し。
クライミング(月1〜2回)
※登山歴:5年
私が普段行っている平地のトレーニングはこちら「登山の為のトレーニング」
テント泊に慣れていることは当然です
西穂〜奥穂〜槍ヶ岳をテント泊で行く場合、どの日も行程が長くなりますので早朝出発が欠かせません。
テント内での朝食やテントの撤収に手間取ったり、ましてや寝坊なんて論外です。
▼ポイント
テント泊が普通と言えるくらい経験しておきましょう。
まとめ
今回ご紹介したのは、私の経験から思うことであり、これが全てではありません。
山の体力や技術は、人それぞれ千差万別で、天気などの当日のコンディションによっても大きく異なってきますので、
槍穂高連邦完全縦走は大変で、体力的に厳しいものがありますが、確かな充実感と達成感を与えてくれる山行となることは、間違いありません。
昨年(2020年)は、新型コロナウィルスの感染対策から「テント場」も予約が必須となっている所も多数ありました。
予約と好天の両方を手に入れなければならず、そう言った意味でも更に難易度を上げてしまっていると言えるでしょう。
もしも「槍・穂高完全縦走」を計画されている場合、入念な計画と万全の準備で最高の山行に備えましょう。