約1ヶ月前、敗退となった槍ヶ岳中崎尾根、今季これだけはやり遂げたかった為、最後のチャンスにトライした。
2日間共に天気に恵まれ、好天の中、無事に登頂することが出来た。今回はその山行記録を紹介する。
行程
日程:2019年05月25日(土) ~ 2019年05月26日(日)
1日目、新穂高~白出沢出合~槍平小屋~中崎尾根/奥丸山直下
2日目、中崎尾根/奥丸山直下~千丈乗越~槍ヶ岳~飛騨沢~新穂高)
天気
1日目:快晴、風は粗なし
2日目:快晴、風は粗なし
登山道の状況・危険個所
以下は全て山行当時の状況となります。
【新穂高~滝谷の手前】
沢以外は雪無し、完全夏道。
葡萄谷、チビ谷は、デブリ雪渓が残っており横切る必要がある。雪崩もそうだが、落石にも注意を払う必要あり。
葡萄谷に巨大なクレバスあり、落ちたら大変なことになりそうであった。
【滝谷~槍平】
滝谷の沢は出て来ているが、まだ橋はない為、上部のスノーブリッジから渡るか、適当なところで渡渉が必要。上部の雪渓も強度に不安があった為、渡渉した。ここから槍平までは雪道となる。
【槍平~中崎尾根】
取り付き5m程が崩落しており他の所から登るがかなり藪が出ており難儀する。それ以降は雪道8割の中に夏道が見え隠れする形となる。細いリッジの通過等が数箇所ある。最後の尾根への上がりは、転落に要注意。
【中崎尾根~千丈乗越】
こちらも雪道8割の中に夏道が見え隠れするが、雪庇も随所に残っており、中には崩落間近の大きな物もあり、自身でルートを見ながら進む必要がある。
【千丈乗越~槍ヶ岳山荘】
一部に雪が残っている程度であるが、雪渓を横切る箇所が2~3箇所あるので、面倒がらずに都度アイゼンを装着した方が良い。
【槍の穂先】
粗雪無し
残雪状況は日々変わっていくと思いますが、特に沢筋のデブリ跡の雪渓を通過する時は、状態を確認し、意識しながら通過するよう方がよいでしょう。実際、雪渓の下が空洞になっており、足を置いた瞬間崩れ去る場面もありました。
山行記録
1日目:新穂高~白出沢出合~槍平小屋~中崎尾根/奥丸山直下
【07:01】いつも山に行く前日限り、残業が多く出発が遅れる。仕事の終了後、急ぎ新穂高へ車を走らせ、少しの仮眠の後、身支度を整える。何組かの方が出発の準備をされていた。
駐車場は日陰で思いのほか涼しく、快適な登山となることに期待する。
長い長い林道の始まり。林道を歩き始めて直ぐに暑くなる。涼しいのは日が昇る直前までの様だった。しかし、新緑の隙間から差し込む木漏れ日と、時折吹く涼しい風が心地よい。
牧場は綺麗な草原の様になっていましたが、まだ放牧はされていないようです。
【09:11】林道終了。林道を歩ききり、この日の第一関門クリア。
ここから登山道の始まり。対岸に渡った堤防の上で休憩して栄養補給しておく。
しばらくは雪もなく、雪解け後ですが歩きやすい道が続きます。
【10:47】葡萄谷を通過。葡萄谷、チビ谷、滝谷などは、上部からの落石や雪崩を考慮し、パートナーとは一定の距離を保って通過します。
1日目、沢を雪渓が覆っていますが
2日目、雪渓が崩れて、雪解け水の沢が出ていました。
たった1日で、雪解けが凄く進んでおり、驚きました。
もうすぐ滝谷です。ここまでは沢沿い以外は全て夏道となっていた。
【11:30】滝谷の渡渉箇所。雪渓は崩壊しスノーブリッジは下部に既に無い為、どから渡るか模索します。出来るだけ川幅の狭い所から飛び越えました。足を滑らせたら、びしょ濡れを通り越して、冷たい雪解け水で低体温症になりかねません。
滝谷を見上げる。上部の方では雪が繋がっているようですが、上部の雪渓に関しても、内側がスカスカの可能性もあり強度的に信頼ならないので渡渉した。
滝谷から槍平小屋方面。ここからペースダウンしてしまう。
【13:45】槍平小屋に到着。ここで少し長めの休憩を取る。小屋の傍を流れる沢は既に出ており、それに伴い、中崎尾根への取り付きにも軽い渡渉が必要となった。
中崎尾根に取り付くが、夏道の最下部は雪が全くなく、少し登ると基本は雪道となり、時折、夏道が見え隠れしながら、高度を上げていく。気温が高い影響で雪がシャーベット状のラッセルとなる。
標高を上げると視界が開け、進む中崎尾根~西釜尾根が見えてくる。千丈乗越へ上がる夏道の夏道のグネグネ道が見えていました。
【18時35分】なんとか、日暮れまでにテントの設営を完了する。本来は、2330m付近のテント適地まで進む予定だったが、尾根の手前で本来右にトラバースするところを、誤って奥丸山方向に大きく上がってしまい余分に登ってしまった為、奥丸山の下部にて斜面を切り出し幕営した。
穂高山並みが綺麗に見渡せる。
夕日が綺麗で、この景色にこれまでの苦労が報われる。開けた地形の為、電波も入り翌日の天気予報も十分確認することが出来た。
夕食は、フリーズドライのパエリアと、その後、空いた容器の中に「どん兵衛のリフィル」を入れて食べます。
軽量化とクッカーを油だらけにしたくない理由からこの組み合わせにしました。
恒例の水作りの後、水分をしっかりと補充し、20時30分頃、終身。
2日目、中崎尾根/奥丸山直下~千丈乗越~槍ヶ岳~飛騨沢~新穂高
【05:54】テントを撤収し出発。
雪庇も規模は小さいもののまだ多く残っており、トレースも無い為、自身でルートを見ながら進む。リッジの通過や登下降、ルートの判断等、雪山の醍醐味が詰まっており、非常に楽しいところであった。
所謂、テント適地。確かに広く。大きなテントもたくさん張れるスペースがあり、快適そうだ。
まだもうしばらくアップダウンが続きます。
千丈乗越へは途中から夏道が出ていたので、そこから上がりました。
中崎尾根を振り返って
笠~双六の稜線~西鎌尾根。
山荘が見えても、なかなか近づかない。
途中、ルートではない岩がガレガレのところに入り込んでしまった時は焦った。
自分の体重で周りの一帯の石全体が動いているのが分かり、少し動くだけでガラガラと崩れ落ち、一帯から抜け出すのに非常に難儀した。
また、この辺りから雪が出たり消えたりを繰り返すが、面倒がらずにアイゼンの着脱を混ぜる方が結果的に早く歩くことが出来た。
この雪を横切れば、山荘につきます
【13:00】槍ヶ岳山荘に到着。下山の時刻を考え、穂先は諦める。
飛騨乗越。さぁ、ここからはひたすら下るのみ。
飛騨沢を一気に駆け下りていく。
【17:07】滝谷の雪解けは前日よりも更に進んでおり、幕営を装備を持って、飛び越えることは不可能で、渡渉の際に少し靴を濡らしてしまった。しかし、流石ゴアテックス、靴を脱ぐまで濡れによる不快感は全く感じなかった。(濡れていたことは靴を脱いで初めて気が付いた。)
【18:54】日暮れまでに林道に到着。長い林道を歩き、帰路へとついた。
感想
自身の目標である厳冬期槍ヶ岳の冬季ルートである中崎尾根。
約1ヶ月前敗退となったことを踏まえ、入念な準備と計画を立てて挑み、2日間共に天気に恵まれたことも後押しとなり、無事に登頂することが出来た
前回の山行時には、自身の体力不足を痛感していた為、体力トレーニングを見直し取り組んできた。
まだあれから1ヶ月程なので、効果が現れるのはまだもう少し先であるが、意識の面で大きな変化があった。
しかし、時間がかかり過ぎていることや、下山時刻を考えると、反省点が多くあることは明白だが、今回無事に山行を終えられたことに、素直に喜びたい。
ウェアやギアのメンテナンスをし、夏山シーズンまで、体力トレーニングに勤しんでいこうと思う。