冬が寒いのは至極当たり前のことですが、厳冬期の北アルプスや八ヶ岳の寒さときたら、それは格別なものとなり、マイナス15度とかは当たり前で、寒い時はマイナス28度にもなることもあります。
そこに風が吹けば、体感温度はとんでもないことになるので、とりわけ稜線での行動を視野に入れた厳冬期の雪山登山を行う場合、相応の寒さへの対応力が必要になってきます。
私自身は、もとから寒さには強い方だったので、とくに問題はなかったのですが、パートナーである妻が極端に寒さに弱かったので、厳冬期の北アルプスの稜線に対応出来るようになった過程をもとに、寒さに慣れる為に有効な対策方法を紹介していきます。
日常的に心掛けること
手が冷たいことに慣れる。
- 「冬も手袋はしない。」
- 「手洗いや食器洗いも、お湯は使用せず真水で洗う。」
【注意】
フィジカル、メンタルともに効果がありましたが、冷気と乾燥で手が非常に荒れることがあるので、保湿クリーム等はしっかりと塗りましょう。
筋肉を付けて、基礎代謝を上げる
「女性よりも男性の方が耐寒能力が高いのは、筋肉量による基礎代謝の違い」だと何かの記事で読んだことがあります。
実際、私のパートナーも、体力向上の為に筋トレを行うようになってから、寒さへ徐々に慣れていきました。
お風呂(湯舟)にしっかりと入って身体をケアする
足の指に”しもやけ”等が出来てしまった場合は、しっかりとお湯に浸かることで症状を改善することが出来ます。
予防も大事ですが、下山後のアフターケアをしっかりとしておき、次の山行に響かないようにしておくことが重要です。
これはNG!やってはいけない対策
冬山の寒さに耐える為に、下界でも寒さに慣れておくことは大切なことですが、就寝時だけは別です。
私も以前、11月に入っても「夏のペラペラのタオルケット一枚で寝る」という寒さトレーニングをしていました。
結局体調を崩しかけて辞めました。
過剰な暖房器具の使用はよくありませんが、寝具をすり減らしたり、部屋の中を外気と同じ温度にしたりなどの無理なトレーニングは免疫力の低下で体調を崩す要因となるので、辞めておいた方が無難でしょう。
山の中で心掛けること
食事をしっかりとって、体温を上げる
内臓を温めると、身体全体の体温が上がり、寒さに負けにくくなります。
山の中に入ると食欲が減退することもありますが、無理をし過ぎない範囲で、しっかりと食事を取るようにしましょう。
【注意】
唐辛子系の食物は一時的に汗をかくほど体温が上がりますが、その後急激に体温が下がって、汗冷えをするので、逆効果です。
一定のペースで歩き続ける
気温がマイナスの世界でも歩いている時は暑く感じることもあります。
もしも、あまりにもゆっくりとしか歩けていない場合、体温も大して上がらず、寒さをそのまま感じてしまうでしょう。
体力をつけて一定のペースで歩くことが出来ると、体温も上がり寒さに負けないようになります。
意識を高くもつ。
根性論は好きではありませんが、ある程度は覚悟が必要です。
- 登山口の車から出る時
- 早朝シュラフから出る時
- テントの外でギリギリまで着ていた防寒着を脱ぐ時
- 稜線に出て強い風を身体に受けた時
これらの最初の一瞬は寒さには自身のある私も気が、気が重くなる時があります。
そんな時は、「なんの為に自宅から遥々お金を掛けて、山に来たのか」を思い出して奮い立たせています。
衣類のウェアリングを見直してみる
「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」「アウター」
3~4レイヤーの基本に乗っ取って衣類を調整していても、それでも寒い。
そんな時は、ベースレイヤーの更に下に、アンダーウェアを追加してみる方法をおすすめします。
アンダーウェアはメッシュ生地になっており、身体とベースレイヤーとの間に、僅かな隙間を作りだすことで、身体から出た汗が地肌に直接つかないことで、発汗による汗冷えを軽減するものです。
また、それ以外にも、若干保温効果も上がるので、総合的に寒さ対策に有効です。
基本に忠実になる
山に入るとちょっとしたことが面倒になったり、億劫になったりしてしまいます。
例えば、
【行動】ザックを下ろすのが面倒で、水分摂取が足りていない。
【結果】水分不足は血液の循環が悪くなり、代謝の低下・体温の低下を誘発します。
【対策】こまめな水分摂取を心掛けましょう。
【行動】動き始めの寒さに負けて、つい厚着のまま歩きだした
【結果】汗冷えしてしまい、余計に寒い
【対策】歩き始めは少し寒いくらいで。
【行動】アプローチの手袋のまま稜線に上がった
【結果】手袋が汗冷えしており、手が冷たい
【対策】森林限界を超えるまでに、手袋の交換。
【行動】1日目の靴下を何もせずそのまま2日目の履き続けたり....
【結果】汗を含んだ靴下が、指の熱を奪ってしまう。
【対策】テントに入ったら靴下を履き替えて、脱いだ靴下は自身の服の中に入れて温める。
山の基本は、確かな裏付けがあってのことばかりですので、基本を疎かにしてはいけません。
”カイロ”の使用は計画的に
手袋や靴の中に”カイロ”を入れるというのは、操作性や汗冷えの観点からあまり良くありません。
寒いからと安易にカイロに頼るのではなく、まずは寒さに対応する為の対策を講じて、それでも寒い時にカイロを用いるほうがいいと思います。
またカイロを使用する場合も、手袋や靴の中に入れるのではなく、中間着の胸ポケットに忍ばせる程度の方が良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
北アルプスの寒さは1級品の為、寒さに弱い人の場合、克服するのには数ヶ月~年単位で時間が必要かもしれません。
「基本」と「努力」この2つが大事となりますので、長い目で見て、じっくりと取り組んでいきましょう。