2023年2月4日~5日、西穂高岳の冬季バリエーションルートである「西尾根」に登ってきました。
この記事では2日目の記録をご紹介します。
厳冬期 西穂高岳 西尾根/ 2023年2月4日〜5日 1日目
動画
ルート
2023年2月4日〜5日
1日目:新穂高〜右俣林道〜穂高平小屋〜西尾根2300m小ピーク
2日目:西尾根2300m小ピーク~ジャンクションピーク~2740mピーク~新穂高
アクセス
冬季期間は、新穂高「登山センター」前の県営駐車場が利用できます。
路面状況
登山口となる新穂高の周辺道路は積雪・凍結がある為、冬用タイヤを装着する事は勿論ですが、平湯峠などはマイナス12度ほどにまで冷え込む事もある為、安全運転で通行するようにしましょう。
天気
1日目:雪!
2日目:快晴!
登山道の積雪状況・危険個所
第一岩峰 周辺
基本的には第一岩峰は左から巻く方が良さそう。ここは雪の量や質により難易度が大きく前後する場所だと思われる。
降雪直後は急斜面のラッセルとなるので、突破には少し苦労する印象。
逆に雪が多くトレースがあればそれ程難しくないでしょうが、雪の量が少なかったり、雪が固く締まっている場合は、難易度が上がるでしょう。いずれにしてもここを下る場合はロープによる安全確保が望ましい印象です。
ジャンクションピーク 周辺
一部斜度の高い雪稜を登る所や、雪庇の張り出しがあり、視界が効いていれば大きな問題はないが、視界不良の際は、子尾根に迷い込んだり、雪庇を踏み抜く危険性があるので十分に注意しなければいけない。
雪庇はコルにも発達している事があるので、休憩の場所はこの点に留意して選ぶこと。
補足:第二岩峰 手前の小ピーク
第二岩峰の手前にある小ピークは、「巻く」か「超える」かのいずれかとなりますが、トレースの有無に関わらず、雪質や技術、雪庇の状態など総合的に判断しなければいけません。
※これからの季節はルートの状況が刻一刻と変化するので、最新の情報に注意して下さい。
【山行記録】2日目:西尾根2300m小ピーク~ジャンクションピーク~2740mピーク~新穂高
2300m小ピーク~第一岩峰
2300m小ピークに設営したテントを撤収して出発する。
30分程で2400m小ピークに到着。
木々の隙間から稜線が綺麗に見えている。
2400m小ピークからコルは直ぐそこ。30秒くらいで到着する。
コルからは第一岩峰へは急騰から始まる。
これは定石通りに左から巻いていく。
私達は先行者のトレースに助けられて順調に登っていく事が出来ましたが、
降雪直後は急斜面のラッセルとなるので、相当大変だったと思われます。
本当にありがとうございます。
逆に雪の量が少なかったり、雪が固く締まっている場合は、難易度が上がるでしょう。
いずれにしてもここを下る場合はロープによる安全確保が望ましい印象です。
第一岩峰~ジャンクションピーク
稜線に上がった所で先行者パーティーに追いついた。
丁度休憩されていたので、先を行かせて貰うが雪が深い!
場所によっては、雪が顔の高さまで迫ってくるので、ピッケルで雪を崩しながら進んでいく。
この雪の量をここまでラッセルして頂いた事に、改めて感謝。
やはりラッセルは自分でやらないと、その大変さは分からないものである。
少しずつ高度を上げていくと、視界が大きく開けた。
FIXロープのある場所へと突入する。
写真で見ると、何てことなさそうに見えるが、トレースが無いと足場が不安定な事は勿論だが、「どこを歩くべきなのか」という事を凄く考えさせられる。
FIXロープは出ており、積極的に使用して、スピーディーに登っていく。
(補助的に使用するのであり、体重を預ける等はしてはいけません。いつ切れるか分からないという前提で使用するようにしましょう。)
西穂の主稜線には山荘からの登山者の姿が沢山見えていた。
振り返れば笠ヶ岳の雄姿が拝めますが、、、
ラッセルが辛いのでそれどころではありません!
空身だったらもう少し楽なんでしょうが、テント泊の重量が相まって、吹き溜まりは腰まで埋まるので、なかなか前に進みません。
山頂が見えてきました。
この角度から見ると、少しの様に見えますが、騙されてはいけません。まだまだあります。
雪の少ない急斜面でも基本はラッセルです。
ジャンクションピークの手前で先程のパーティーが追いついて来られて、凄まじいスピードでラッセルして行かれました。
後姿を見ながら、レベルの違いを痛感する、、、。
ジャンクションピーク直下は急斜面ですが、落ち着いて登れば問題ありません。
ジャンクションピークから先を眺める。
トラバース。ここも落ち着いて通行すれば問題ありませんが、視界不良の際は雪庇に注意。
ジャンクションピークで交差する北西尾根。雪庇がエグイです。
気持ちの良い高度感!
天気も最高です!
2740mピーク
2740mピークに到着すると、西穂高岳の雄姿を拝むことが出来る。
この角度からの西穂は西尾根からしか見ることが出来ない。
山頂をアップで撮影。
あそこに立ちたかったが、時刻は既に11時30分を回っている。
今回は1泊2日の計画なので、今日中に必ず下山しないといない。
ロープウェイの最終時刻が16時15分なので、余裕を持って13時15分には西穂の山頂に立たないといけないが、、、
(先行パーティーは既に引き返していった。)
2740mピークから第二岩峰の手前のピークに向けて下降してみたが、吹き溜まりという事もあり腰まで埋まった。
無理だ。
下山しよう。
ジャンダルム
槍ヶ岳
笠ヶ岳
乗鞍岳
周辺の山々の雄姿をひとしきり眺めたので、下山を開始する。
下山も気は抜けない。
「事故の大半は下山時に発生している」
基本的な事過ぎて意識から遠のいてしまいがちだが、互いに言葉を掛け合って、意識を常に高く持つように心掛けた。
下山もアップダウンがある。
樹林帯に入るまでは気が抜けない。
西穂の山頂を眺めていると悔しい思いがこみ上げてくるが、厳冬期の真っ白なこの姿を見られただけでも幸せだ。
また来よう。それまでに全装でガシガシ先頭切ってラッセル出来ようにパワーアップしておこう。
第一岩峰は懸垂下降で安全に下りる。
時間は掛かるが、安全が一番。惜しみなく出せるように練習を重ねておきたい。
最後に西穂に別れを告げる。
また来るよ。
樹林帯を黙々と下る。
旧ボッカ道へと通じる林道だろうか。
あそこからの下山も出来るようになっていると選択肢が増えるのだが、未開拓の地なので、また夏にでも調査しておこう。
夕焼けの中、樹林帯を下る。
アーベンの燃える姿も良いが、それが終わった静寂も美しい。
急がずにドンドン高度を下げていく。
残り300mほどで日が完全に沈んだ。
今回はこれも計画の範囲内だったが、やはり日暮れ迄には下りきらなければいけない。
この日は満月でヘッドライト無しでも歩けるくらいだった。
穂高平小屋から涸沢岳が綺麗に見えていた。
雪煙が月明かりに照らされて輝いていた。
林道を1時間ほど歩いて、無事に下山した。
林道の終わりを告げる「P」の看板を目にした時の安堵感....。分かる人は居られますか?
毎度この看板を見ると、「泊まりてぇ~!!」となるが、明日も仕事なので素通り
そもそも予算的にちょっと無理です。
新穂高登山センターに到着して下山完了。
今回も無事に降りてきました。
まとめ&感想
昨年4月に西尾根から西穂の山頂に登ったので、今シーズンは厳冬期の登頂を目標にしていた。
▼Day1
先週末の天気予報は、土曜は午後から荒れ模様の天気だが、日曜は晴となっていた。
新穂高を出発して程なくして雪。
予想よりも大分早く降り始めた雪にテンションが下がる。
その後、西尾根1900mを超えた辺りから天候はますます悪化してくるが、明日の好天を期待して前に進む。
先行者のトレースに助けられて2300mの小ピークまで順調に進むと、先行者の方のテントが2張あり、トレースはここで途切れていた。
せめてものお礼にと、2400mのコルまでトレースを伸ばす為に斜面に取り付くが、雪が多くて思うように進めない。
もがいていると目の前にクラックが走った。
どうやら新雪の下30cm程の場所に氷の層があるようだ。
「これで上行って大丈夫なのか…」と2人で話し合うが、そうこうしている間にも雪は積もり続ける。
自分達も大人しく2300m地点で幕営し、靴も履いたままテントの中に逃げ込んだ。
▼Day2
夜中トイレに起きると星が出ていた。
昨晩、夜寝る時点ではまだ雪が降っていたので、好転の兆しに一安心。
テントを撤収する頃には先行パーティは出発して行った。
森林限界を超えたところで先行パーティーに追いつく。
先頭を変わりラッセルするが、場所によっては雪が顔の高さまで迫ってくる。
結局、ほどなくして再度追いついて来られて、凄まじいスピードでラッセルしていかれる後ろを姿を見ながら、自分達の力の無さを痛感する。
第二岩峰を視界に捉えた所で先行パーティは引き返して行かれた。
自分達はもう少し進むべく第二岩峰手前のピークに向けて下降するが、腰まで埋まり少し焦る。
時刻は既に11時30分を回っている。
ロープウェイの最終に間に合わせるには13時には山頂に立たないといけない、、、。
無理だ。
また来よう。
来た道を引き返して下山した。
▼総括
ここに来るのは去年の4月以来で、まだ2回目だが、歩いていてとても楽しい。
稜線に上がれば、西穂の主稜線を拝む事が出来て、
もう少し頑張って高度を上げれば、槍〜ジャンダルムの大パノラマが広がっている。
勿論、そこには厳しさもあって、
冬の穂高を存分に味合わせてくれる好ルートだ。
偉そうな事を言っておきながら、厳冬期の穂高は甘くなかった。
見事に跳ね除けられた。
また、成長して戻ってきたいと思います。