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【解説】登山者憧れのジャンダルム「難易度とルートについて」

槍穂高完全縦走1日目(西穂~ジャンダルム~奥穂)、33

「ジャンダルム」...奥穂高岳の南西にそびえ立つ3152mの岩峰。

畏怖の念すら抱くその名は、登山者の憧れの場所ではないでしょうか。

今回は「ジャンダルム」を登る上での注意点をご紹介したいと思います。

【登山者憧れ】ジャンダルムについて「難易度やアプローチ方法について」

ジャンダルムって?

槍穂高完全縦走2日目(西穂~ジャンダルム~奥穂)

ジャンダルムとは、北アルプス「穂高連峰」の奥穂高岳の隣にあるドーム型の岩稜で、その由来はフランス語の「憲兵/gens d'armes」のからきているとされており、奥穂高岳の前衛峰としてその名がつけられたと言われています。

 

最も有名なのは、今回ご紹介する西穂高岳~奥穂高岳の縦走路の途中にあるジャンダルムですが、それ以外にも赤岳ジャンダルム群(北アルプス/硫黄尾根)や、剱岳(北アルプス/2,999m)や鳥海山(東方地方/2,236m)にもジャンダルムと呼ばれる岩峰があります。

 

ジャンダルムの難易度とアプローチ方法

アプローチ方法

ジャンダルムへの主なアプローチ方法は以下の通りとなります。

  • 奥穂高岳から(所用時間:穂高岳山荘から1時間30分)
  • 西穂高岳から(所用時間:西穂山荘から5時間55分)
  • 天狗沢(廃道/通行困難)
  • コブ尾根(バリエーションルート)
  • 飛騨尾根(バリエーションルート)

天狗沢・コブ尾根・飛騨尾根に関してはバリエーションルート扱いとなる為、ここでは割愛します。

 

ジャンダルムまでのルート上の注意点

ジャンダルムの岩峰そのものの自体の難易度は決して高くありません。基本的な3点支持の岩登りが出来れば殆どの登山者が登る事が出来るでしょう。

問題はジャンダルムに至るまでのアプローチが難しいと言えます。

 

▼西穂高岳からの注意点

槍穂高完全縦走2日目(西穂~ジャンダルム~奥穂)

≪ジャンダルムまで≫
西穂方面からジャンダルムへと至る場合、西穂山荘からジャンダルムまで標準コースタイムで5時間55分。それまでに、数々の難所を超えてこなければいけません。ここでは細かな解説は割愛しますが、ジャンダルムに到着するまでに、十分な技術と体力が求められます。

≪ジャンダルム≫
西穂側からきた場合は、ジャンダルムの南側からそのまま登りますが、技術的な難易度は高くありませんので、基本的な3点支持に気を付ければ問題ないでしょう。

その後、奥穂高岳方面へと抜ける際に、ジャンダルムからそのまま進行方向に下降するにはロープによる懸垂下降が必要となるので、来た道をジャンダルム基部まで戻り、信州側をトラバースします。このトラバースも落ち着いて通過すれば問題ありませんが、一部身体が宙に投げ出されるような(感覚の)場所があるので少し緊張します。トラバース中の離合は不可能なので、注意が必要です。

≪ロバの耳≫
西穂側からの場合、ロバの耳は下降がメインとなり、注意が必要です。鎖場も随所に配置されていますが、「鎖の長さが足りない」「どうしてここに無いの?」という感じで、思い切りの良さが必要な場面もあり結構怖いです。気を引き締めて通過しましょう。

ロバの耳を通過してコルに降り立つと、そこからウマノセへと向かって登って行きます。技術的な難しさはありませんが、上部からの落石には警戒が必要です。

≪ウマノセ≫
西穂側からの場合は、ウマノセは登りになる為、逆方向からに比べると難易度は少し下がります。とはいえ、切れ落ちた絶壁を登る為、細心の注意が必要です。万が一にも足を滑らせれば命は無いでしょう。

≪奥穂高岳から穂高岳山荘≫
これまで縦走路に比べれば技術的難易度は下がったように感じてしまいますが、油断は禁物。実は山荘直下で事故が多発しています。穂高岳山荘といえば、滑落防止ネットが設置されている事で有名ですが、これまでの疲労とピークを超えて山荘が視界に入った事による安心感が緊張の糸が切れて事故を誘発するパターンです。

 

 

▼奥穂高岳からの注意点

槍穂高完全縦走2日目(西穂~ジャンダルム~奥穂)

≪奥穂高岳≫
穂高岳山荘から奥穂高岳までの登りの難易度は、それ程高くありませんが、下降組との離合、朝の冷え込みなどには注意が必要です。

≪馬ノ背≫
奥穂側からの場面、ウマノセは下りとなり、登りよりも難易度が高いです。身体が宙に投げ出された状態(の様な感覚)でのクライムダウンが暫く続く為、緊張は必至です。一歩足を踏み出して「怖い!(無理!)」と感じた場合は、そのまま登り返して引き返すという判断も必要です。

その後、ロバーの耳の起点となるコルへと降り立つまで傾斜のきつい長い下りとなりますが、落石が起こりやすい為、慎重な足運びが必要です。

≪ロバの耳≫
奥穂側からの場面、ロバの耳は登りとなり、下りに比べると難易度は少し下がりますが、ステップも狭く下降組との離合は注意が必要です。

≪ジャンダルム≫
奥穂側からの場合は、「北側を直登」か「信州側をトラバースして南側から登る」の2つの選択肢があります。「北側を直登する」方がコースタイムは短縮できますが、直登を攻略する為にはクライミング的な岩登り技術と、ルートを見定める目が必要となり、見誤ると装備重量も相まって進退窮まる可能性があるので、素直に南側から登りましょう。

≪その後:往復または西穂へ縦走≫

これらを往復する場合は、難所の通過が上り下り逆となるので、上述の西穂側からのポイントをご確認下さい。

そのまま西穂高岳へと抜ける場合、次の安全圏は独標通過以降となり、標準コースタイムで約4時間となり、体力や技術力で大幅に変動します。ここが最後の引き返すポイントとなるので、慎重な判断をしましょう。

 

 

ジャンダルムを登る為に必要な技術

槍穂高完全縦走2日目(西穂~ジャンダルム~奥穂)

既にご存知の通り、ジャンダルムは西穂高岳~奥穂高岳の縦走路の中にあり、ジャンダル攻略の鍵は、そもそもがこの縦走路を走破できるだけの「技術・体力・経験」が備わっているかにかかっています。

 

一般登山道として最高ランクに位置する「西奥縦走」の比較対象として上がられる「大キレット」や「剱岳」がありますが、求められる岩登り技術単体でいうならば、槍の穂先、剱岳、奥穂などと大差はないでしょう。しかし、行程の長さや安全圏までの距離を考えると、やはり西奥縦走が圧倒的に難しいでしょう。

≪技術≫
簡単なクライミングゲレンデやボルダリングで基本的な岩登り技術を身に付けて、最低でも3点支持が呼吸と同じくらい自然に行えるようになりましょう。また、このルートではクライムダウンが頻発するので、下降の練習も行うことも大切です。登りは勢いで行けるところがありますが、下りに関しては、実際の山行を想定した練習をしているかどうかで大きな差が生れます。

≪体力≫
体力は天候(紫外線や強風)や緊張により、想像以上に奪われていきます。また、ルートの特性上、離合が困難な場所が多く、順番待ちによるタイムロスも念頭に置かなければいけません。
これらの問題を解決する為にも、低山や中級山岳に足繫く通って基礎的な体力をつけることは勿論ですが、定期的に当日よりも重い装備で縦走登山等を行いコースタイム通り(または以下)に歩けるようになっておく必要があります。

≪実践≫
実践はとても大切です。1,000m級の山と3,000m級の高山では空気や風、岩肌など全てが違います。南八ヶ岳縦走、剱岳、大キレットなど実際の山行に近い環境でデモンストレーションを実施しましょう。

 

など、順を追って技術や体力をつけて行くのがセオリーではないかと思います。

 

 

まとめ

槍穂高完全縦走2日目(西穂~ジャンダルム~奥穂)

いかがでしたでしょうか。

登山者の憧れの存在である「ジャンダル」

実際にはそこに至るまでの過程の方が圧倒的に難しく、穂高岳山荘からジャンダルの往復でも、縦走路の通過点でも、ジャンダルから安全圏から遠く離れた場所にあります。

だからこそジャンダルの山頂に立った時は、とても嬉しいです。

 

ジャンダルム(西奥縦走)に必要な技術・体力の目安

  • 技術
    ・基本的な3点支持が問題なくスムーズに行えること。
    ・槍ヶ岳・剱岳・大キレット等の岩稜コースを問題なく通過できること。
  • 体力
    当日よりも重い重量で、西奥縦走路と同じ距離の山行をコースタイム以下で歩けること。

 

最後に、宮田八郎さんのブログ(ぼちぼちいこか)で西穂~奥穂の縦走路について解説されている記事がありますので、ご紹介します。

https://bochiiko8.blog.fc2.com/blog-entry-409.html

読む価値のある内容です。

 

それではまたお会いしましょう。

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