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【解説】槍ヶ岳 飛騨沢ルートは混在回避におすすめ

槍ヶ岳へと至るメインルートの一つである「飛騨沢ルート」をご紹介したいと思います。

 

【解説】槍ヶ岳 飛騨沢ルートは混在回避におすすめ

槍ヶ岳飛騨ルートとは

槍ヶ岳飛騨ルートは岐阜県側から槍ヶ岳へと至るルートで、槍ヶ岳へ最短で登ることができます。

メジャーな長野県側の上高地からのルートに比べて人の混在も少なく、静かな山歩きを楽しみたい人にはおすすめです。

 

コースタイム

新穂高温泉(標高1,090m)
↑ 1時間35分
↓ 2時間05分
白出沢出合(標高1,542m)
↑1時間
↓ 1時間30分
滝谷出合 (標高1,800m)
↑ 30分
↓ 1時間
槍平小屋 (標高1,990m)
↑ 1時間05分
↓ 2時間30分
千丈分岐点(標高2,550m)

飛騨乗越経由
千丈分岐点(標高2,550m)
↑ 1時間05分
↓ 2時間15分
飛騨乗越 (標高3,010m)
↑ 12分
↓ 20分
槍ヶ岳山荘(標高3,078m)

千丈沢乗越経由
千丈分岐点(標高2,550m)
↑ 20分
↓ 40分
千丈沢乗越 (標高2,716m)
↑ 50分
↓ 1時間25分
槍ヶ岳山荘(標高3,078m)

槍ヶ岳山荘(標高3,078m)
↑ 30分
↓ 20分
槍ヶ岳山頂(標高3,179m)

≪登り≫
千丈乗越経由:9時間14分
飛騨乗越経由:9時間52分

≪下り≫
千丈乗越経由:5時間58分
飛騨乗越経由:6時間18分

 

 

 

アクセス

槍ヶ岳飛騨ルートの登山口は新穂高温泉となります。

駐車場は主に、新穂高側と鍋平側に分かれており、有料無料を合わせると約770台の駐車が可能となっています。

 

駐車場(有料

【P3】新穂高第2駐車場
料金:1200円/24時間
予約:先着順
台数:93台

【P4】深山登山者用駐車場
料金:2600円/1日
予約:必須(予約サイトはこちら
台数:41台

【P7】新穂高ロープウェイ鍋平登山者用 駐車場
料金:500円/12時間
予約:必須(予約サイトはこちら
台数:110台

駐車場(無料

【P5】新穂高第3駐車場
料金:無料
予約:先着順
台数:215台

【P8】鍋平登山者用駐車場
料金:無料
予約:先着順
台数:150台

【P10】鍋平登山者臨時駐車場
料金:無料
予約:先着順
台数:不明

【P9】鍋平園地駐車場
料金:無料
予約:先着順
台数:122台

【P11】北アルプス展望園地駐車場
料金:無料
予約:先着順
台数:40台

 

 

飛騨沢ルートのポイントや注意点

夏のハイシーズンは駐車場の確保が困難

槍ヶ岳飛騨ルートの登山口である新穂高温泉は、槍ヶ岳だけはなく、笠ヶ岳・双六岳・西穂高岳などへの玄関口でもある為、夏のハイシーズン中は物凄い数の登山者が訪れる為、全て満車になることも珍しくありまん。

特に週末は新穂高側の駐車場はかなり早いタイミングで満車となる為、最初から鍋平方面の駐車場に停めることを想定した登山計画が必要となります。

※好天の週末や連休は鍋平方面すら満車になることがある為、十分な注意が必要です。

 

夏山期間中に駐車場の混在を避けたい場合は、一部に残雪残るの7月の頭までか、気温の下がり始める9月の連休以降を狙うと駐車場の混在に悩まされることは無いでしょう。

 

 

大雨の時は下山が困難

槍穂高完全縦走4日目(南岳~大喰岳~槍ヶ岳~槍平~新穂)

槍ヶ岳飛騨ルートでは、多くの沢筋を横断するコースとなります。

  • 白出沢
  • 葡萄谷
  • 名無沢
  • チビ谷
  • 滝谷
  • 南沢

滝谷は普段から水量の多い沢ですが、大雨や台風の際には恐ろしい程の増水となり、到底渡れる状況では無くなります。

また、滝谷以外の沢は普段は涸れ沢ですが、大雨時には通行が不可能となるほどに増水する事もある為、天候判断には十分に注意しなければいけません。

 

滝谷の増水に関しては槍平小屋から情報が配信されていますので、チェックしておきましょう。

 

増水時の対応としては、雨が止む方向へと向かう場合は暫く様子を見るという選択肢もありますが、天候の回復が見込めない場合は、他の選択肢を考えなければいけません。

≪入山時≫

  • 引き返す。

≪下山時≫

  1. 引き返して槍平小屋で一泊
  2. 飛騨乗越まで登り返して上高地へ下山
  3. 奥丸山へ登り左俣へ下山する

「2の上高地への下山」に関しては、判断する時点で相当な時間が余っていないと当日中の下山完了は不可能です。滝谷出合から上高地まで約13時間かかります。

「3の奥丸山から左俣への下山」に関しても、入山者があまりいないコースを大雨の中を通行するというリスクを理解しておかなければいけません。

 

実際に滝谷の増水時に無理な渡渉しようとして死亡する事故は過去に何度も発生しています。

増水するほどの天候悪化は天気予報で事前に察知できる為、無理な計画はやめましょう。

 

 

途中の営業小屋は槍平小屋のみ

槍穂高完全縦走4日目(南岳~大喰岳~槍ヶ岳~槍平~新穂)

長野県側の上高地ルートでは、槍ヶ岳の山頂までに数多くの山小屋があり、本格的な登山道以降で宿泊可能な山小屋としては、槍沢ロッジと殺生ヒュッテの2つがあります。

それに対して、飛騨沢ルートでは、槍平小屋のみとなります。

槍平小屋が新穂高登山口から槍ヶ岳山荘までの丁度半分の距離となっているので、天候や体力を考慮して計画を立てましょう。

 

槍ヶ岳登山でテントは槍平か槍ヶ岳山荘かどちらが良いか。

槍ヶ岳山荘にテント泊で行く場合、迷うのが中間地点の槍平小屋にするか、槍ヶ岳直下の槍ヶ岳山荘まで足を延ばすか。

3,000mの稜線でのテント泊は素晴らしいものがありますが、一番の問題となるのが「混在」です。

槍ヶ岳山荘のテント場は合計39張で先着順となり、満員で設営場所がない場合は、殺生ヒュッテまで降りる必要があります(※下り30分、登り50分)ので、注意が必要です。

槍平小屋と槍ヶ岳山荘の両方でテントを張った事がありますが、どちらも良いテント場です。

槍平小屋は人も多くはないので、静かで水場もトイレも近く、周りが森で囲まれているので、天気が良ければ星空も綺麗に見る事が出来ます。

槍ヶ岳山荘は何と言っても3,000mの高地で、天気が良ければ絶景を拝むことが出来ます。但し、テント場はテントのサイズにより山荘が指定する為、小屋から離れた場所になる場合もあります。

 

個人的な結論としては、

初めて槍ヶ岳にテント泊で行く場合で、初日に槍ヶ岳山荘まで登る体力がある場合は、殺生ヒュッテまで降りる可能性も視野に入れた上で、槍ヶ岳山荘まで行くのがおすすめです。

 

 

 

槍の穂先は超混在する場合がある

槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳の山頂までは登り30分がコースタイムとなっていますが、混在具合で所用時間は大幅に変動します。

私が8月に登った時は凄まじい混在で、登り下りの合計で3時間かかりました。

これだけの渋滞が発生すると、その後の行程に遅れが発生するので、計画には余裕を持ちましょう。

 

 

ルートの解説

新穂高登山口~穂高平小屋~白出沢出合

槍ヶ岳飛騨沢ルートはこの新穂高登山口から始まります。

新穂高登山センターでは、登山届の提出や周平ルートの情報収集が可能です。

また登山センターのトイレは非常に綺麗で24時間365日使用可能なので、非常に有難いですね。

 

 

新穂高ロープウェイの横を通り過ぎると、右股林道の入り口です。

 

右俣林道のコースタイムは約2時間です。

道は非常に綺麗な林道ですが、長くて地味~に傾斜があるので、体感的に中々にキツイです。

人によっては1時間とかで歩ききる猛者もいるようですが、初めての場合は2時間で計画を立てた方が良いと思います。

 

 

途中、時期により設置の場所や有無は異なりますが、工事会社による登山者への休憩所が開放されている場合があります。

新穂高~穂高平小屋の間にあるので、登りでここを使用する事は少ないと思いますが、計らいが有難いですね。

 

林道の途中に穂高平小屋へのショートカット道がありますが、個人的にはショートカット道は使わずにそのまま林道を歩いた方が早いように思います。

 

穂高平小屋

夏季の営業は不定期で最近は営業していないようですが、冬季は避難小屋として開放されています。

新穂高から1時間、ここから白出沢出合までも1時間です。

 

穂高平小屋以降、右俣林道の後半戦です。頑張っていきましょう。

 

小さな橋を通り過ぎたら、右俣林道の終点も近いです。

 

 

白出沢出合に到着しました。

 

白出沢を渡って対岸から本格的な登山道が始まります。

尚、この白出沢は基本的には涸れ沢ですが、大雨が降ると増水して濁流と化すこともあるので、注意しましょう。

 

 

白出沢~葡萄谷~チビ谷~滝谷

白出沢出合から滝谷出合まで約1時間半です。

整備がしっかりとされた登山道で非常に歩きやすいです。

 

このルートでは、葡萄谷、チビ谷と沢筋を通過します。

それぞれ対岸には赤テープがあるので、それを頼りに進みましょう。

 

 

尚、途中には比較的新しい無名の沢筋がありますが、これは2023年7月13日の集中豪雨による鉄砲水により一夜にして出来たものです。

こんな物が日中登山者が通行する時間帯に発生したらと考えると恐ろしいです。

 

 

滝谷出合の直前は、落石により従来の登山道が通行不能となっているので、蒲田川の方向に迂回ルートが作られているので、そちらを使用します。

一時的に地図からそれた道を行く事になりますが、赤テープ多数で迷うことはありませんので、問題ありません。

 

槍穂高完全縦走4日目(南岳~大喰岳~槍ヶ岳~槍平~新穂)

迂回ルートから本来の登山道に復帰すれば、程なくして滝谷出合に到着です。

 

滝谷出合~槍平小屋

滝谷出合

 

 

滝谷は大きな沢筋で、赤テープを頼りに進んで対岸へと渡ります。

 

 

夏季シーズン中は橋が掛けられています。

≪注意点≫

  • 大雨で増水すると橋が流される可能性がある
  • 気温が下がる秋口は早朝は凍結する可能性がある

 

 

槍平小屋の営業期間中は、滝谷の沢の水量がライブカメラで配信されているので、チェックしましょう。

 

 

滝谷を渡って槍平小屋側には弱いですが、僅かに携帯電話の電波が入るポイントがあります。

 

 

滝谷から槍平小屋までは根気坂と呼ばれており、残り1時間地味に長い登りが続きます。

 

南沢を通過。

冷たい沢の水が気持ちが良いです。

濃霧の時はここを誤って登って行ってしまう登山者がいるらしいです。

 

 

槍平小屋

ここが飛騨沢ルートの丁度中間地点です。

小屋泊(予約必須)、テント泊(予約不要)で利用可能です。

 

槍平小屋のテント場は小石などはありますが、全体的にフラットで張りやすいです。

設営可能数は約60張ですが、「満員で張れない」という事は粗無いようです。

 

キンキンに冷えた水が最高に美味しいです。

そのまま飲めるので、思う存分飲んで水分を補給しましょう。

こちらは宿泊者・テント泊者・通行のみも全員無料です。

 

 

槍平小屋からは暫く樹林帯の林の中を歩きながら、徐々に高度を上げていきます。

 

 

標高2250m付近にある「最終水場」

季節により水量に差はありますが、涸れたということはあまり聞いたことがありません。

ここから先、槍ヶ岳山荘まで水場はありません。

 

標高を上げていくと、大きなダケカンバの木「通称:宝の木」が現れます。

冬季はここの側の尾根の末端から大喰岳西尾根へと取り付くことができます。

 

槍穂高完全縦走4日目(南岳~大喰岳~槍ヶ岳~槍平~新穂)

宝の木を過ぎると、飛騨沢カールの全容を見ることができます。

ここから槍ヶ岳山荘までが長いです。

 

槍平小屋から約2時間で「千丈沢乗越分岐」に到着します。

ここから、「飛騨乗越経由」か「千丈沢乗越経由」かでルートが分かれます。

飛騨乗越経由は、飛騨沢を九十九折に登って行きます。

千丈沢乗越経由は、西鎌尾根に登って尾根沿いに槍ヶ岳山荘へと向かいます。展望もよくこちらの方がコースタイムも若干短いです。

 

「千丈沢乗越分岐」に夏季シーズン中で槍平小屋が営業している間のみですが、救急箱が設置されています。

救急箱の利用料金は不要ですが、使用後は補充が必要なので、必ず槍平小屋への連絡をしましょう。

 

今回は「千丈沢乗越経由」で登る為、中崎尾根の方向へと登って行きます。

 

 

槍穂高完全縦走4日目(南岳~大喰岳~槍ヶ岳~槍平~新穂)

約40分の登りで「千丈乗越(西鎌尾根)」に到着です。

「槍ヶ岳」と「双六岳」へと向かう事が出来ます。

ここから槍ヶ岳山荘まで約1時間30分です。特に危険個所はありません。

 

 

「槍ヶ岳山荘」

槍ヶ岳山荘の公式ホームページはこちら

 

 

槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳の山頂までは空いていれば、コースタイムで30分ですが、混在すると2時間近く掛かる事もあります。

 

 

「槍ヶ岳 山頂(標高3180m)」

狭い山頂ですが、天気が良ければ360度のパノラマを楽しむ事ができます。

シーズン中は写真撮影と下山の順番待ちが発生しています。

 

山荘まで降りてきて、コーラで乾杯。

 

来た道を辿って、新穂高へと下山します。

 

 

まとめ

ココがおすすめ

  • 最短で槍ヶ岳山に行ける
  • 上高地側に比べて人が少ない

ココに注意

  • 夏は駐車場は争奪戦
  • 大雨の際は滝谷が通行不可

 

皆さんの登山計画の参考になれば、幸いです。

では、また別の記事でお会いしましょう。

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