「西穂高岳から奥穂高岳、そして槍ヶ岳まで縦走する。そしてテント泊で!」
登山を始めて少し経ったころから"憧れ"として抱いていたが、技術や体力面から実現不可能と思い箪笥の奥に仕舞い込んでいた。
そんな中、今年のゴールデンウィークの遠征の為に体力作りに勤しんでいたが、それがコロナの影響で頓挫してしまった時に、今回の縦走を夏に行うことを心に決めた。
この記事では2日目の記録「西穂〜ジャンダルム〜奥穂」を紹介する。
行程
ルート
2020年7月31日〜8月03日
1日目:新穂高~西穂山荘
2日目:西穂山荘〜西穂〜ジャンダルム〜奥穂〜穂高岳山荘
3日目:穂高岳山荘〜北穂〜大キレット〜南岳小屋
4日目:南岳小屋〜槍ヶ岳〜槍平〜新穂高
アクセス
新穂高 登山者用無料駐車場(深山山荘方面)の混雑状況
7月31日(金):朝7時半の時点で、6割程埋まっていた。
8月03日(月):夕3時半の時点で、9割程埋まっていた。
平日とは言え、夏山シーズンの開幕を物語っている。
天気
1日目:ガスと晴
2日目:晴~ガス~晴
3日目:晴~ガス~一時雨
4日目:ガス~晴~ガス
登山道の状況・危険個所
◼西穂~奥穂
基本的に全てが危険。
浮石が本当に多く、間ノ岳周辺に限らず、どこの岩も落ちるかもしれないと意識して行動しなければならない。
◼奥穂~南岳
涸沢岳から北穂に向けての最初の下りは要注意。
大キレットも基本的に全てが危険。
長谷川ピークは足を滑らせると谷底に垂直落下。
このルートも浮石が多く、落石を意識した行動が必要。
◼南岳~槍ヶ岳
中岳周辺、特に中岳からの下りのハシゴは要注意。
◼槍ヶ岳
整備が行き届いており登りやすいが、濡れたハシゴは非常に緊張した。
山行記録
1日目:西穂山荘〜西穂〜ジャンダルム〜奥穂〜穂高岳山荘
0時10分起床〜2時30分頃出発。
テント泊は、お湯を沸かし朝食を作る所から始まる。フリーズドライにお湯を注ぎ15分待っている間にパッキングを済ませる。
朝食はフリーズドライのキムチごはん。初めて食べたが、美味しかった。
暗い中、丸山を過ぎ、独標で少し明るくなり始める。
ピラミッドピークで完全に夜が明けて、ヘッドライトが要らなくなる。
雲の下には昨日乗ってきた新穂高ロープウェイが幻想的に見え隠れしていた。
西穂山頂の手前で1名のソロと4名のグループの方と出会う。全ての方が奥穂へと進んで行った。
西穂で少し休憩を取り、水分と行動食をしっかりと補給する。ヘルメットは勿論、独標の手前から既に装着済みだ。
西穂の山頂からは、これから向かう奥穂と最終目的地の槍まで全て見通すことができる。
西穂までの道のりも十分危険な道だが、西穂山頂からP1に向かうと早速急な下りがあり、”ガラリと雰囲気が変わる。
ここから奥穂までは、「一歩間違えれば、死」が延々と続く。
この年に発生した地震の影響により、P1付近からの下降部は崩落しており、鎖場までのアプローチが難しくなっている。
西穂山荘の計らいで「お助けスリング」が設置されているが、それでも非常に緊張した。
(※実際にこの年に、この場所で滑落事故が発生したようだ。)
間ノ岳のルンゼは、噂通りのガレガレで、自身及び他者の起こす落石には十分に注意したい。
実際、間ノ岳までの途中、非常に大きな岩(死亡レベル)に遭遇した。ルート上を落下していくのを目撃した。
私の目の前(上方向)から落下して来た岩は、ルート上を一度バウンドし、他の石を巻き込みながら遥か下まで落ちて行った。
背筋が凍りついたのを今でも覚えている。
ルンゼの登高と先程の落石間一髪の両方が重なり、非常に興奮した状態で間ノ岳に到着する。
間ノ岳から先を眺めるが、今日の目的地はまだまだ先だ。
噂の逆走スラブ。スラブ自体よりもスラブに設置されている鎖の中間地点の方が、少し緊張した。
天狗の頭。
天狗のコルへと向かうが、続く登り返がしっかりと見えており、精神的に削られる。
この辺りから本格的にガスが沸き始める。
天狗のコルのへの鎖は最後の一歩が足りない。と思っていたが継ぎ足されていた。
天狗のコルのビバーク箇所も地震の影響でか、2年前よりもかなり荒れている。
小さなテントが一張ぎりぎりぐらいだろうか。ここでのビバークを前提としたプランは無理だろう。
ここで岳沢から登って来られた方に、「岳沢〜天狗のコル」の状態をお聞きした所、やはり相当荒れているようだった。
ジャンダルへの登りは、ザックをデポするか迷ったが、「テント泊縦走」の為にそのまま持って行くことにする。
ガスの影響で景色は何も見えないので、写真を撮って早々に来た道を戻り、奥穂へと向かう。
ジャンダルムの長野県側のトラバースは、一部空中に身体が出る所がありヒヤっとする。
ジャンダルムの奥穂側の直登ルート。
この先、ロバの耳の下降は写真を撮る余裕がなかった。どうしてあそこに鎖がないのか、疑問だ。
ロバの耳を終えて、馬の背へ向けて登り返す。
ここも上部からの落石には十分に警戒したい。
超えてきたジャンダルムとロバの耳を振り返る。
本日は残すところ馬の背のみ。
2年前に馬の背を下りで通った時は、怖かったのを思い出す。
"馬の背"は登りであったということもあり、それほど恐怖心はなかったが、一歩間違えると垂直落下なので、それなりにハラハラした。
馬の背が終わると、すぐに奥穂の山頂に到着する。
正直、かなり疲れているので、写真を撮って早々に山荘へと向かう。
ガスが切れ始め青空と雲海が広がり始める。
奥穂から山頂までが、地味に長い。
穂高岳山荘で予約済みのテントの受付を済ませて、テントの設営をする。
本日も夕食はパスタ。疲れた身体には、テントの設営と夕食を作る作業は辛いが、同時に興奮を冷ますクールダウンにもなる。
夕食後、素晴らしい雲海と夕焼けを眺める。
明日は、大キレットを超えて、南岳小屋まで進む。